九至 さら

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『ココロオドル』

今日はたまたま1本前の電車に乗れた。おそらく信号で、ひとつも引っかからなかったからだろう。1本前の電車に乗れるだけで、座れるし、駅から走らなくていいし最高だ。毎日これに乗れたらいいのだが、何故か朝はギリギリの行動をしてしまう。なんて考えながら、イヤホンを取り出し耳につける。せっかく座れたし、単語帳でも見ようかな〜と鞄から取り、ふと前を見ると、綺麗な顔をした子が小説を読んでいた。制服を見る限り、同じ学校なのだろう。窓から浴びる朝日がまるで後光のように指している。背筋を伸ばし、少し伏せ目で本を読む様は、女神のようだった。ついじっと見てしまっていた。彼女はニコッと笑い、再び視線を本に戻す。きっと私は明日から、1本はやい電車に乗るだろう。そう確信した。


10/9/2024, 12:07:27 PM