夢路 泡ノ介

Open App
3/1/2025, 11:36:44 AM

花々が長い夢から醒めようとしている。
離れ離れだった淡い世界がやってくる。
あの人に逢えるまでもう少し。
肌を撫でる柔らかい風に弾む心を乗せて。

【芽吹きのとき】

2/26/2025, 12:26:31 PM

世界が滅びで灰となれど、
この眼に焼きついた過去は鮮やかなまま。
齢と共にたとえ煤けようと、
この魂は老いさらばえて尚も燃える。
躰が土に還る定めにあろうと、
この心は天藍の彼方へと運ばれる。
そして語る者が皆、この世から消えたとき、
我々は見守ることしかできなくなる。

然すれば汝らこの炎を与えん。
かつてを生きた私たちの証を残したまえ。
後世は、過去にあった恐怖を書物でしか知り得ない。
人が作った記録からでは、実態がいかなるかを味わえない。
しかし、私はそれでも構わない。平和とは、無痛のままで恐怖を知れる利だ。愚かしいのは、「あったこと」を無にすることだ。

後世に残せ。忘れるな。
人は過ちを繰り返す生き物。
そのための知であり、そのための和だ。
もう世界を灰で染めてはならない。
麗らかな恵みを広げるために、炎を守りたまえ。

【記録】

2/7/2025, 7:49:58 AM

丘の上で貴方は立っている。
喧騒と隔たれた、展望できる世界の上に立っている。
回る暗闇には星屑が、導として眠らず見下ろしている。

見よ、眠りに満ちてなおも光を失わない世界を。
我々が住まう、火と雷をものにしたこの世界を。
黎明から幾星霜、その成り果てた頭打ちの現よ。

されど人に終わりはない。歩みを止めることを知らない。
たとえ、天から火を盗んだ罪を着せられようと、
その先には新たな力が火花のように作られるのだから。

見よ、夜の帳に火がついた。
長い陰りを曙が染めてゆく。
翔ける小鳥が始まりを囀る。

我々に終わりはない。歩みを止めることはない。
たとえ、臓腑を大鷲に啄まれるような苦しみを受けようと、
その陰りを英雄たる者が力強く裂いてくれるのだから。

丘の上の君よ。
昨日までの夢から覚め、
東雲と共に進みたまえ。

【静かな夜明け】

2/6/2025, 7:38:26 AM

貴女と僕。
心の響き。
交わす瞳。
揺れる水面。

鼓を叩いて赤らめる頬にそっと触れて、
ふと俯いた視線が起きるまで見つめる。
鼻先にかかる吐息が言葉に変わっても、
僕らの世界は時が止まったまま。
雑踏と灯りの賑やかな地上にできた、
僕らの世界は見えない壁で縁取られている。
暖かな人肌で寂しさを熱らせ、
寒夜と忘れそうな温もりに雑音も閉ざされた。

貴女と僕。
心の響き。
交わす唇。
二人の夜。

【heart to heart】

1/13/2025, 11:36:13 PM

口伝や書物では味わえないものがある。
未知が既知になったとき、人はその黄金の瞬間に立ち会う。
夢見ていたこと、それはいつか辿り着きたいと願う場所。
一度の生ならばその目に照らしてみよ。
老いさらばえても、思い出とは味わい深くなるもの。
セピアに染まることなく、自分だけのアルバムは輝き続けるのだから。
人よ。旅をせよ。
世界は君の未知で満ちている。
求めて心を掴まれたまえ。
夢を抱いて進むのだ。

【まだ見ぬ景色】

Next