「雪」
……無い。私の靴が無い。下駄箱を開けた途端に大量にゴミが詰められていたので全てゴミ箱に入れたが靴が入っていなかった。
またか。そう思い色々な場所を探す。暫くして窓に反射しているのを見て、下駄箱の上に置かれていることに気付いた。
背が低い私が気付けないと思って置いたのだろう。取るのも大変で、何度もジャンプしてなんとか取れた。
靴は濡れていて、中には砂が入っていた。できる限り取ったけど、履いたらぐしょぐしょなのに加えてジャリジャリしている。最悪だ。
そのまま外に出て、とぼとぼと家に帰る。靴が気持ち悪くて足が重い。それに今日は雪の予報だから、酷く寒い。足の感覚がなくなってきた。
本当は自転車で通学しているけど、今日駐輪場をみたら無くなっていたので多分また勝手に使われたのだろう。鍵もなくなっていたし、どこかに乗り捨てられるのがオチかな。
自転車ではそこまで遠く感じないが、徒歩だとかなり時間がかかる。
ふと、目の前をちらりと何かが横切った。空を見てみると雪が降り始めていた。
「……寒いなぁ」
雪はどんどん降ってきて、じわじわと体が濡れて冷えていく。
足も痛くて、途中の公園で一度休むことにした。ベンチに座ってぼーっと空を見上げる。
ふわふわとした綿雪がどんどん積み重なっていく。明日は晴れだから、積もってるのが見れるのは今日位かな。
今日は体育もあったので疲れていて、眠くなってきた。
どうせ家に帰ってもやる事ないし、少し休憩するくらい、いいよね。
そう思いカバンを抱えて目を瞑る。直ぐに私の意識は微睡みに落ちた。
次の日、中学生の少女が公園で冷たくなった状態で発見された。靴やカバンを調べたところ、いじめと見られる痕跡があった。
足先は壊死しており、手首には自傷と見れられる傷があったため、見た目は綺麗な割に、凍死を選ぶほどの悲惨な精神状況だったと推測された。
だが、少女の顔は幸せな夢を見ているかのような、穏やかな顔をして永遠の眠りについていた。
彼女はきっと、夢の中で楽しく過ごしているのだろう。そう言って彼女の父親は涙を流していた。
誰もが彼女は望んで長い眠りについたと思ったが、彼女はまた、夢の中でも日常を繰り返すのだった。
「はぁ……またノート買い直さなきゃ」
夢の世界とも知らず、彼女は今日もいつも通りを繰り返し、解き放たれることのない地獄を彷徨い、生きていくのだった。
「君と一緒に」
汐風が吹く中、君と二人で崖の上で腰掛けて色んな話をする。
出会った時の話、喧嘩した時の話、お互いの両親の愚痴、先生への文句、出会ってきたろくでもない奴の特徴についての議論、そして、楽しかった思い出、沢山話した。
どんどん夜は深くなり、話の話題もなくなり波の音しか聞こえなくなって、着いた時よりかなり寒くなっていた。
「そろそろ行こうか」
「そうだね」
石を適当に拾ってポケットに詰める。そしてお互いの手をガムテープでグルグルと固定する。
寒さか恐怖か分からない震えのまま下を見る。高い。下は水だが高さがあるので助かることはないだろう。
「どうせならさ、せーので一気にジャンプしようよ」
君が笑ってそう言うから、僕も釣られて笑ってしまった。もう怖くない。
「いいね……一緒に天国に行こうね」
「うん。もし地獄に落ちても一緒にいようね」
「もちろん。じゃあ行くよ、せーの!」
手を振ってジャンプする。君と一緒なら、どこへだって行けるよ。
――続いてのニュースです。○○中学校に通う男子生徒二人が行方不明となっております。警察は事件に巻き込まれた可能性もあるとして、捜索を続けております。
「冬晴れ」 ⚠️馬鹿みたいに長いです(3700文字くらい)あとほぼ地雷系女子の学校行く日のVlogみたいになってます。お題は最後の方にちらっと出てきます。
寒い。そう思い眠気で朦朧とする中布団の中でもぞもぞと身を捩る。鳴り響くアラームを布団から手だけを出して雑に止め、また布団に潜る。
今日は学校行かなきゃ、今日こそ行かなきゃ。意を決して布団から出る。
やっぱり寒い。乾燥が怖くて暖房はタイマーかけていたけれど、こんなに寒いならつけっぱにしておくんだった。一気に冷えた体を少しでも温まるため、一応暖房をつけた。
私の通う学校は制服がない。だから好きな格好で行けるのはいいのだけど、その分コーデを考えるのが面倒だ。
面倒だけれど、外に出るなら見た目に妥協はしたくない。だからわざわざ朝の五時に起きたんだ。
