夏の魔法使い

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※イジメ表現あり 注意

『醜いオタクはチャイムが嫌い』

あぁやってしまった。落ち込んでいる私の耳に授業開始の鐘の音が重くのしかかる。私はいわゆる、オタクだ。地味でコミュ力がない私は陰キャとして高校生活を送っていた。しかし、ある時陽キャが私の好きなアニメについて話してた。やっぱアレは最高だよな~、特に〇〇くんはビジュといい、性格といい、あ~やばい。妄想が止まらない。ふと、陽キャの会話に耳を傾けると、「あ~あのキャラの名前なんだっけ? なんか、ウルフカットのゲーム好きな子。」「△△くん」気付いたときには口が動いていた。「そうそう。あの子かっこいいよね。」私の中で何かがONになった。「そーなんですよ!あの怠惰な性格!ひねくれ者な感じ!あとあれとかこれとか云々〜」5分後、しびれを切らしたように陽キャが「オタクマジ無理。同じアニメ好きだから少し聞いたけど、ガチオタじゃねーから。前から陰湿で苦手だったけど、もう話しかけてくんなよ。」…こうして冒頭に戻る。キモかったよな。なんてことをやってしまったんだ。もう消えたい。
次の日から、軽いイジメが始まった。仲間外れにされ、陰口を言われる。その日、学校のチャイムが耳に突き刺さる感じがした。聞きたくなかった。昨日の失態を思い出してしまうから。でも、家に帰ってしまえば、私は無敵だった。アニメを見て、原作の漫画読んで、二次創作の小説読んだり書いたり、それだけで嫌なことなんか忘れる。投稿した小説はなかなかに評判がいいし、コメントを見ると創作意欲が湧いてくる。そんな毎日を送っていた。なるべく毎日小説を書くようにしていた。というより、書いてしまっていた。

私 「というのが私の高校生活でした。学校のチャイムは今でも苦手です。」
記者 「イジメを受けていた過去があるんですね。でも、小説家になって数々の賞を取った今、過去の自分に伝えたいことは?」
私 「そうですね。もう本当にエライ!そんな感じですね。オタクを気持ち悪がられても、オタクをしたら忘れる、これは本当に凄いと思います。」
記者 「確かにそうですね。 では、最後に過去の自分と同じ境遇に居る子にメッセージをどうぞ。」
私 「醜いアヒルの子っていう童話を知っていますか? 周りと違うから、馬鹿にされたり仲間外れにされたりする白鳥のお話。でも最終的には綺麗な翼で大空を舞う。 だから、イジメられても落ち込まず、自分が白鳥になれる事や場所を探してみてほしい。きっとそこで翼を広げられるから。」

8/6/2024, 3:02:03 AM