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11/6/2023, 12:08:05 PM

ぽつぽつと降る雨の中歩き続ける。
どこへ行けばいいのかさえ分からないままで。
「貴方のことは、もう好きじゃないの。」
「───だから、さよなら。」
彼女の美しく冷たい声が頭の中に響いて視界が霞む。
歩いているうちに傘はどこかへ飛んで行ってしまった。
「ひぐっ、うう、ああ」
溢れ出る涙はもう止まってはくれない。
優しく柔らかい雨がまるで慰めてくれるかのように体を濡らしていく。今日は雨が降っているから涙がバレずに
済んで良かったなんてことを考えてしまう。
「これからどこに行こうかな。」
もうどこを歩いているのかなんて分からない。
ただずっと、遠くへ行くために足を進める。
雨はまだ降り続け、空も灰色に染まったままだ。
そんなふらふらと歩く彼の姿を雨は悲しむかのように
雨足を強めた。

『柔らかい雨』

10/17/2023, 10:55:48 AM

「なあ一人でどこにいくんだよ、────。」
ああ、これはなんの夢だ。俺は誰を呼んでいる?
でも呼ばなければ、 ──は一人で行ってしまう。
「ごめんね。でもいかなくちゃ。」
振り返りこちらを向く君の美しい笑顔に涙が出る。
「だったら俺も、そっちに。」
「だめ。あなたはちゃんと生きて。大丈夫、ずっと
そばで見守ってるから。だから私を思い出にして。」
無理に決まってるだろそんなこと。だって忘れたくても忘れられないんだ、君がいた生活を。
視界が霞がかっていく。手を伸ばす。でも届かない。 


チチチ。鳥の鳴く声で目が覚める。
全て思い出した。今日は君が死んで3年。
未だに忘れたくても忘れられない君の声、あの笑顔。
まだまだ止まった時は動き出しそうにない。
「───でも、なんとか頑張るよ。」
何処かで優しく笑う声が聞こえたような気がした。


『忘れたくても忘れられない』

10/10/2023, 1:25:29 PM

君が涙を流してたくさん泣いている。
お願い、どうかそんなに泣かないで。大丈夫だよ。
僕の事なんて忘れてくれていいから、だから一人きりに
ならなくていいんだよ。
「───どうして、私を残して死んじゃったの。」
震える体を抱きしめるけれど、両手は体をすり抜ける。
君の涙の理由を僕は知っているのに止めてあげることも
出来ない。だけど。それでも僕は。
「ごめんね、一人にして。」
君が泣かなくなるその日まで僕はここにいるから。
「───愛してるよ。」
この声もきっと届かないけど、何度でも君に伝える。


『涙の理由』

9/28/2023, 1:43:45 PM

「───バイバイ、また明日。」
帰り道、そう言って手を振る君の姿が忘れられない。
ねえ、また明日って言ったのに。どうして。
別れ際の夕暮れに照らされた君の顔は果たしてどんな顔をしていたんだろう。
分からないことだらけだが、一つだけは分かる。
君は二度と帰って来ないのだろう。
でも、私は。私だけは。
「また明日。」
君とまた手を振り合える日を待っている。


『別れ際に』

8/21/2023, 8:34:58 AM

さよならを言う前に君の声が聞きたかった。
いつから私たちは心が離れていったんだろう。
顔を合わせても喧嘩ばかりするようになったし、デートをする回数だって少なくなった。
このままじゃ駄目だと思い、君と話し合おうと電話をしたけれど繋がらない。
直接会いに行こうと君の元へ向かった時に見たんだ。
私じゃない女の子と歩いているのを。
ああ、もう君は私を見ていない。とっくに私たちの関係は終わっていたんだ。
「ははっ、馬鹿だなあ、私。」
さよならをしなければ。そう思い最後に電話をかける。
君が出ないことなんて分かっている。
でも、それでも。さよならを言う前に。私は。
「───君の声が聞きたかったよ。」
私は泣きながら電話を切った。


『さよならを言う前に』

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