Morris

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夢を見た。誰かのことを覗き見ている。

仄暗いという言葉で形容できない、重苦しい情欲が降り注ぐ。心に落ちては傷となり、止むことのない雨に削り落とされる。

手招きされて、脚を絡め取られて。
陸から引き剥がされた身体は、肺に水を貯めることなく変化した。

心地よい揺れだったけど欺瞞で。
列車の揺れはいつか寝台が軋む音に変わって、神前に誓いを立てる儀式が始まろうとしていた。

吹雪の中、彼女の目からは絶えず涙が流れていた。
「いやだ、おいていかないで……」
心の支えは戦場で折れ、残されたのは一振りの太刀と、いつか消えてしまう記憶だけ。

世界は無情なもので、彼女の傷が癒えるのを待たず動き出す。
人知の及ばぬ怪物は目を覚まし、封じられた扉が開く。

「……!」

金縛り。兎の耳の少女は、剣を構え、こちらに突進してくる。
緩みきった加速の後、意識を失うほどの痛みが襲う。ぶつり、意識と接続が切れた後、覗き見る視点へ戻る。
刺された彼女は、心臓を貫かれていた。
見開かれた眼は閉ざされることなく、死してなお少女を見据えていた。

景色が歪み、再び意識が途切れる。
胸の痛みがして、意識は浮上する。

「……ある、じ」

口の中がカラカラに渇いている。
飛び起きた衝撃で、横で眠っていた彼女も起こしてしまった。

「ん……むつ?」

薄っすらと目を開けたところで、手を握った。突然のことに困惑しながらも、真っ青な陸奥守の顔に彼女は察した。
抱きしめれば、温かくて柔らかな感触がする。

無意識とはいえ、彼女が封じた記憶の中に迷い込んでしまった。
そう、審神者になる前の、ドクターと呼ばれていた彼女の闇を垣間見てしまった。

「わしがそばにおるぜよ。今度こそ、離さんき」

刀でありながら、神として、人の器を得た。
あの時とは違う。己の意志で動ける。


夢の迷い路、刀の誓い(刀剣乱舞×明日方舟)

1/19/2024, 9:54:20 AM