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ぽつぽつと降る雨の中歩き続ける。
どこへ行けばいいのかさえ分からないままで。
「貴方のことは、もう好きじゃないの。」
「───だから、さよなら。」
彼女の美しく冷たい声が頭の中に響いて視界が霞む。
歩いているうちに傘はどこかへ飛んで行ってしまった。
「ひぐっ、うう、ああ」
溢れ出る涙はもう止まってはくれない。
優しく柔らかい雨がまるで慰めてくれるかのように体を濡らしていく。今日は雨が降っているから涙がバレずに
済んで良かったなんてことを考えてしまう。
「これからどこに行こうかな。」
もうどこを歩いているのかなんて分からない。
ただずっと、遠くへ行くために足を進める。
雨はまだ降り続け、空も灰色に染まったままだ。
そんなふらふらと歩く彼の姿を雨は悲しむかのように
雨足を強めた。

『柔らかい雨』

11/6/2023, 12:08:05 PM