無償の愛、隣人愛、そんなもの無い。
自分よりも劣った奴を囲むため、サンドバッグにするために。
あいしてる、だいすき、ともだち、かぞく。
きずな。
呪いの言葉で縛りつけて、逃げられないようにして罵る。
あなたのため、あなたのため、あなたのため。
自分がキモチヨクなるためだろ?
愛なんて無いんだよ。
テーマ「キャンドル」
全て忘れてしまう前に、全てを終わらせてしまおう。
壊れたものを直しても、決して元には戻らない。
私が私で在るうちに、君のことを覚えている内に。
君との甘い記憶を胸に、地を蹴った。
ああ、そらが、きれい。
テーマ「たくさんの想い出」
トイレの中と外、扉一枚隔てて、まるでこの世の終わりかのような声で鳴きあう猫二匹。
朝っぱらから何してんの。
欠伸をしながらトイレの扉を開けてやれば、此方を非難するような冷ややかな目を向けてくる猫ども。
抗議するように短く鳴いて、仲良く階段を駆け上がる二匹。
助けてやったのになあ、とそのままトイレに入って用を足していると、再び、二匹の悲愴な鳴き声が響き渡る。
……雄同士で何やってんの。
テーマ「はなればなれ」
ゴロゴロと喉を鳴らしながら、Tシャツの裾に頭を突っ込んでくる君。
くねくねフワフワの尻尾。
軽く出された爪が痛い前足のふみふみ。
Tシャツの中に体を滑り込ませて、腹の上で伸びる君。
顔が見えなくなって寂しくなったのか、ピャアピャアと甘えるような声を出しながらモゾモゾと這い回る。
素肌に君の毛がチクチクと当たって擽ったい。
くすくす笑いながら、Tシャツの上から膨らんだ所を指先で軽く突付くと、君の可愛い肉球が布越しに当たる。かわいい。
直後、布を貫通した鋭い鉤爪が、指の腹にグサリと刺さった。
テーマ「子猫」
いつもより少しだけ早い時間に、甘くて美味しそうな匂いを漂わせながら、君が帰ってきた。
お土産だよ、と君に渡された茶色い紙袋。
きっちりと口の閉じられたその紙袋から良い匂いがした。
何だろうか、三つ折りにされた袋の口をクルクルと捲くって中に手を入れる。
さっきよりも濃い匂いがして、思わずうっとり。
ヌメヌメと滑って逃げ回る丸っこい物体を鷲掴みにして袋から取り出す。
陶器のように冷たく固い、洋梨のような姿形の黄色い果実。
花梨だ、鼻先に近づけてスンスンスンスンと匂いを嗅ぎまくる。……ふう。
ジャムにしよ。
テーマ「秋風」