しじま

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11/14/2023, 8:04:16 AM

重たい毛皮を脱ぎ捨てて、虹の橋を渡る。

灰色の針山は眼下に、抜けるような青空の下、誰に縛られることもなく翔けた。

もう痛くない、苦しくない、疲れることもない。

こんなに走り回れる、目も良く見える。

風が気持ち良い、空が綺麗だ。

果てしなく続いていく虹の橋、一つ嘶いて駆けていく。


何処までも広がる蒼穹。

君と最後に見た空の色と、似てる気がして。

虹の橋を渡った先で、ただ君だけを臨む。

テーマ「また会いましょう」

11/12/2023, 3:41:09 PM

 たまに君が読んでいる、小難しそうな専門誌。

君が席を外している隙に、興味本位で頁をパラパラと捲ってみた。

英語の長文、専門用語と読めない知らない漢字に申し訳程度のてにをは。 当然ルビはない。

頭がクラクラしてきた、本から離した手をそのまま額に押し当てて、テーブルの上をぼんやりと眺めた。

 通話の邪魔と外されたタッチペンが転がってる。

片側がボールペンになっているタイプのヤツ、とても便利と君が重宝している物。

なんとはなしに手にとって、ボールペン側のキャップを取った。

そして、再び専門誌の頁をパラパラと捲って、幾つかの文字を丸で囲んでいく。

君は栞を使わないから、どこまで読んだのか分からない。

けど、気づいてくれると嬉しいな。

 丸を描き終えて、テーブルの上、寸分違わぬ位置に専門誌を戻して。

君が戻ってくるのをドキドキしながら、ソファに座って待った。

テーマ「スリル」

11/11/2023, 6:44:57 PM

諦めることを知らない君は、また羽ばたこうとするのだろう。

天へと手を伸ばし、折れた翼を広げて。

君はもう飛べないのに、無数の鎖に雁字搦めで。

藻掻く度に翼が赤く傷ついていくのに。

それでも足掻く君に、何故だか心惹かれている。

テーマ「飛べない翼」

11/9/2023, 2:42:33 PM

適当に描いた木のイラストで、いったい何が解るというのだろうか。

分厚い本とイラストを交互に見やる医療従事者を鼻で笑った。

占いに毛の生えたようなその鑑定に何の意味があるのか、聞いてみたかったが止めた。

どうせマトモな回答など返ってこない。

自分が何をしているのかすら理解していないのだから。

占い好きのこの医療従事者の気の済むまで。

否、飽きるまで。
この無為な時間を過ごすことになるのだろう。

嗚呼、早く帰りたい。

テーマ「脳裏」

11/8/2023, 4:38:05 PM

真白の紙に、世界を写す。

黒と白と灰色で構成された、空想の世界を。

風景を、人物を、物語を、少量の言葉とオノマトペを用いて描いていく。

登場人物の怒りや悲しみ、喜び、絶望、様々な感情の変化を、体のありとあらゆるパーツを使って表現する。

 紙の中の登場人物と同じように、私も生きていけたらな。

病院のベッドの上で、そんなことを考えながら。

今日も私はペンを走らせ、世界を描く。

テーマ「意味がないこと」

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