「今年の抱負」
僕は今、頭を悩ませている。学校で出た習字の宿題で、今年の抱負を書かなければいけないからだ。
今年の抱負なんて、今生きるのに必死なのに、今年一年のことなんて考えてられない。
離婚寸前の両親による毎晩の喧嘩。学校では一人ぼっち。頼れる友達もいない。僕の居場所はネットだけだった。
半紙を前に悶々と考える。早くしないと親が帰ってきてしまう。それらしい事を書かなければ。
受験生になるから……必勝? 何に勝つんだよ。却下だ。前進とか? いや、こんな先の見えない状況の中、前進なんて書いても虚しくなるだけだ。
変となところで嘘をつけないこの癖と、捻くれた性格を直したい。
しばらく考えて、いい一言が思いついた。飛翔、大空へ羽ばたく的な意味だったはず。調べるのは面倒だから、もうこれでいいや。
墨を筆に含ませて、半紙に書いていく。何枚書いても字なんて変わらないのだから、もうこれでいいや。
道具を片付けて半紙の墨が乾いたことを確認して、丁寧にしまう。
すると丁度母が帰ってきた音がした。もうすぐ父も帰ってくる。毎晩の喧嘩で寝不足だから、今少しでも寝ておこう。
今年こそは飛べますように。そう願って眠りについた。
「新年」 注意⚠️:少し重めの内容となっております。
新年。それは僕が一番嫌いなもの。また嫌な一年になるのでは無いか。そう言った不安に駆られるからだ。
去年は一年生の学年末テストの時にインフル、二学期の期末で自転車にぶつかられ、利き手を骨折。そして年末、毎年恒例僕以外の家族は旅行に行っている。
まぁ最後はいい。好きなことができるから。でも、1週間五千円はかなりキツイ。
僕には弟と違ってお小遣いはないから、バイト代を使うしかない。使い道は……まぁ言わないでおこう。
食べ物よりも通院でお金が飛ぶ。そしてほぼ習慣と化している趣味にもお金が飛ぶ。
趣味は褒められたものじゃない。自慢できるものでも無い。ただの自己満足。それなのにどの趣味よりもお金が飛んでいく。
中学三年生。受験の時期に精神を病んでから、僕は家族に見放された。母は以前より酷いヒステリーを僕に対して頻繁に起こすようになり、父は気の持ちようだと説教してくる。少しでも反抗的な態度をしたとみなされたら、折檻が始まる。弟は頭のおかしいキチガイだと、僕のことを毛嫌いしているようだ。
母と父は弟を溺愛。唯一の救いだった兄は、僕が高校上がってすぐに交通事故で会えなくなってしまった。
そして一人で迎えた年越し、ジャンプなんてする気力もなく、ボーッと天井を眺めていた。
ぐるぐると回る視界の中、兄のことを思い出したら幼少期の楽しかった頃を思い出した。
兄とは歳が離れていて、僕が小学校一年生の時、兄は小学五年生。弟は四歳だった頃、三人でよく遊んだ。兄は体の弱い僕を気遣ってくれて、僕も一緒にできる遊びを考えて遊んでくれた。弟にも、同じように接していて、本当にいい兄だった。
そんな兄に親は期待していて、中学の頃難関校を受けさせたが失敗、兄は定時制に通うことになり親に見放された。
昼は働き夜は学校。忙しい生活に加え両親からの圧にかなり疲弊していただろうに、僕たちには優しく接してくれた。バイト代でお小遣いをくれたりもした。僕はそれを大切に取っておいた。兄の誕生日が来た時にプレゼントを買おうと思っていたから。
それ以外で兄がお金を使うところを見たことがない。親に大学の費用は出さないと言われていたが、自分の貯金で大学に行った。そんな兄を僕は信頼していたし尊敬していた。
それに、僕が精神を病んでも、兄だけは味方でいてくれた。両親を説得して病院に連れて行ってくれたのも兄だ。費用も、まだバイトをすることの出来ない僕に変わって出してくれた。福祉のサービスなども調べて、積極的に使わせてくれた。
その頃から弟は僕と兄を軽蔑するようになっていた。両親が僕と兄を見捨てたから、愛情は全て弟に注がれ、弟は見事にわがまま放題の暴君へと変貌した。
そんな家にいて休まるはずもなく、僕の病状は悪化していった。そんな時、兄の誕生日が近いことを思い出し、最期に渡そうと、ずっと貯めていたお小遣いで腕時計を買った。
渡すと、泣いて喜んでくれて、それから毎日腕に着けてくれていた。
そしてある日、兄が子供を庇って撥ねられたと知らせが入り、僕は学校を飛び出して病院に向かった。兄は、病院に着いた時にはもう手遅れだったらしい。白い布がかけられた兄を見て僕は立ち尽くすことしか出来なかった。
ふと、捲って顔を見てみるとまるで眠っているみたいで、交通事故にあったのが信じられなくて、布を剥ぎ取った。そこで交通事故がいかに凄惨なものだったかを知った。それでも、腕に着いていた時計は綺麗なままで、まだ時を刻んでいた。
兄への誕生日プレゼントは、形見となった。
後を追うことなんてできなかった。兄の顔がチラついて、直ぐに踏みとどまってしまう。プレゼントを渡した時に見せた困ったように照れながら笑う兄のあの顔が、忘れられなかった。
モヤモヤぐちゃぐちゃぐるぐる。感情が渦巻いていく。兄に会いたい。逢いに逝きたい。それでも、兄が悲しむのが嫌で、行動に移せない。兄が撫でてくれた時の感触が蘇って、毎回辞めてしまう。
……新年早々こんなことを考えるなんて、本当に僕はダメ人間だ。
いつの間にか日が登ろうとしている。体を起こして机に向かうように座れば、ゆっくりと日が出てくるのが見える。初日の出かぁ。綺麗だとは思う。でも、いつ見ても日の出は綺麗だ。正直、皆がこぞって初日の出にこだわる理由がよく分からない。
新年特有のこの特別感。僕は嫌いだ。今年はいい一年になるように頑張らないと、と思うから。
でも、今年は、今年こそは、いい一年になると、いいなって、ちょっとだけ、ほんの少しだけ祈った。神でもない、兄に。いつも支えてくれた兄にお願いをする。見守っていて、と。
「願うのは自由、だよね、兄さん」
なんて、ね?
