彼の懐中から光る何かがするりと堕ちる。カツン、と蚊でも鳴くような音は夜のネオンの中で私の耳にしか届いていないらしく、彼は低く弾んだ声だけを私に投げ続けている。
私はふうん、とか、へえ、とか、少しだけ高い声で生返事をしながら地面の方に目をやると、銀色に光るリングが転がっていた。彼の落し物に思わず口角が上がり、私は冷たい息を吐いて、前を歩いていた彼の腕に抱きついた。珍しく機嫌の良い私に彼の表情は驚愕の色をしていたが、やがて薄い笑みを浮かべて何かをべらべら語り出していた。
まあ。なんてちっぽけな愛だ事。
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『tiny love』
10/30/2025, 8:18:39 AM