暁 瑞稀

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3/14/2026, 1:37:23 AM

『ずっと隣で』⚠️ホラー注意⚠️

 月明かりが照らす海辺で、二人は幸せそうに笑って約束を交わした。
「ずっと一緒にいようね」
「うん。ずっとだよ」
 二人の少年が手を繋ぎながら、ズブズブと水の中へと突き進んでいく。服のポケットには大量の石が詰め込まれている。首元まで水が来たところで波にさらわれ全身が水に浸かりどんどん沈んでいく。
 肺の中に水が入ってくる感覚、息苦しいと考える間もなく意識を失う。
 しばらく経って、少年は目を覚ました。目が覚めてしまった絶望感よりも、親友だけが先に逝ってしまったことに対するショックのことが大きかった。
「ずっと一緒って言ったのになぁ」
 そう泣きそうな声で殆ど彼とは分からないその肉塊に縋り付く。
 
 
 それから数年が経ち、生き残った彼は墓参りに来ていた。やっと気持ちに踏ん切りが着き、彼にそのことを伝えに来たようだ。
「――おっと、話しすぎたな。それじゃあ、ずっと隣で見守っていてくれよ」
『ずっと隣で待ってるね』
 風に乗せて彼の声でそう聞こえた気がした。
 
 
 ――次の日、彼は遺体で見つかった。彼は家に帰り就寝した際に、溺死した。誰もこの不可解で奇妙な事件に関わりたがらず、事故として処理された。
 彼は知らない暗闇にいた。奥に人影が見える。後ろ姿からすぐに親友だとわかった。
 思わず走り出して彼を呼ぶ。そして振り返った彼は――顔がぐちゃぐちゃになっていて、肉や脂肪、骨が丸見えの状態だった。
「え……?」
『待ってたよずっと隣でねねねねねねねね待って待って待って待ってままままままままままま』
「ひっ……」
 おぞましく変化した親友の姿を見て驚き、後ずさるが、彼?は関係なしに近付いてくる。
「なっ!?」
 逃げようとした彼の足は血管のようなツタで固定されていた。それは彼の手首から出ているもので、どんどん体に絡みついてくる。
 彼は抵抗するが、意味もなく全身が固定される。
『これでずずずずずずずずっといいいいいいいい一緒』
 変わり果てた親友が隣に座る。彼は恐怖で頭がおかしくなりそうだった。そんな時、確かに親友の声でこう聞こえた。
『ずっとだからね!』
 
 
 二人の結末を見ていた神はため息を吐いた。
「所詮人間か、欲には抗えない。欲のためなら親友を殺し永遠に縛り付けるとは、いやはや恐ろしいものだ」
 そう言ってつまらなそうに二人を消した。
「死ぬ間際の願い事を叶えてやったが、失敗だったな。悪霊化するとは、やはり人間は愚かだ」
 次の神の暇つぶしの犠牲者は誰なのか、それは神のみぞ知る。

3/12/2026, 5:35:23 AM

『平穏な日常』⚠️ホラーとグロ注意⚠️
 
 いつもは怒鳴り声の止まない家が、今日は酷く静かだ。
 これが平穏と言うやつなのだろうか。これが毎日続けばいいのに。そうすれば毎日怯える必要が無くなる。
 殴られない、怒鳴られない。部屋が静寂に包まれていて、時計の音だけが鳴り響く。
 いつもなら怒られる料理も、今日は怒られない。思う存分美味しいものを作ってみよう。そう思い調理に取り掛かる。
 肉を切って焼いて、塩コショウで味付けをする。次はみそ汁を作る。新鮮なみそが手に入ったので早速使ってみた。味見をしたがなかなかの出来だった。
 最後はデザート。丸いゼリーの上に赤くドロっとしたソースをかける。
 完成した。それをリビングに運んで一人で手を合わせる。
「頂きます」
 まずは肉。中々に噛みごたえがあって脂も乗っている。こんなに美味しいものは初めて食べた。
 それからみそ汁を飲む。いい感じに出汁が効いていてこれもまた美味い。汁ごと入れてよかった。
 最後はデザート。赤いソースの光るプルンとした丸いゼリー、これも甘みと瑞々しさが際立っていて、あっという間に食べきってしまった。
 嗚呼、美味しかった。好きに料理しても怒られない。こんな平穏な日常が続けばいいのに。
 遠くでサイレンが鳴っている。物騒な世の中だ。満腹で機嫌がいい僕は、片付けを再開するのであった。
 

 そう思う彼の足元は赤い血溜まりが出来ていて、頭のない遺体と腕の無い遺体が転がっていた。
 鍋などには調理された被害者の断片が確認された。
 数分後、警察が到着して彼を捕まえた。その際に彼は一言、こう言った。

