九至 さら

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10/10/2024, 10:54:28 AM

『涙の理由』

私の涙の理由が君以外にいるわけないでしょ。

LINEの返信なんて良くてリアクション。
遊びに誘うLINEに既読無視はさすがにびっくりしたよ。
あの文章考えるのに、私3日かけたんだよ。
ほんと酷いよ。

それでも君を好きな私は、馬鹿ですか?

わかってる。馬鹿だなーって
君の矢印が私に向くことはないって、
君の瞳に私が映ることはないって、全部わかってるよ。

10/9/2024, 12:07:27 PM

『ココロオドル』

今日はたまたま1本前の電車に乗れた。おそらく信号で、ひとつも引っかからなかったからだろう。1本前の電車に乗れるだけで、座れるし、駅から走らなくていいし最高だ。毎日これに乗れたらいいのだが、何故か朝はギリギリの行動をしてしまう。なんて考えながら、イヤホンを取り出し耳につける。せっかく座れたし、単語帳でも見ようかな〜と鞄から取り、ふと前を見ると、綺麗な顔をした子が小説を読んでいた。制服を見る限り、同じ学校なのだろう。窓から浴びる朝日がまるで後光のように指している。背筋を伸ばし、少し伏せ目で本を読む様は、女神のようだった。ついじっと見てしまっていた。彼女はニコッと笑い、再び視線を本に戻す。きっと私は明日から、1本はやい電車に乗るだろう。そう確信した。


10/8/2024, 2:12:56 PM

『束の間の休息』

六時間目。
先生が職員室に忘れ物をしたらしい。
授業が始まって30分経った頃だった。
1番後ろの特等席の俺は、眠気が纏う中、教室を見渡す。
隠れてお菓子を食べるやつ。
即座に机に突っ伏すやつ。
隣の席と話すやつ。
色んなやつがいるなーと思っていると、遠くの席で後ろを向いてるやつと目が合った。気まづく思い、目を逸らそうとすると、なにやら口を動かしている。
(なむとうだね)
???
もう1回、と指でサインを送る。
(ね・む・そ・う・だ・ね)
急に恥ずかしくなって、俺は目を逸らしてしまった。
目の端で笑ってる顔が見えて、何故か無性に悔しかった。急ぐ足音が聞こえ、先生が戻ってきた。
俺は残りの12分間、そいつの後頭部を睨み続けた。
6時間目が終わり、帰りの準備をしている時、やつが近づいてきて言った。
「そんなに見つめられたら、溶けちゃうよ」
2度目の敗北を味わった俺は、「帰る!」と捨て台詞を吐いて教室から撤退した。

10/7/2024, 12:25:36 PM

『力を込めて』

周りの生徒が帰っていくのをぼんやりと見つめる。
委員会で居残りの憂鬱を吹き飛ばすため、風を浴びようと窓を開けた。

見慣れた後ろ姿が目に入り、私は力を込めて叫んだ。
君はこっちを見て目を見開いたあと、真っ赤になって俯いた。君のことはどこにいても簡単に見つけられる。
数秒後、君は私の方を見上げ「知ってる!」と笑った。
君にしては珍しい大きな声に、感化されたのか校舎の3階からもう一度叫ぶ。
「愛してるーー!!!」
ある日の放課後の出来事。

10/6/2024, 10:29:24 AM

『過ぎた日を想う』


ああ死ぬんだな。天井を背景に孫と娘の顔が見える。
病院の一室での出来事だ。
夫には先立たれ、10年。私は少し長生きしすぎた。
だいぶ待たせてしまった。毎回デートでも遅刻していたことを思い出す。あの時と変わらない。
僕も今来たとこだよ、そう言って笑うあなたが簡単に想像できる。走馬灯のように流れて来る記憶には、上手くいかないときも、泣いてるときも、笑ってるときも、大きな失敗をしたときも、全部、隣にあなたが居た。まだ死にたくない気持ちと同じくらい、いやもしかしたら、それ以上にあなたにもう一度会いたい。遅くなってごめんね。また笑って私を許してね。

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