夏の魔法使い

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8/12/2024, 8:09:56 AM

『七夕兄妹』

やっほ~!私、鹿島ひまり 16才!突然だけど、昔の話を聞いてほしいんだ〜。
 私には2歳差のお兄ちゃんがいて、確か私が5歳の頃かな。七夕の日だったと思う。2人で川遊びに行ったんだよ。膝下くらいのとこで水のかけあいしてた。だけど、お兄ちゃん足が攣って溺れちゃったんだ。私は小さかったし、突然のことでどうしたらいいのかわかんなかった。パニックになって、被っていた麦わら帽子で水を汲み出そうとした。当然無理な話で、水はどんどん流れてきて、麦わら帽子では水がすくえない。近くにいた大人が助けを呼んでくれたから、お兄ちゃんは助かった。でも、帰った時お母さんがお父さんにぶたれた。お母さんが私達を放っておくからって。お母さんが子供だけで川遊びに行かせたのはよくなかった。お父さんは少しモラハラ気味だった。1年後、お母さん達は離婚した。私はお母さんの方について行って、お兄ちゃんはお父さんの方について行った。離れ離れになっちゃったんだ。
でも、年に1回だけお兄ちゃんに会える。明日がその日。だからこの話をしたんだ。彼氏を紹介するんだ。今もちょっと麦わら帽子が怖いけど、彼氏が似合うって言うから克服するつもり。じゃあね!

8/10/2024, 2:48:25 AM

『野菜売りの源二』

 どんぶらこどんぶらこと桃が流れてきて、その中から男の子が生まれた。すくすく育ち、悪さをしている鬼を倒すと言った。きび団子を渡し、仲間を連れ、無事鬼を倒した。これが俺の来歴だ。笑っちゃうよな。桃から生まれたなんて馬鹿馬鹿しい。でも、鬼を倒せる力があることがわかったから、今は鬼退治を仕事にしている。村から鬼退治を頼まれて、仲間と鬼を倒してお礼を貰う。なかなか報酬はいい。だけど、プレッシャーが凄い。村の人の命がかかっている。絶対に倒さないといけない。押しつぶされそうになる。
 とある村から、鬼退治を頼まれた。赤鬼と青鬼がいるらしい。鬼の住処に向かう。赤鬼は成敗できた。残るは青鬼だ。!何が起きた?動けない。徐々に痛みを感じて、意識を失う。目が覚めると村の民家だった。話を聞くと、俺は背中を金棒で殴られて倒れたらしい。青鬼は仲間がなんとかしてくれた。そして急いで、俺をここに運んで治療したそうだ。仲間に感謝する。仲間が出ていった後、1人で考える。恐れていたことがおきた。最悪の事態は免れたが、もしこのまま死んでいたら。仲間がいなかったら。考えれば考えるほど苦しくなる。俺は五年続けたこの仕事を辞めることにした。
 次の日、仲間にその事を伝えた。止める者はいなかった。この村を出て、仲間と解散する。こうして俺は自由になった。少々遠いところにある集落に住むことにした。「桃太郎」という名は目立ちすぎるから、「源二」と名乗った。そこで野菜を作って売っている。最初は、上手くいかないこともあった。でも、集落の人達が野菜をくれたり、作るコツを教えてくれた。みなさんが協力してくれるから、上手くいかなくたっていい。僕にはプレッシャーがかからないこの生活があっているのかもしれない。

8/9/2024, 7:47:15 AM

『可愛いね』

 私には、意地悪な母と姉、そしてそいつらに意地悪されてる妹がいる。姉と母と私がパーティーに行っている間、妹は洗濯や掃除、花の水やりをやっている。私が妹もパーティーに連れて行こうとか、家事をみんなでやることにするとか、言ったけど聞いてくれなかった。妹は亡くなった父の連れ子だから、可愛がりたくないそうだ。私は、妹とはこっそり仲良くするようにした。
 親戚同士でのお茶会(マウントの取り合い)があった。やっぱり妹は連れて行ってもらえなかった。母が私達を紹介する時、「上の子と下の子と、家に家政婦がいます。」と。イラッ 妹は家政婦じゃない。顔が引き攣る。親戚は中身のない会話で時間を溶かす。姉と私は、「可愛いね~」「美人さん」と褒められた。生ぬるい声が気持ち悪かった。イライラが爆発する寸前にお茶会はお開きとなった。夜、妹がお茶会の話を聞きたいと言った。全然聞いてなかったから、いかにも楽しげな話を捏造した。母が言っていた事は墓場まで持って行く。
 今度はお城でパーティーだ。王子様が結婚相手を見つけたいそうだ。やはり妹は連れて行ってもらえない。王子は、興味ないのか面倒臭いのか、全員に「可愛い」と言っていた。だが、急に足を止めてどこかを見つめた。視線の先には…妹が。王子は駆け寄っていった。3分ほど話して、妹は立ち去って行った。王子は追いかけようとするが、女に囲まれてしまう。私の頭は疑問で埋め尽された。「なぜ、妹がいるのか」「どうやって来たのか」「なぜ、王子が駆け寄ったのか」「何を話していたのか」「なぜ妹はすぐに立ち去ったのか」考えても仕方ない。妹に聞くことにした。だが、帰った時、妹があまりにも平然としていて、夢だったのかと思った。聞くにも聞けず、モヤモヤが残った。
 一週間後、朝起きたら妹が失踪した。私は家を飛び出して探した。何度も何度も名前を呼んだ。辺りが暗くなってきた。その晩、私の部屋に伝書鳩が入って来た。手紙を読むと、「お姉ちゃんへ 私はパーティーで出会った王子と結婚することになりました。私はお姉ちゃんが大好きだからお城に招待します。これから仲良く一緒に暮らそうね。 お母さん達は招待してないので気をつけてね。」という内容だった。私は嬉し涙がちょっと出た。夜の内に家を出て行こう。
 こうして私と妹は、お城で幸せに暮らした。王子から、ベタ褒めされてる妹を見ると微笑ましくなる。私もシェフから猛アタックを受けていて舞い上がっている。小さい頃たくさんの人から言われた「可愛いね」より、今大切な人から言われた「可愛いね」の方がずっと嬉しい。妹とお茶を飲みながら、そんなこと考えた。あ、花に蝶がとまった。今日はいいことありそう。

