変だね、君と同じ気持ちなのに。
私の唇は別れの言葉をつむいでいた。
大好きだよ、心の底から。
だけどね、「好き」ってだけじゃ、どうにもならないんだ。
君を想う、想えば想うほど、駄目だった。
握りしめた君の手をそっと離して、私は一度も振り返ることなく、君の元から去った。
君の幸せを心から願いながら。
テーマ「さよならは言わないで」
壊れたラジオが垂れ流している、時代遅れなアドバイス。
その騒音が聞こえなくなるまで走ったけど。
どこまで行っても、どこへ行っても雑音は聞こえてきて。
勘弁してくれ、と両耳を塞いでも残響した。
言い返したところで相手はラジオだ、バカをみるのはいつもこちら。
そろそろ粗大ゴミの回収日なのだけれど、このラジオを引き取ってくれるだろうか。
血溜まりに浮かぶ、バラバラに壊れたラジオを。
テーマ「距離」
忘れてしまわないように。
大好きだった君のことを。
君との思い出が涙と一緒に零れ落ちて、消えてしまわないように。
固く拳を握りしめ、銀灰色の低い空を見上げた。
テーマ「泣かないで」
ローテーブルの下に敷いていた寒色系のラグを暖色系で毛足の長いものに変えて。
壁に掛かる涼しげな水辺の絵も、シンプルな抽象画にしてみた。おっ、いい感じ。
ちょっと休憩、とソファに座ってベロア生地のカバーをかけたクッションを抱きしめた。
テーマ「冬のはじまり」
いつもと変わらない一日。
朝食を一緒に食べて、バラバラに家を出る。
君は電車に乗って、私はとっとこと徒歩で、それぞれの職場へと向かい、それぞれの仕事に勤しむ。
きっちり定時で上がる君、ちょっとだけ残業する私。
帰り道の途中、商店街の行きつけのスーパーの前で、不思議と君と一緒になる。
今日は大根を両手に、品定めをしている君を見つけた。
後ろから声を掛けて、振り返ったスーツ姿の君の傍らに走り寄る。
いつもと変わらない毎日を。
君の隣で、ずっと。
テーマ「終わらせないで」