君は体温が高い。
聞けば、なんと平熱が37〜8℃位だと言う。
ふへっ、……驚いて変な声が出た。
人種によって平熱が違うらしい、筋肉量の違いだろうか?
あー、だから真冬にTシャツ短パンで観光地を彷徨いているのかあ、とホカホカと温かい君の胴に顔を埋めて目を閉じた。
テーマ「微熱」
まだまだ青い芝の上、穏やかな秋の陽射しを浴びながら馬が駆ける。
期待されてもされなくても構わずに、前へ前へと、ただ本能に従って走る。
父を母を、兄弟たちの背を追いかけ、飛び越えて。
世界へ。
そんな誰かの願いもどこ吹く風と、馬は青いターフ駆け抜けるだけ。
テーマ「太陽の下で」
葉っぱのフレディ、随分と懐かしい絵本。
まだ自分が小さかった頃、父母に何度も読んでもらった。
友人の誰かに貸したまま返ってこなくなったと思っていたが、リビングの本棚の上から出てきた。
いったい何時から其処に置かれていたのか、褪せた表紙に油っぽい埃が厚く積もり固まっている。
濡れ布巾で丁寧に拭うと、懐かしいシンプルな表紙のその絵本を開く。
もういない、父母の声が聞こえた気がした。
テーマ「落ちていく」
シカが轢かれて死んだら可哀想だなんだと煩く喚くのに、
人が轢かれたら「めいわく、違う場所で死ね」と吐き捨てる。
競走馬が骨折して安楽死になったら競馬廃止を訴えるのに
仕事で人が死んでも、自己責任で片付ける。
餓死確定のクマを駆除すれば、「お前らがエサになればいい」なんて言った愚か者も出た。コイツを餌にすればいいのにね。
四六時中触っているソイツで、ちょっとは調べたらいいのに。
それはゲーム機でもカメラでも無いんだから。
テーマ「どうすればいいの?」
散歩の途中で拾った枝や鳥の羽根、謎の木の実。
水をかけると青緑に透ける石、友達の誰かに貰った異国のコイン。
子供の頃に集めていたカード、飼っていたネコのヒゲ。
銀のエンゼル、へそくりが挟んである古い手帳。
若い頃の両親の写真。
ただのガラクタと笑うだろう。
だが、私にとっては大切な鍵だ。
テーマ「宝物」