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11/13/2023, 5:52:35 AM

「すーから始まるすっりっる!」
「なに急に」

君がご陽気にわけわからん事言い出すのは、大抵なにか嬉しいことがあった時だ。
その予想は外れていないようで、なんでもなーいと言いつつ顔はにこにこ、楽しげ。
俺は頭をポンポン叩く。

「なにかスリル味わった?」
「はぁ?いつも味わってるっちゅーの」

君はそう言うと俺の耳元にひそひそ。

「みんながいるところでね、まさにぃいまぁこうしてるのがぁ俺にとってスリルっ」
「ほほう」

仕事のツラしながらも心は俺のこと考えてるってか?
俺も君に合わせて意味深げにニヤッと笑ったけども、まぁみんなだいたいのことは知ってるってことは黙っておこう。


▼スリル


10/30/2023, 12:43:50 PM

「…ちゃん、まってぇ!!」

ふと、小さな男の子が先を行く友達を追いかけている声が聞こえた。
半泣きでぱたぱたと、今にも転びそうな拙い足取りで追いかけていく。大丈夫かな?と思ったけどその後ろからママさんらしき人も一緒に追いかけてるから大丈夫だろう。
そう納得すると、微笑ましい光景を楽しんでしまう心根が生まれる。

「かわいいね」

隣を見ると、君はキラキラした目でその子たちを見つめていた。やっぱりな。君は子供が好きだから、夢中になってるだろうと思った。

「思い出すよな。あんくらいのお前がああやって泣きながら俺を追いかけてきたこと」
「ん?」
「まってぇ〜!ってさ。俺ちょっといじわるしてスタスタ行っちまってさ、あの時は本当に悪かったよ。泣いてるおまえがかわいくてさ」
「…んん?」

俺は君の肩を抱いて、実にわざとらしい口ぶりで君の不審顔を覗き込みながら言った。

「ホント…懐かしく思い出すよ。あの頃のかわいい君」
「俺ら会ったの小6とかだよね?」
「うん?そーだっけ?」

俺はニヤニヤ。君は一瞬顔を顰めて、それから俺を肘鉄一発。

「まーたくもう、ふざけちゃって! あんな小さい時から会ってたの俺忘れた?って思っちゃったじゃん!」

君はそう言って、それから俺たちは顔を見合わせてゲラゲラ笑った。



▼懐かしく思うこと


10/27/2023, 2:43:19 PM

「…こーすいのせいだよぉ」

なんか今日はご機嫌だな。鼻歌まじりに大好きな珈琲を淹れている。君の淹れる珈琲は本当に美味しい。鼻をくすぐる豊かな香り。

「はい、どーぞ」
「ん。ありがとう」

ソファに並んで珈琲を飲む。テレビはニュースから、人気のケーキ屋さんの話題になった。

『こちらケーキに合わせた紅茶がとても人気なんですよね〜』

「…紅茶かー。紅茶って最近全然飲んでねーな。あれも結構いい香りするよな。んなこと言われると飲みたくなるな」
「ちょっとぉ。珈琲飲んでる時に紅茶の話しないでよ。珈琲が気を悪くするでしょ」
「珈琲が?」

君じゃなくて?
さっきまでのご機嫌さんはどこへやら、君はぷくぅと頬を膨らます。それが可愛くて肩を抱いた。

「ごめんごめん。ホント珈琲に悪いよなぁ。お詫びに今度ここのケーキ食べに行こうぜ。たまには紅茶も飲みたいし」
「ちょっとぉ!」

たまにちょびっといじわるしたくなるのは、君のぷくぅが見たいからなんて言ったらますますぷくぅしてくれるかな。




▼紅茶の香り


10/25/2023, 12:13:06 PM

君と歩く日曜日。日差しがぽかぽかで気持ちがいい。大きな公園はぽつぽつ家族連れがいるくらいで人少ない。みんなもっと遠くに遊びに行ってるのかな。いつも混む公園だから珍しいな。

君はスタスタと歩いて行く。ちょっと先のお店でご飯食べるんだよ。散歩ついでに歩いて行こうぜって君がいうからさ。
ちょっとだけ先を行く君の背を俺は追いかける。君の手が目の前ぷらぷらしてて手ぇ繋ぎたいなとか思うけど、ダメに決まってる。
外にいる時、俺たちはただの友達。友達同士は大人になったら手なんか繋がないんだよ…。

「どしたよ、早く行こうぜ。お腹ぺこぺこー」

君が振り向いて俺に手を伸ばす。ちょっと怯んだ俺の肩に、君は突然腕を回して抱き寄せた。

「ほら。な? 急ご」

友達同士って手は繋がないけど、だけどなんと! 肩を抱くのはありなんだ?
君はポンと俺の頭を軽く叩いてその腕はすぐに離れるけどもね、けどもこれだけで十分なんだよ。

だって俺たちは外では友達だからね!




▼友達




10/23/2023, 11:44:24 AM

仕事で出かけたとある海岸。びっくりするほど雲がなくて青一色、超びっくりした!
あんまりびっくりしたから君に通話っ!

『…まだ寝てんだけど』

俺からの通話だってのに君は珍しくとーても不機嫌で、画面の向こうで髪をボリボリ掻いて寝ぼけた顔。

「あれ?」
『あれ?じゃねぇ。今何時だと思ってんだ』
「何時? 俺うち出たの4時だよ!」
『そりゃご苦労さん……』
「だって見せたかったんだよ!ほら!」

俺はスマホを空に向けた。右に左に上に下に、どこ映してもどこまでも続く青い空!
君と見たかった。君に見せたかった。一緒に見たかったんだ。

「見えた?」
『酔うわ! くるくる回しすぎだ!』

あれー? どうも俺の思いは伝わらなかった?
と、ちょっとしょげて画面を見たら、さっきと違って君はクスクス笑い顔。

『まったく、すっかり目が覚めちゃったじゃん。見せてくれた青い空でさ――きれいだよ。わかってる』
「な!」

やっぱり君は、わかってる。俺は嬉しくなって、またスマホを空に向けてくるくる〜

『だから酔うっつってんだろ!』



▼どこまでも続く青い空


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