しじま

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12/8/2023, 6:24:54 PM

差し伸べられた手を払うのは簡単だった。

掴む勇気なんて、カケラも持ち合わせていなかった。

君を傷つける気なんて無かったんだ。

全部、臆病な僕のせい。

終わった世界、ボッチには慣れてると強がって。

君の居ない今日を、きっと明日も生きていく。

できることなら、あの日に帰りたい。

差し伸べられた君の手を、掴むことは出来なくても。

同じ歩幅で、君の隣を歩けたなら。

なんて空想、ガラガラと音を立てて崩れて。

また、今日が始まった。

ソレを嘆く権利さえ、臆病者には無い。

テーマ「ありがとう、ごめんね」

12/7/2023, 3:39:51 PM

日だまりに丸まって、帰りの遅い君を待つ。

まだかなあ、と大きく伸びてからコロンと転がった。

キラキラと光る埃、逃げるソレに手を伸ばして暇つぶし。

ザラザラという嬉しいご飯の音も、今日は無視して。

どこで道草食ってるんだろう、と呆れながら、君の帰りを独り待つ。

テーマ「部屋の片隅で」

12/6/2023, 4:50:29 PM

グラニースミスという珍しい品種の林檎を買ってみた。

サラダに合いそうな酸味と控え目な甘み、さっぱりとした後味の青リンゴ。

本来は加熱用らしいので、焼きリンゴでも作ってみようかと冷凍庫からバターを取り出すと、使いかけのホットケーキミックスの粉が一緒に出てきた。

……供養、じゃない使ってやらねば。


くし切りにして砂糖をまぶしたリンゴを型に敷き詰めて、モッタリとしたクリーム色の生地を流し込む。

水が冷たい時期なので洗い物は最小限に、ボウルにこびりついた生地もシリコンベラで刮げていく。

トントンと型をテーブルに落として空気を抜いたら、熱々のオーブンの中へ投入。

包丁やまな板にボウル等を洗って、ついでに昼ご飯をチャチャッと作って食べる。今日はシャケ茶漬けだ。

オーブンの中、ふくふくと膨らんで盛り上がっていく生地を眺めながら、お茶漬けに入れたシャケを箸で解していった。

テーマ「逆さま」

12/5/2023, 5:47:06 PM

一日の疲れを湯船に浸かって洗い流していると、君のなんとも情けない悲鳴が聞こえた。

いったい今度は何だ。

ボディーソープの泡をシャワーでキレイに濯ぎ落として、手早くタオルで身体を拭きながら浴室の戸を開けると、洗面台の横で体育座りしている君。

手にはレトロな緑色のハエたたきを装備している。

Gでも出たの?と下着を身に着けながら問い掛けると、君は首を横に振ってから、掠れた声で言った。

軍曹、しかも特大サイズ。

テーマ「眠れないほど」

12/5/2023, 5:07:32 AM

あれ、こんなところにドアなんて有ったかな?

いつものようにリビングの掃除をしていた時、飾り棚の裏に小さなドアを見つけた。

掌と同じ位の、凝った装飾の茶色い木のドア。

恐る恐るドアをノックしてみた。

「はいってますよー」

間延びした男の声が中から聞こえてくる。 入ってるんだ……。

もう一度ノックをすると、煩わしかったのか強めにドンッと返された。

怒ることないじゃん、声の主に対して腹が立った。

ので、金色のドアノブを指で摘んで軽くひねる。

鍵は掛かってないようだ、不用心な奴だと嘲笑う。

そのままノックもなしにドアを勢い良く開けた。

知らない男、の生首が入っていた。

鼻の奥を刺激する腐臭に、鼻を服の袖で覆っていると腐り落ちた目玉と目が合う。

「はいってんだから、開けるなよっ」

黒い液を床に垂れ流しながら怒鳴り散らす生首。


「やめろ、ワックスかけたばっかなのに!」

バッと飛び起きて叫んだ。

テーマ「夢と現実」

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