暁 瑞稀

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「幸せとは」
 
 幸せって、なんだろうか。僕の周りはみんな僕のことを不幸な少年だと言い、哀れみの目を向けてくる。
 でも僕は、そんなこと思ったことはない。確かに父が交通事故で亡くなり、母は強いショックを受けて家事もままならなくなり、仕事もドクターストップがかかり、現在無職。そして少し前にうつが悪化し、入院している。
 うちは大家族とまでは行かないけれど、兄弟が多い。大学を中退して就職した兄と、高校二年の兄、高校一年の僕と、中学に上がったばかりの弟。
 家系は三人で支え合っている。就職している兄と、高校生の兄と僕はバイトを入れて、その合わさった給料で暮らしている。
 兄の扶養内で生活費を稼ぐのはかなり難しくて、去年は十二月にシフトを一気に減らして調整したけれど、十二月の生活費がキツかったので一年を通して調整しなければと反省した。
 家のローンはもう無いが、母の入院費も支払わなければいけないので、その分貯めていると、どうしても生活がきつい。父の残した遺産は、一番下の弟を大学に行かせるためにと、兄達と相談して手をつけていない。
 それでも、誰も文句を言わないし、弱い所を見せない。いつも笑顔が絶えなくて、僕は幸せだった。
 周りから見たら息子達が仕事やバイトをひたすらして生活している哀れな子供達に見えるんだろうけれど、僕らは幸せだった。幸せの基準は人それぞれなのだ。
 確かに、父を失い母は病み、子供だけで生活しているのは世間一般的には不幸の分類に入るのだろう。
 でも、不幸せだと、勝手に決めつけるのは違う。僕らは幸せだ。いつか、周りにも理解してもらえたら、そう願って今日も笑顔で一日を過ごす。
 いつも笑顔だった父のように笑っていれば、母もきっと良くなる。そう信じて僕は今日も近所の人に挨拶しながら登校する。
 
「ほら、あの子よ。家に強盗が入ってあの子以外亡くなったって言う」
「そうなの? そうは見えないけどねぇ……」
「あの子、お兄さんや弟と暮らしているって思い込んでるみたい。すごく楽しそうに話すから、どうも言いづらくて……ねぇ……?」
「バイトをして稼いだお金で暮らしているようだけど、あんなに幸せそうだし、現実を知ってしまうと壊れてしまいそうだわ」
 
「本当に、可哀想な子ね」

1/4/2026, 11:06:08 AM