焦がれるように惹かれ、
だが二度と叶うことはなく、
なおも貴方は思いを募らせる。
彼女に触れて溶けゆく心を、
いかに内に秘めようとしても、
かすかに綻んで手を取り合い、
奪われるがままついていくことを。
天藍の空が広がる草原で君たちは、
童心にかえって彼方へと舞い進む。
やがて額を合わせ、囁き合い、
日が眠るまでのひとときを長く思えたであろう。
一度も唇を重ねることはなく、
吸い込まれるがままに見つめ合う。
その狭間にできた、決して叶わないもの。
貴方は夢から覚めた頃には、
その答えをすでに知っている。
言葉にせずとも、その形がどのようなものかを知っている。
だからこそ貴方は密かに希う。
この身も心も沈んでも構わない。
彼女にまた会えるのなら、
何か一つ、手放してしまっても構わない。
どうかもう一度、もう一度あの時に戻しておくれ。
あの続きをどうか、私を二度と目覚めさせないようにしておくれ。
どうか、どうか。
私を夢の淵へと落としてくれ。
【あの夢のつづきを】
***
あけおめことよろ。
マイペースに書いてくヨ。
穂が揺れる。風で揺れる。
照る陽は穏やかに、空も晴れやかに。
朱も花もない地で実り、細波のようにこすり合う。
肌を撫でる寒空もすぐそこに。
縁側で煎茶を傍らに、眺めるひと時ももう暫し。
穂が揺れる。風で揺れる。
刹那の季節に、心も揺れる。
【ススキ】
僕たちは終わりを知っている。
それがどんな形かを知っている。
僕らにもいつかやってくる。
ない物ねだりに永遠を欲しがる心を持ったまま、
僕らは今日も生きてゆく。
その日まで、永遠にね。
【永遠に】
至福。安寧。平穏。
それらに反した要素で、日常化が絶えず続いている。
だからこそ人は夢を見る。
果てしない自分の楽園を、恋するように求めて。
【理想郷】
前へと進むほど、何かが遠のいていく。
人は、これを意外と忘れがちになる。
目先に囚われ追いかけて、気づいた頃には田園のど真ん中。
それは成長という山々を、その険しい道のりを歩んだ先。
いつの間にか一人ぼっちになったのに、不思議と残念には思わない。
得るものを得ては何かを捨てて、知らぬ間に自分の足で辿り着いたゆえか。
鬱蒼とも、豊かとも思える背高い茂みに囲まれた生活。
時として潤いに満ちた空間に踏み入れ、萎れた心を存分に濡らした。
これもまた不思議なものだ。
嫌と感じていた世界に、ほんの少しだけでも戻ってみたい自分がいることを。
陰りに差した淡い木漏れ日と、澄んだ水音に惹かれたあの瞬間を。
置いてけぼりにされた癒しのひとときを思いに募る。
自分以外では敵わない、広がる白い山嶺に眼差しを向けて。
【懐かしく思うこと】