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両手を合わせて拝んだなら、私の真横を風が駆けて行く。もう私の中の君は、顔も香りもぼんやりと霞んで思い出せないけれど、その突拍子も無い夏の風は、剽軽な君に似ている気がした。

ぼんやりと霞んでしまった記憶の中の君だけれども、夏に吹く元気で自由気ままな風のような君の声を私は忘れやしないのだろう。

線香の細い煙が風に弄ばれて、入道雲に溶けていく。




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『吹き抜ける風』

11/20/2025, 6:57:47 AM