Morris

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1/23/2024, 12:21:48 PM

再会の約束を交わし、彼女は永遠の旅路へと足を進める。それを見届けた後、刀として懐に収まった。
目を覚ましたとき、己の目元は濡れて赤くなっていた。気付かぬうちに涙を流すとは、涙もろくなったものだ。
顔を洗い、主と日課を済ませるために炉へ向かう。
今日も大太刀の夢を見て資材を溶かす。

「──大太刀の降斬、ここに参る。遠き地より目覚めたが……私は確かに此処に在る」

その細い体躯に見合わぬ刀を引き提げた男士は大太刀を名乗り、主は五体投地で喜びを表した。

「……久しぶりだね」

薄く微笑んだ彼の姿を見て、また泣いてしまった。


「戦友になった主」(刀剣乱舞×明日方舟)

2024/01/23・こんな夢を見た

1/22/2024, 10:01:57 AM

蝋燭の火が揺らめく。
ちらり、彼女の横顔を伺う。頬はほんのりと染まって、いつもより色気が増していた。

「陸奥守くん……?」
「ん?」
「ありがとう」

重ねられた手は温かくて、自分の手とは違う。ふにふにとした感触も堪らない。

「どういたしまして」

二人なら暗い夜も怖くない。

1/21/2024, 9:56:39 AM

生ける仄暗い感情と死せる理性の鎖が渦巻く紺青の果て。
怪物に取り込まれ、外身だけを残した海の狩人。踊る剣はその手から滑り落ち、紡ぐ声は世の理を覆す。

「どうして、どうして私を拒むの?」

旧き賢者は沈黙を以て応えた。

「潮はすべてを掻き消すの──そこに苦痛はなくて、歓びだけが在るの」

生命の在り方を根幹から抉り出し、削ぎ落とす。
なんと冒涜的であろうか。

「貴女は長い間苦しんできたのよ。だから……全てを手放して、私と共に深くへ──」

賢者は鞘から刀を抜き、その首に当てる。ヒトの矜持をその身を以て示し、痛みで誘惑を跳ね除ける。
紺青の中に滲む深緋は流れに逆らい、空を目指して昇る。

「いや、やめてちょうだい……貴女が傷付く姿は見たくないの」

首の傷は未だ痛むし、体は冷えを訴えるように震えている。それこそが己をヒトと証明できる数少ない手段。
混濁する意識の中で伸ばした手を、温かな手が握り返してくれた。



「奉ろわぬ神の一柱よ この地より居ね」

透き通る琥珀は、太陽の光を受けて揺らめいていた。
己の神域を、愛すべき主を侵害された怒りは計り知れない。穏やかで理知的な彼だが、神としての一面を見せつける。

「主は誰にも渡さん。魂の一欠片も、誰ぞに渡すものか」

肌を嫐るように照りつける感覚に、焼け焦げる痛み。目の前にいる男は本気だ。
それでもなお、記憶の中の自分は藻掻けと囁く。

「触りなさんな」

焼け饐えた匂いがする。
声を封じられた。歌うことも、喋ることもできなくなった狩人に勝ち目はない。

「主に手を出いたんや、覚悟決めて潔う散れ」


「夢路を攫う刃」
(※刀剣乱舞×明日方舟)

1/20/2024, 9:02:23 AM

ヴィクトリアに根を下ろした姉は、静かに機会を狙っていた。方舟を呼び込んだ彼女は、再び騎士の手を取った。

テラの大地を駆け回る妹は、行く先で細くも多くの縁を紡いだ。煌めきを放つ糸は小指に絡み、剣は彼女のために振るわれる。

カジミエーシュで名を轟かせた雹の騎士は、愛する者のために姿を消した。
離れてもなお、白に染まった心は気高く咲いている。

Why you joined Rhodes Island?

1/19/2024, 9:54:20 AM

夢を見た。誰かのことを覗き見ている。

仄暗いという言葉で形容できない、重苦しい情欲が降り注ぐ。心に落ちては傷となり、止むことのない雨に削り落とされる。

手招きされて、脚を絡め取られて。
陸から引き剥がされた身体は、肺に水を貯めることなく変化した。

心地よい揺れだったけど欺瞞で。
列車の揺れはいつか寝台が軋む音に変わって、神前に誓いを立てる儀式が始まろうとしていた。

吹雪の中、彼女の目からは絶えず涙が流れていた。
「いやだ、おいていかないで……」
心の支えは戦場で折れ、残されたのは一振りの太刀と、いつか消えてしまう記憶だけ。

世界は無情なもので、彼女の傷が癒えるのを待たず動き出す。
人知の及ばぬ怪物は目を覚まし、封じられた扉が開く。

「……!」

金縛り。兎の耳の少女は、剣を構え、こちらに突進してくる。
緩みきった加速の後、意識を失うほどの痛みが襲う。ぶつり、意識と接続が切れた後、覗き見る視点へ戻る。
刺された彼女は、心臓を貫かれていた。
見開かれた眼は閉ざされることなく、死してなお少女を見据えていた。

景色が歪み、再び意識が途切れる。
胸の痛みがして、意識は浮上する。

「……ある、じ」

口の中がカラカラに渇いている。
飛び起きた衝撃で、横で眠っていた彼女も起こしてしまった。

「ん……むつ?」

薄っすらと目を開けたところで、手を握った。突然のことに困惑しながらも、真っ青な陸奥守の顔に彼女は察した。
抱きしめれば、温かくて柔らかな感触がする。

無意識とはいえ、彼女が封じた記憶の中に迷い込んでしまった。
そう、審神者になる前の、ドクターと呼ばれていた彼女の闇を垣間見てしまった。

「わしがそばにおるぜよ。今度こそ、離さんき」

刀でありながら、神として、人の器を得た。
あの時とは違う。己の意志で動ける。


夢の迷い路、刀の誓い(刀剣乱舞×明日方舟)

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