夢路 泡ノ介

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前へと進むほど、何かが遠のいていく。
人は、これを意外と忘れがちになる。
目先に囚われ追いかけて、気づいた頃には田園のど真ん中。
それは成長という山々を、その険しい道のりを歩んだ先。
いつの間にか一人ぼっちになったのに、不思議と残念には思わない。
得るものを得ては何かを捨てて、知らぬ間に自分の足で辿り着いたゆえか。

鬱蒼とも、豊かとも思える背高い茂みに囲まれた生活。
時として潤いに満ちた空間に踏み入れ、萎れた心を存分に濡らした。
これもまた不思議なものだ。
嫌と感じていた世界に、ほんの少しだけでも戻ってみたい自分がいることを。
陰りに差した淡い木漏れ日と、澄んだ水音に惹かれたあの瞬間を。
置いてけぼりにされた癒しのひとときを思いに募る。
自分以外では敵わない、広がる白い山嶺に眼差しを向けて。

【懐かしく思うこと】

10/31/2024, 12:28:48 AM