夏の魔法使い

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『第一温暖化』

 ある寒い寒い冬の日だった。おばあさんと二人、焚火で温まっていた。突然、火が光始めた。そして、火が消えた。そこには、小さな赤ん坊がいて、おぎゃあおぎゃあと泣いている。私たちはその子を育てることにした。太陽の様に明るい子に育って欲しい、という意味を込めて「あかり」と名付けた。あかりは燃え盛る様にすくすくと成長した。そして、とても美しい子に育った。あかりは異性から大変人気だったが、見向きもしなかった。それでも諦めない五人の男がいた。どんなものでもあかりのためなら持ってくると男達は言うので、あかりは変わったものを頼んだ。一人目の男には燃えない布を、二人目の男には蒸発しない水を、三人目の男にはどんな熱にも耐えられる木材を、四人目と五人目の男にはとても暑い環境でも育つ植物と動物を、持ってきてほしいと言った。男達は、一生懸命探したが見つからない。なので、男達は普通の布や木材を持ってきて、嘘をついた。あかりは気づいているのかいないのか、それらを全て受け取った。その晩、あかりから話があると言われた。「私は、地球人ではありません。太陽に住む者です。遠い昔、太陽も地球のように住める環境でした。しかし、どんどん暑くなり、水は蒸発し、干からびてしまいました。私はその頃生まれました。そして、太陽を救ってほしいと地球に送り込まれました。でも、この地球では温かい太陽が欠かせないことを知りました。それと同時に、ここに太陽を救える技術がないことも悟りました。私は、藁にもすがる思いで男に頼み事をしましたが、やはりだめなんだとわかりました。」思わずおばあさんと二人、聞き入ってしまった。「そして、この星では太陽が救えない上に温かい太陽を大切にしている以上、私に太陽を救う選択肢はありません。明日、私は過去の太陽に強制送還されます。最後の別れを告げたくて、話をしました。」そんな、明日であかりに会えなくなるなんて。おばあさんは泣いている。「二人の御恩は絶対に忘れません。ありがとうございました。それではお休みなさい。」あかりは部屋を出ていってしまった。
次の朝にはあかりはもういなかった。置き手紙には、「地球もお気をつけてください。」とあった。

8/7/2024, 2:42:42 AM