9/24/2025, 7:44:40 AM
ふわり。
僕の身体が宙に浮いた時、君は躊躇なく僕に抱擁しに来てくれた。逞しく温かい腕が僕を包んだとき、風を切る音に混じって君の鼓動が聞こえるのだ。あの時君が僕と共に死ぬことに躊躇しないと優しく笑ってくれた。
地獄のような現世の中で、来世では共に生きようと大きな賭けにでられたこと。僕の人生、それだけで充分です。
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『僕と一緒に』
6/9/2025, 12:28:10 AM
君の光をいっぱい集めた大きな瞳が、私の手を引く少し冷たい掌が、控えめなサボンの香水が、コントラバスのような落ち着いた安定感のある声が、時が経つに連れて少しずつ記憶の端へ流れ落ちていく。
けれど、私は殆ど残っていない君の残骸を掻き集め、幸せだった日々の欠片を垣間見て人生を歩くばかり。
未練たらしい人、皆は私を笑うのでしょうけれど。
雨がやみませんね。私の中で、いつまでも。
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『君と歩いた道』
5/24/2025, 6:12:20 AM
叶うならば貴方の腕の中に最期はいたい。
傷だらけの不器用なその褐色の手で強く抱かれるならば、私は早く死んだって、地獄へ逝ったっていい。
例えそれがどんなに痛い抱擁だって、永遠に忘れてやらないのに。
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『そっと包み込んで』
5/22/2025, 4:07:25 PM
ウチには珈琲カップなんて洒落たモンはなく、飲む物はただの缶珈琲。こんなのじゃ頭は冴えやしない。ソファに深く座り直し、デスクの資料から目を背けた。
ま、焦る必要なんてきっとない。今日の私は呑気屋さんなこったと、昨日の私がみれば叱責するだろうか。さあ、日の沈みかけた窓の外を見上げては悪戯に笑ってみせよう。
嗚呼、黄昏時の橙に狐が嫁入ったらしい。
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『昨日と違う私』
5/15/2025, 4:35:04 PM
胸を張って歩こう。丑三つの暗い街ではスーツの縒れに気付く者は居ないのだから。
つまらないと日々を嘆くならば、今宵はブル・ショットに乾杯しよう。今日が少し特別にみえるだろう。
安心し給え、私の奢りだ。
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『光り輝け、暗闇で』