「あ、洗濯物取り込んでくれたの?ありがとう」
「わぁ、その髪飾り可愛い!どこの?」
「話聞いてくれてありがとう」
「だいすき」
わたしはどんなに些細なことでも、
好意的なことは思った時に伝えるようにしている
いつ伝えられなくなるかわからないしね
今度でいいやと思ったら、
そのまま気持ちがすれちがってしまうことが
ままあるこのせかいでは。
/『些細なことでも』9/3
でもタイミングって実際難しい。
わたしは香水を付ける人がキライ。
ちまたで人気のあると謳われているものは、どれも品がなくてただきついだけ。
香るという概念を知っているのかと思うほどにおいがきつい。
ほんとうに、香水なんて大キライ。
でも。
それもこれも、すべて言い訳。
一昔前はわたしだって香水を集めていたし、ちまたで人気のものにも何本も手を出した。
蝶の飾りのあるシリーズがスキだったな。
ボトルが花の形をしている華美なデザインの季節限定のものもスキだった。
それもこれもあなたのせい。
あなたに近づきたくて、わたしは香水を集めだしたし、スキになった。
香りなんて、スキになるものじゃない。
昔誰かも歌っていたでしょう?
「街中ですれ違う香りに貴女を思い出した」なんて。
あれが痛いほどわかる。
わたしも、ムスクの香りが流れてくるたび、スキだったあなたを思い出して――吐き気がする。
/『香水』8/31
目と目で通じ合う。
別に色っぽくもないけど、少し気恥ずかしい。
だって同じ顔がそこにあるんだもの。
(あなたは今、何を思っているの?)
鏡の向こうの自分に問いかける。
/8/25『向かい合わせ』
心の健康、とは。
きっと私にとって、するすると手が動くとき。
気持ち的に落ち込んでいるときでも、こんなふうに何かしらアウトプット出来ているのなら、まだ大丈夫。ぎりぎり。
それすらも出来なくなるのなら、それはあぶないとき。
趣味を少しでも楽しめるのなら、もう少しだけ元気な証拠。
/8/13『心の健康』
ぎゅってしてほしい。
/『言葉はいらない、ただ・・・』8/30
部屋のチャイムが鳴ってドアを開けてみれば、ずぶ濡れの君がいた。
「どうしたの、とつ――っ」
言葉は最後まで言えなかった。腹に衝撃があったからだ。
「どうしたの、突然?」
改めて受け止めて、衝撃に尋ねた。
「きょう、とめて」
背中に回された手に力が入る。呻くように絞り出されている声は、きっと今にも泣きそうなのを我慢しているのだろう。
「……いいよ」
少し考えて、承諾した。手の力が少し弱まる。
「いいけど、中に上がる前にまず、シャワー浴びておいで」
玄関先に君を残して、マット代わりと体を拭くバスタオル等々を取りに室内に戻った。
君をバスルームに通した後、君に合うサイズの服なんてないのはわかっていたが、なにかないかとクローゼットの中を漁りながら考えた。
(冷凍うどんあったっけ?)
/8/29『突然の君の訪問。』
「あなたを失ってから、悲しみが止まらないの。
もう済んだこと。
取り返しはつかない。
なくなってしまったものは元には戻らない
何度だって自分に言い聞かせてきた。
でもどうにもこの悲しみは癒せないの。
どうして? どうしてなくなってしまったの?
あんなに一瞬で消えてしまうなんて、予想だにしなかった。
私はどうやってあなたを取り戻したらいいの?」
「んなもん食ったからに決まってんだろ」
劇団員よろしく悲観にひたっていた私の哀れな姿を、弟の一言が寸断した。
テーブルの上には、今しがた私のお腹の中に消えてしまったミニシューのパックの空がら。
「だっておいしくて……。あんなに一瞬で消えるなんて思わないじゃない」
「そうだな。おれの分も食べやがって」
罰としてコンビニにスイーツを買いに行かされるのだが、それも食べてしまって更に怒られるのはまた別の話。
「だって3日も置いておくんですもの」
/『やるせない気持ち』8/25
「鳥になりたい」
通りすがった親子の会話が聞こえた
4歳くらいの男の子が目を輝かせていた
鳥のように飛べたなら
どこへでも行けるのだろう
あの青い空の果てでも
木漏れ日のさす木の中へでも
時間に縛られることもなく
隣の家の庭になっているような
高い位置の木の実なんかも食べられる
小鳥なら
道行く人々に可愛がってももらえるだろう
木のうろの中で休むことも楽しそうだ
大きな鳥なら
その羽根を広げて果てなくどこへでも行けるだろう
海をも超えて行けるかもしれない
何ものにも捕らわれず
自分の意志の赴くまま
でもその自由を謳歌する羽を切り落とされたなら――
自由と意思と尊厳すらも無くなってしまう
いたずらに自然に弄ばれた後
ただの骸になるしかないだろう
それでも君は
鳥のようになりたいと思うのかい?
/『鳥のように』8/21