「…ちゃん、まってぇ!!」
ふと、小さな男の子が先を行く友達を追いかけている声が聞こえた。
半泣きでぱたぱたと、今にも転びそうな拙い足取りで追いかけていく。大丈夫かな?と思ったけどその後ろからママさんらしき人も一緒に追いかけてるから大丈夫だろう。
そう納得すると、微笑ましい光景を楽しんでしまう心根が生まれる。
「かわいいね」
隣を見ると、君はキラキラした目でその子たちを見つめていた。やっぱりな。君は子供が好きだから、夢中になってるだろうと思った。
「思い出すよな。あんくらいのお前がああやって泣きながら俺を追いかけてきたこと」
「ん?」
「まってぇ〜!ってさ。俺ちょっといじわるしてスタスタ行っちまってさ、あの時は本当に悪かったよ。泣いてるおまえがかわいくてさ」
「…んん?」
俺は君の肩を抱いて、実にわざとらしい口ぶりで君の不審顔を覗き込みながら言った。
「ホント…懐かしく思い出すよ。あの頃のかわいい君」
「俺ら会ったの小6とかだよね?」
「うん?そーだっけ?」
俺はニヤニヤ。君は一瞬顔を顰めて、それから俺を肘鉄一発。
「まーたくもう、ふざけちゃって! あんな小さい時から会ってたの俺忘れた?って思っちゃったじゃん!」
君はそう言って、それから俺たちは顔を見合わせてゲラゲラ笑った。
▼懐かしく思うこと
10/30/2023, 12:43:50 PM