ベッドを整えて、クローゼットを開く。今日はどんな服で行こう。寒いから、最近買った可愛いコートを着たい。それを元にコーデを考えていく。この時間が一番楽しい。
ピンクを基調とした配色に裾のところにモコモコのついたコートは、大きなリボンと取り外しができるケープがセットになっている。
取り敢えず寒いのでヒートテックを着て、ブラウスを選ぶ。暖かい部屋に入ったらコートは脱ぐから、ブラウスもしっかり選ぼう。
コートがピンクだから、中もピンクだけのブラウスにしたら変かな? そう思い白が基調のブラウスを選んだ。アクセントカラーとしてピンクのフリルが襟と袖に使われている。リボンは黒とピンクの物にして、次は肝心のスカート選び。
全体の印象をまとめる為に黒のスカートにしよう。長さはコートから少し見えるくらいだから、膝上くらいかな。
いくつか候補を出して、選んだのは二段組の裾がフリル状に縫い付けられているシンプルなスカート。
留め具は幅が何段階にも分かれているホック式なので、ウエストが変動してもきっちり締めることができる。最近また痩せたけれど、緩くなることはない。しっかりとウエストを強調してくれる。これで胸があればもっと強調されたのに。
このスカートはパニエとの相性がいい。コートを着ている時はふんわりとした大きめのシルエット、脱いだ時はウエストが締まっていてスカートは軽く広がっているメリハリのあるシルエットにしたいので、不自然すぎない用に、持ってる中でいちばん控えめで短めのパニエを下に履いた。これなら、自然に広がっているように見える。
生足は寒いので、白いニット生地のサイハイソックスを履く。三つ編み状の模様が可愛くてお気に入りだ。
これである程度コーデは決まった。次はメイクだ。
顔を洗って保湿をする。冬は感想崩れが怖いのでメイクに支障が出ない程度でしっかり目に。
それが終わったらいつも通りの手順で進めていく。メイクが決まってない時は試行錯誤ばかりで一時間ほどかかっていたけれど、今では三十分位で終わる。
カラコンは服に合わせて黒縁の薄めのピンクのものを選んだ。太陽の下や、明るいところでピンクがチラ見えするのがこのカラコンのいいところだ。着色直径も丁度良くて、宇宙人にならないしちゅるんとした抜け感がお気に入り。
ベースは保湿系の下地を使って、少し時間を置いてからコンシーラーで隈を隠す。ファンデは乾燥崩れが怖いので冬は基本塗らずにコンシーラーで気になったところを隠す程度にしている。
パウダーも保湿系のマットパウダー。なるべく二十四時間つけていられる肌に優しめのものを使うようにしている。薄く塗ってブラシで余分な粉を落とす。
アイメイクは淡いピンクで涙袋を作る程度。そこまでアイシャドウを塗らなくても、涙袋にピンクを入れるだけでぷっくりとナチュラルに見えるし、メイクした感が出つつ、派手にならないので自然に盛れる。
粘膜近くにはちょっと濃いめのピンクを入れる。これをすると中顔面が少し短くなる気がする。
アイラインは目の形に沿って少し垂れさせる。逆三角形の用に書くと綺麗に見える。長さはそこまで出さない方がいい。地雷ラインを引いた時の違和感が減るのと、ケバくならない。
地雷ラインは薄いアイライナーで引いて、アイシャドウでぼかす。そのアイライナーで切開ラインを軽く引く。
下まつげを下げてマスカラを塗って束にする。上まつ毛も上げてマスカラを塗り束感を作る。
ちょこっとだけ涙袋にラメを入れる。これでアイメイクはおしまい。
チークは白みピンクを軽く。寒さで少し頬が染まっているように見えるくらいでいい。
シェーディングは濃くならないように何度も重ねる。特にノーズシャドウは重要。鼻筋は自然に、顎の輪郭はしっかり強調する。
ハイライトは鼻筋、唇の上に入れて、薄めに目頭にも塗る。ギラギラしたものじゃなくて、自然にツヤを出してくれるものなので、ハイライトを入れた部分が悪目立ちすることなく自然に馴染みつつ立体感を出してくれる。
リップはティントタイプのものを使う。薄いのを塗って少し待ってからティッシュオフ、その後内側に少し濃い色を入れてぼかして、軽くティッシュで抑えたら口角を軽く描いて完成。マスクをつけるのでグロスは塗らない。セミマットくらいがちょうど良い。
これでメイクはおしまい。次はヘアセット。寝癖直しのスプレーをかけて、ドライヤーで乾かす。少しはマシになったところで、まずストレートにする為に全体にアイロンを通す。温度は百四十度位がちょうどいいと思ってる。
