『束の間の休息』
六時間目。
先生が職員室に忘れ物をしたらしい。
授業が始まって30分経った頃だった。
1番後ろの特等席の俺は、眠気が纏う中、教室を見渡す。
隠れてお菓子を食べるやつ。
即座に机に突っ伏すやつ。
隣の席と話すやつ。
色んなやつがいるなーと思っていると、遠くの席で後ろを向いてるやつと目が合った。気まづく思い、目を逸らそうとすると、なにやら口を動かしている。
(なむとうだね)
???
もう1回、と指でサインを送る。
(ね・む・そ・う・だ・ね)
急に恥ずかしくなって、俺は目を逸らしてしまった。
目の端で笑ってる顔が見えて、何故か無性に悔しかった。急ぐ足音が聞こえ、先生が戻ってきた。
俺は残りの12分間、そいつの後頭部を睨み続けた。
6時間目が終わり、帰りの準備をしている時、やつが近づいてきて言った。
「そんなに見つめられたら、溶けちゃうよ」
2度目の敗北を味わった俺は、「帰る!」と捨て台詞を吐いて教室から撤退した。
10/8/2024, 2:12:56 PM