 
「ご馳走様でした」

1/23/2026, 5:03:38 AM

「タイムマシーン」
 
 タイムマシーン。これをお題に作文をかけと言われて早一週間。僕はまだ一行しか書けていない。
 周りの人達は、楽しそうに書き、満足そうに提出しているのに対して、僕は憂鬱な気分で次の文字を書けないままでいた。
 だってよく考えてみろ。そんなものあって何がある。未来を見て、もし自分が居なくなっていたら? 過去を見て、自分を消してしまいたい衝動に駆られたら?
 今を見るだけでも辛いのに、未来や過去なんて見たら、僕はきっとどんな結果であれ、後悔するだろう。
『もしもタイムマシーンがあったら、僕はきっと』
 ここで止まって次に進めない。バカ正直に書いたとして、後悔することは目に見えている。だから綺麗事を書くしかない。
 でもその綺麗事すら思いつかない。だから僕は作文が苦手なのだ。
 この作文は、卒業式前日に封筒に入れたものを僕らが入学した年に植えた桜の木の下に埋めるそうだ。開けるのは二年と数ヶ月後。全員が二十歳になる頃だ。
 だからこれはほぼ未来の自分に向かって書くものとして扱っても間違いではない。だから余計に書き辛いのだ。
 未来なんて考えたくない。今この瞬間すらキツイのに、未来の僕はどれだけの重圧に耐えているのだろうか。そう考えるだけで頭が重い感情で埋め尽くされる。
 嗚呼、嫌だ、今にも破きそうだ。本当に書きたくない。考えたくない。それでも期限は今週中で、今は水曜日。時間がない。
 そんな時、一つの案が浮かんだ。これなら書ける。それに、この作文は自由性を求められるので先生のチェックは入らない。ならば、アレにしてしまおう。
 そう思い一度全て消して書き進めていくと、不思議と筆は紙の上を滑る。書き終わり、封筒に入れて先生に渡す。
「なんだ、期限内に終わるなんて珍しいな」
「まぁ……はい」
 先生はそれをタイムカプセルの中に入れた。それを見届けて、僕は席に戻った。
 
 そして二年数ヶ月後。春の風が優しく吹く中、元子供たちはタイムカプセルを開けた。
 一人、来ていない者がいたが、事情は全員把握していて、開けることにした。
「……ひっ!」
 その中には、憎悪の詰まったいじめの告発文とその証拠の在処、そして、遺書と見られるものが書かれていた。
 彼はタイムカプセルを埋めたあと、母親にタイムマシーンに乗ってアイツらを後悔させてやる。そう言って家から出て、後日遺体となって見つかった。
 


 体にあった痣などから虐待といじめが疑われたが、結局証拠不十分で、ただの自殺となっていた。
 ずっと怪しまれていた母親も、これで肩の荷がおりただろう。そして、犯人たちの人生はこの瞬間から、壊れていくのだった。
 


「お父さん、お母さん、ごめんなさい。僕はアイツらに殺されました。いじめのせいで不登校になった時、何も聞かないで休ませてくれてありがとう。幸せでした。迷惑かけてごめんなさい。大好きだよ」
 


「そして、僕をいじめてきた奴らへ。地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ地獄に落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ落ちろ」

1/14/2026, 10:48:52 AM

「どうして」
 
 どうして僕は、普通になれないんだろう。
 勉強も運動も、人との関わりも苦手で、何も特技も目立つこともなく、ただただ生きているだけ。
 精神を病んで、普通になんてもう戻れない。なんで僕だけ。
 どうして、どうしてどうしてどうしてどうして。どうして僕はこんなんなんだろう。
 兄は優秀な外科医で、弟はサッカーのスポーツ推薦で学校が決まり、今も活躍している。母はキャリアウーマンで父は会社を経営している。
 僕は、高校三年生になっても進路が決まることもなく、ただただ無駄な一日がすぎていく。
 どうして僕ばかり。そんな気持ちがぐるぐる頭を侵略してくる。
 住んでいるマンションの屋上へと向かい、後ろを向いて身を任せる。
「(あーあ)どうしてかなぁ」

1/9/2026, 3:01:53 AM

「色とりどり」
 
 おかあさんがいうの。
「あんたは病気なの、お願いだから薬を飲んでよ」
 でもね、わたしはびょうきじゃない。めのまえにひろがるにじいろのせかい。これはてんごくなんだ。
「お母さんここは天国なんだよ」
 そういうとおかあさんはなきだした。まわりのてんしたちがおかあさんをなぐさめる。
「きれーだねー」
 たのしくてわらう。きれいだからわらう。てんしたちとはなしてわらう。
 でも、おかあさんはないてる。
 へんだなぁ。てんごくでなくなんて。おかあさんはじごくにいるとおもってるのかな。
「天国だよ。天国なんだよ。だから泣いちゃダメだよ」
 おかあさんがたちあがる。てにもってるのはまほうのすてっき。それをふりかぶる。
 きっとまほうをみせてくれるんだ!
「おかあさ」
 ゴッというおとがなって、めのまえがちかちかした。にじいろのせかいが、しろくろにかわって、わたしはねてしまった。
 
 
「母目線」
 
 私の娘は病気だ。彼女が見ている世界は私たちとは違う。薬を飲んでいた頃は落ち着いていたのに、薬を飲まなくなって、言動がおかしくなった。何度も薬を飲むように促しても、話が通じず会話にならない。
「あんたは病気なの、お願いだから薬を飲んでよ」
 そう言うと娘は支離滅裂なことを言い始める。
「天国お母さんここはお母さんだよ天国なんだ」
 もう治らないんだ。そう思うと涙が溢れて膝から崩れ落ちる。
 すると娘はきゃっきゃと笑い始めた。またなにか見えているのだろう。
「きれーだねー」
 もう駄目なんだ。私の手には追えない。
「天国だよ。天国なんだよ。駄目だよだから泣いちゃダメ天国天国天国綺麗だねぇ」
 支離滅裂なことを繰り返し言う娘は相変わらず焦点が合わない。
 意を決して立ち上がって、近くにあった夫のゴルフクラブを持つ。娘はキラキラとした目でこちらを見ている。
 振りかぶって、振り下ろす瞬間、まだ幼く普通だったあのころのような表情でこちらを見ている娘と目が合った。
「おかあさ」
 ゴッと鈍い音がして娘が倒れ込む。
「ごめんね。お母さんも行くからね」
 そう言って私はベランダから娘のいる所へと向かうのだった。

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