ストレートになったら髪の毛を結ぶ。この工程を飛ばすと結んだ後のセットが大変だから、面倒でもしっかりストレートにしている。前髪と顔周りも、この時にしっかり形を決める。
耳の少し上で結ぶと、少し幼い印象になる。左右差がないことを確認して、髪飾りをつける。今回は白のフワフワしたファーで覆われているヘアゴムを着けた。
次は毛先を巻いていく。緩くカールをつけれたらおしまい。香水はコームに吹きかける。なるべく離して、付けすぎないようにする。それで軽く髪を梳く。するとほのかに髪から香りが広がる。
今日選んだのはローズとベリーの香り。冬なので少し重厚感のある匂いのものを選んだ。ちなみに、シャンプーは香りが控えめのものを使っているので香りが混ざって喧嘩することはない。
前髪をスプレーで軽く固めて、髪の毛はおしまい。時間はまだまだ六時半。家を出るのは七時四十五分だから、余裕がある。
お気に入りのピンクのハンドバッグに教科書とルーズリーフ、バインダーとクリップボード、ファイルとタブレットを入れる。
まだ時間があるので、筆箱を変えることにした。ピンクの革製の筆箱から、新調した白いコーデュロイ生地の筆箱に変える。中に入っていた文房具をしまって、最近お気に入りの文房具に変える。中身の色は白とピンクで統一することにした。
シャーペンは二本。細めの白い軸で芯径が0.5のものと、太めのピンクの軸で芯径が0.5のもの。ボールペンは赤、青、黒の三色のもの(軸の色はピンク)と、黒、ピンク単体のもの。全て太さは0.5だ。黒のボールペンだけは中身を互換性のある白い本体に移し替えている。
定規はそのまま透明のものを使う。消しゴムと修正テープ、のりは少し淡いピンク。シャーペンの芯ケースはビビットなピンクのものと、淡いピンクのものがある。違いは芯径だ。
マーカーはそのまま、お気に入りの柔らかい色合いのピンクと濃い色のピンク、あとグレーの三色を入れた。
最後に自作のストラップをつけて新しいペンケースが完成した。白いふわふわのポンポンとピンクとシルバーのストラップがチャラチャラと揺れる。それをバッグに入れて、勉強道具はこれでおしまい。
あとはポーチにモバ充、イヤホン、リップ、鏡、コーム、持ち歩き用のヘアスプレーを入れて、それをバッグの中に入れる。
外側のポケットには予備マスクと鏡、ICカードと頓服を入れる。
最後に自作のぬいぐるみを付けたら準備完了。カーテンを開けるともう外は明るくなっていた。さっきまで薄暗かったのに、時計を見ると七時近くになっていた。冬の日の出はやっぱり遅いなぁ。
暖房を消して荷物を持って下に降りる。いつの間にかお母さんは仕事に行っていたみたいだ。まぁ六時四十五分にはいつも出てるし当たり前か。
用意されている朝ごはんを食べて、ボーッとニュースを見る。気が付けば時間になっていて、玄関に行って靴を履く。厚底でチェーンの着いたローファーは足が長く見えるからもうこれ以外履けない。愛してる。
「……寒っ」
扉を開くと冷たい風が入ってくる。寒いけれどケープコートのおかげで凍えるほどでは無い。せっかく可愛くなったんだから行こう。鍵を閉めた事を確認してから、駅に向かう。
空は澄み切っていて、風は冷たいが日差しが暖かい。天気予報でも言っていたけれど、これならお昼は少し暖かいだろうな。
綺麗な空を見て、少し頑張れそうな気がした。散歩したいくらいの気持ちのいい晴れだけど、学校に行かなくては。
スマホを取りだして空の写真を撮る。そこには雲ひとつないただの水色が広がっていた。それをいつもは愚痴や悩みを書いているアカウントに投稿した。
思っていたよりも寒くなくて、こんな日が毎日続けばいいのにと思う。いつもより少し軽い足取りで学校へと向かうのだった。
「幸せとは」
幸せって、なんだろうか。僕の周りはみんな僕のことを不幸な少年だと言い、哀れみの目を向けてくる。
でも僕は、そんなこと思ったことはない。確かに父が交通事故で亡くなり、母は強いショックを受けて家事もままならなくなり、仕事もドクターストップがかかり、現在無職。そして少し前にうつが悪化し、入院している。
うちは大家族とまでは行かないけれど、兄弟が多い。大学を中退して就職した兄と、高校二年の兄、高校一年の僕と、中学に上がったばかりの弟。
家系は三人で支え合っている。就職している兄と、高校生の兄と僕はバイトを入れて、その合わさった給料で暮らしている。
兄の扶養内で生活費を稼ぐのはかなり難しくて、去年は十二月にシフトを一気に減らして調整したけれど、十二月の生活費がキツかったので一年を通して調整しなければと反省した。
