「冬といえば?」
「冬といえば〜?」
隣りにいる彼女から問われた。小首を傾げるさまが大変愛らしい。
「寒い、雪、鍋、肉まん、おでん――」
「もう、お腹空いてるの?ロマンないなぁ〜」
コートのポケットに手を突っ込みながら答えると、彼女は軽く頬をふくらませて唇をとがらせた。
どうやら彼女のご期待に添えない答えだったらしい。
「冬といえばさ」
「うわっ」
彼女はにこっと笑ったかと思うと、突然俺のコートのポケットに手を突っ込んできた。
「こうやって手を繋げることでしょ!」
彼女はぎゅっとポケットの中で俺と手を繋ぐと、ふふ、とはにかんだ。
「にぎにぎ〜。ほら、あったかい」
可愛い、と思ったが不意打ちすぎて何だか照れくさくて口に出来なかった。
代わりに視線をそらしながら、
「手なんていつでも繋げるだろ。恋人なんだから」
と答えた。
彼女はそうだね、と微笑み頷いた。
/12/3『冬の足音』
12/4/2025, 9:39:50 AM