「良いお年を」
年が明けましたね。今日は小説ではなくお話をしたいと思います。
年明け直後、皆さんは何を思いますか?何を考え何を感じますか?
私は希死念慮に襲われていました。
年が明けて、友人に明けましておめでとうと送って、妹が初詣に行って、私は母が寝てる部屋でふと、今年やることが既に多すぎて限界を迎えました。
前までは、来年にやる。と思っていたので焦燥感は今よりは少なかったです。
ただいざ年が明けてみると、あれもこれもやれなければいけない。また今年も病気に悩まされるのか、と、色々な悩みと憂鬱さが頭を埋めつくしました。
リハビリも年金も手帳も成人式も同窓会も何もかも、考えるだけで割れそうで、今こうして気持ちを吐き出している次第です。
年を越す瞬間、私はTwitterに描いた絵を投稿するため待機して、投稿して、それで友達に連絡して……そして今です。
こんな感情で良い一年になるのでしょうか。それは誰にも分かりません。私も分かりません。
ただ、皆さんに言えることは、良い一年になりますように。それだけです。
私がうだうだ何か言っても、伝わったとしてもそれは意味が無いものだと思います。だから、私の願いを皆さんにせめてものまじないとして伝えたいと思います。
今年も無理しすぎないように、良い一年にならなくてもいいから、最悪に押しつぶされませんように。
そしてこれは私へのメッセージです。
頑張ってる自分を認めてあげる。退院時に約束したことをちゃんと、忘れないで、守って。看護師さんとの指切りを無駄にしないで。ちゃんと生きて。
これで私の気持ちは以上です。きっと皆さんはスクロールしてしまえばこの小説(自語り)には会えないでしょう。それでもいいです。少しでも、気持ちが楽になればいいなと願っております。
それでは皆様、遅れましたが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
「星に包まれて」
私はキラキラした星空を見るのが好きだ。今日もまた、ベランダで綺麗な星空を見ている。
手にはお母さんが買ってくれた星空の図鑑を持って、寒い中丸まって体を温める。
目の前に見える星はいつもよりはっきり見えて、少し嬉しくなって声が出た。
「綺麗だね!お母さん!」
そう言っても何も返ってこない。隣にお母さんが居ないことを今思い出した。呼びに行こうと思ってももう会えない。
今いるママは鍵を閉めて仕事に行ってしまった。私が悪いことしたから、ベランダに出した。
でも私は嫌いじゃなかった。少し寒いけど、綺麗な星空が見えるから。
お母さんとよく見た綺麗な星空。これを見ると心がポカポカして、体も温まる気がする。
その時、流れ星が見えた。
「わぁ……!」
私の頭に浮かんだのは、お母さんに会えますように。だった。
すると、星が沢山私の元に降ってきた。キラキラした星が集まってどんどん形になる。私に当たった星は、金平糖になって床に落ちた。
その星はどんどん人の形になってきて、お母さんに似てきた。
私は金平糖を拾って食べる。甘い味が口に広がる。沢山集めて、振り返ると、そこにはお母さんがいた。
「お母さん! はいこれ! 凄く美味しいよ!」
そう言って渡すと、お母さんは困ったように笑って私を抱きしめた。
暖かくて、抱きしめ返す。すると、体がふわりと浮いて、お母さんと一緒に星空の方へ向かった。
「これからは、ずっと一緒よ」
お母さんがそう言って頭を撫でてくれた。いつもしてくれたこの優しい手つきに顔がへにゃりと歪んだ。
「うん!」
私は、星に包まれるように夜空に飲み込まれた。
これからはずっとお母さんと一緒。
お星様が叶えてくれた。
ありがとう。
さようなら、ママ、パパ。
私は今、凄く幸せだよ。
「静かな終わり」
人の命は、儚く淡い。簡単に壊れてしまう。だからきっと、美しく尊いものだと言われるのだろう。そしてその終わりを迎えると、静かな微睡みに沈むのだろう。
そんなことを、歪む天井を眺めながら考える。周りに散らばる小さな粒は、私の吐き出したもので、酷く臭う。独特の香りは私に終わりを連想させる。
吐いては新しいものを飲んで、時間が経ってまた吐き気に襲われてまた戻す。そしてまた飲む。その繰り返しを何度もやって、遂に粒が尽きた。
目の前がぐるぐると歪み、焦点が合わなくなる。目が有り得ない方向を向いていることだけはわかる。
耳鳴りも落ち着いてきて、環境音が聞こえなくなってきた。
静かだ。とても静か。目の前はぐるぐると周りながら段々と暗くなっていく。たまに白い光が目の前にチラつくのは瞳孔が開いているせいだろう。
意識が遠のいて、眠りにつくように私は終わりを迎えた。
想像していた通り、命の終わりは、とても静かだった。