家のローンはもう無いが、母の入院費も支払わなければいけないので、その分貯めていると、どうしても生活がきつい。父の残した遺産は、一番下の弟を大学に行かせるためにと、兄達と相談して手をつけていない。
それでも、誰も文句を言わないし、弱い所を見せない。いつも笑顔が絶えなくて、僕は幸せだった。
周りから見たら息子達が仕事やバイトをひたすらして生活している哀れな子供達に見えるんだろうけれど、僕らは幸せだった。幸せの基準は人それぞれなのだ。
確かに、父を失い母は病み、子供だけで生活しているのは世間一般的には不幸の分類に入るのだろう。
でも、不幸せだと、勝手に決めつけるのは違う。僕らは幸せだ。いつか、周りにも理解してもらえたら、そう願って今日も笑顔で一日を過ごす。
いつも笑顔だった父のように笑っていれば、母もきっと良くなる。そう信じて僕は今日も近所の人に挨拶しながら登校する。
「ほら、あの子よ。家に強盗が入ってあの子以外亡くなったって言う」
「そうなの? そうは見えないけどねぇ……」
「あの子、お兄さんや弟と暮らしているって思い込んでるみたい。すごく楽しそうに話すから、どうも言いづらくて……ねぇ……?」
「バイトをして稼いだお金で暮らしているようだけど、あんなに幸せそうだし、現実を知ってしまうと壊れてしまいそうだわ」
「本当に、可哀想な子ね」
「日の出」
夜、眠れなくて勉強をしていた。下からは親が喧嘩している声が聞こえる。上の階まで響く声量、また近所の人に迷惑がかかっている。
直接僕に声に対する文句は言われない。なんなら心配され、哀れまれる始末だ。
何度も警察が来たことがある。母がヒステリックを起こして包丁を振り回したり物を投げて壊したりするからだ。
それに対して父は暴力で反撃する。どちらも変に負けず嫌いで、生死なんてどうでもいいのだろう。どっちも深手を負って搬送された経験がある。それでも、家庭内のことだから、警察は何もしない。
幸いなことに僕には声のせいで寝れないこと以外、被害はない。
学校から帰ったら机にお金が置いてあるのでそれで適当にご飯を買う。余ったお金は貯めるか売店でパンを買うために使う。
薬局で嗜好品を買うこともあるけど、それでも貯金に回せる額が残る。
うちは貧乏ではない。共働きで、どちらかと言うとお金はあるほうだ。それでも両親の仲は冷めきっていて、なのに喧嘩には熱が入って、早く離婚すればいいのにと何度も思った。
僕も、二人に必要とされていないことは知っている。それでも、高校と大学には行かせるつもりらしく、参考書など、勉強に必要なものが欲しいとメモを机に置いておけば、次の日には机にお金が置いてある。
せめて行くなら偏差値が高いところに、それと、暇を潰すために僕は沢山勉強をしてきた。
テストの点も悪くない。一応知らせておこうと成績表と点数表は机に置いておく。点数がいいと次の日お金が多く置かれていることから、多分育児放棄するほどでは無い。なんならマシな方だ。
僕に手を上げたことは無いし、会話がないだけでなにか文句を言われたり怒鳴られたりすることもない。だからかなり自由にさせてもらっている。睡眠以外は。
喧嘩がいつもより酷かった次の日には、父がたまにメモ付きでお金を置いていくことがある。そのメモには勉強の邪魔をしてすまなかった。とだけ書かれている。一応二人とも最低限のことはしてくれているし、僕ももう中三だ。ある程度のことは自分でできる。
カーテンの隙間から見える空が、少し明るいことに気がついた。もうそんなに時間が経ったのか。
気づけば喧嘩も終わっていたようで、家は静寂に包まれていた。集中していたのと、たまにチラつく考え事で時間の進みを見ていなかった。時計は六時半すぎを指している。寝る時間、ないな。
何度も見た日の登る瞬間。これを見ると虚しくなる。キラキラと光る太陽は一日の始まりを表していて、また今日が来た、と自覚させられるからだ。
荷物をまとめて身なりを整える。教材をまとめて机の上を片づける。時間は七時を過ぎていた。そろそろ向かわなければ。
コートを着て、リュックを背負う。リビングに置いてあるお金を持って、靴を履く。
「……行ってきます」
返事なんか帰ってくるわけない。それでも、一応口に出して、今日も行きたくない学校に行く。
今日は夜、眠れるといいな。そう考えながら僕は通学路でご近所さんに挨拶しながら学校へと向っていくのだった。