8/7/2024, 2:42:42 AM

『第一温暖化』

 ある寒い寒い冬の日だった。おばあさんと二人、焚火で温まっていた。突然、火が光始めた。そして、火が消えた。そこには、小さな赤ん坊がいて、おぎゃあおぎゃあと泣いている。私たちはその子を育てることにした。太陽の様に明るい子に育って欲しい、という意味を込めて「あかり」と名付けた。あかりは燃え盛る様にすくすくと成長した。そして、とても美しい子に育った。あかりは異性から大変人気だったが、見向きもしなかった。それでも諦めない五人の男がいた。どんなものでもあかりのためなら持ってくると男達は言うので、あかりは変わったものを頼んだ。一人目の男には燃えない布を、二人目の男には蒸発しない水を、三人目の男にはどんな熱にも耐えられる木材を、四人目と五人目の男にはとても暑い環境でも育つ植物と動物を、持ってきてほしいと言った。男達は、一生懸命探したが見つからない。なので、男達は普通の布や木材を持ってきて、嘘をついた。あかりは気づいているのかいないのか、それらを全て受け取った。その晩、あかりから話があると言われた。「私は、地球人ではありません。太陽に住む者です。遠い昔、太陽も地球のように住める環境でした。しかし、どんどん暑くなり、水は蒸発し、干からびてしまいました。私はその頃生まれました。そして、太陽を救ってほしいと地球に送り込まれました。でも、この地球では温かい太陽が欠かせないことを知りました。それと同時に、ここに太陽を救える技術がないことも悟りました。私は、藁にもすがる思いで男に頼み事をしましたが、やはりだめなんだとわかりました。」思わずおばあさんと二人、聞き入ってしまった。「そして、この星では太陽が救えない上に温かい太陽を大切にしている以上、私に太陽を救う選択肢はありません。明日、私は過去の太陽に強制送還されます。最後の別れを告げたくて、話をしました。」そんな、明日であかりに会えなくなるなんて。おばあさんは泣いている。「二人の御恩は絶対に忘れません。ありがとうございました。それではお休みなさい。」あかりは部屋を出ていってしまった。
次の朝にはあかりはもういなかった。置き手紙には、「地球もお気をつけてください。」とあった。

8/6/2024, 3:02:03 AM

※イジメ表現あり 注意

『醜いオタクはチャイムが嫌い』

あぁやってしまった。落ち込んでいる私の耳に授業開始の鐘の音が重くのしかかる。私はいわゆる、オタクだ。地味でコミュ力がない私は陰キャとして高校生活を送っていた。しかし、ある時陽キャが私の好きなアニメについて話してた。やっぱアレは最高だよな~、特に〇〇くんはビジュといい、性格といい、あ~やばい。妄想が止まらない。ふと、陽キャの会話に耳を傾けると、「あ~あのキャラの名前なんだっけ? なんか、ウルフカットのゲーム好きな子。」「△△くん」気付いたときには口が動いていた。「そうそう。あの子かっこいいよね。」私の中で何かがONになった。「そーなんですよ!あの怠惰な性格!ひねくれ者な感じ!あとあれとかこれとか云々〜」5分後、しびれを切らしたように陽キャが「オタクマジ無理。同じアニメ好きだから少し聞いたけど、ガチオタじゃねーから。前から陰湿で苦手だったけど、もう話しかけてくんなよ。」…こうして冒頭に戻る。キモかったよな。なんてことをやってしまったんだ。もう消えたい。
次の日から、軽いイジメが始まった。仲間外れにされ、陰口を言われる。その日、学校のチャイムが耳に突き刺さる感じがした。聞きたくなかった。昨日の失態を思い出してしまうから。でも、家に帰ってしまえば、私は無敵だった。アニメを見て、原作の漫画読んで、二次創作の小説読んだり書いたり、それだけで嫌なことなんか忘れる。投稿した小説はなかなかに評判がいいし、コメントを見ると創作意欲が湧いてくる。そんな毎日を送っていた。なるべく毎日小説を書くようにしていた。というより、書いてしまっていた。

私 「というのが私の高校生活でした。学校のチャイムは今でも苦手です。」
記者 「イジメを受けていた過去があるんですね。でも、小説家になって数々の賞を取った今、過去の自分に伝えたいことは?」
私 「そうですね。もう本当にエライ!そんな感じですね。オタクを気持ち悪がられても、オタクをしたら忘れる、これは本当に凄いと思います。」
記者 「確かにそうですね。 では、最後に過去の自分と同じ境遇に居る子にメッセージをどうぞ。」
私 「醜いアヒルの子っていう童話を知っていますか? 周りと違うから、馬鹿にされたり仲間外れにされたりする白鳥のお話。でも最終的には綺麗な翼で大空を舞う。 だから、イジメられても落ち込まず、自分が白鳥になれる事や場所を探してみてほしい。きっとそこで翼を広げられるから。」

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