「今までありがとう。ゆっくり休んでね」
孫より感謝を込めて
「誕生日おめでとう!いつもありがとう!」
娘より愛を込めて
12日は亡き祖父の、15日は母の誕生日
花束もお菓子もないけれど、貴方達が喜んでくれるように生きていくつもり。
貴方はいつもの帰り道を歩いていた。
いつもと違うところを挙げるのなら、咲いている花に目を惹かれるところだろうか。微かに漂う花の香は、貴方に気付いてもらおうといわんばかりに強くなり始めた。
無視することもできなかった貴方は、その香りに誘われて足を進める。見知った道は知らぬ道へ、黄昏時の空は宵の口へ。
迷子になったのではないかと不安になる貴方を慰めるように、目の前に扉が現れた。
「A bouquet of flowers for」
来た道は深い闇に閉ざされて、貴方に残されたのは扉を開けるという選択肢のみ。開けてみれば、花屋のような部屋で、紙には指示が書かれていた。
「この部屋は誰かに感謝や労いの気持ちを表さないと出られません。その人のことを想い、考え、心を込めて花束を完成させましょう」
──誰のことを考えましたか?
『──誰かのための花束を』
お題「花束」
行場のないこの気持ちは、どうすればよいのだろうか。息詰まるほどの激情に身を焼かれる。
何かが迫り上がる。恐怖で口を押さえるが、勢いは止まらない。そんな時に限って、想い人は視界に入る。
「大丈夫……ゆっくり吐いてみて」
背中を擦られ、言われるがままに息をすると、花吹雪の雨が降り注いだ。
『我が身に咲く』
2024/02/05 溢れる思い
「今宵、この唇で貴方のxxを奪います 」
たった一行の犯行予告。
貴方は何気なくその文に目を通すだろう。
だがよく考えてほしい。
犯人はその一瞬の隙を窺っていることに。
顔を上げたときに、唇が迫っているかもしれない。あるいは、温かな感触に目を見開くだろう。
体を注意深く見てみるといい。
もしかしたら、すでに奪われているかもしれないから。
『紅の跡、朱の頬』
貴方には忘れられない人や物はある?
私にはあるよ。君にもあるはず。
心の整理がついたし、君に隠し事なんて通用しないのは知ってたさ。
そんなつもりはなかったけど、不安にさせたならごめんね。
この刀……“降斬”は、多くの人の手を介し、私の手元にある。前の持ち主は、私の大切な人だった。うん、今はいないんだ。
私だから“降斬”を託すと言って……駄目、忘れてはいけない、私が忘れてしまったら……彼が消えてしまう
ごめんね……まだ本当は夢に見るほど苦しくて、審神者としての力でまた彼に会えないかって考えてしまうんだ
わかってるよ、間違っているって
それでも、わたしは……
ずっと辛かったがじゃろう。わしらに気ぃ遣うてそがなところを見せんようにしちょった。今度こそ守ると決めたのに、逆に危険に晒して……兆しはあったはずながに、気付けざった己に腹が立って、げに申し訳なかった。
げにすまざった。忘れろ、なんて無責任なことは言えん。大切な人を喪う悲しみ、誰からも忘れ去られる苦しみは簡単には癒せん。痛いばあわかるぜよ。
あぁ、わしゃどこにもいかんぜよ。よう頑張ったねや……泣くがを我慢する必要はないきな。
ここにはわししかおらんし、誰にも言わんき。
おんしとなら、気が狂うほどの永い時間を生きられるき。
『遺された者たち』