暁 瑞稀

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1/5/2026, 7:15:13 PM

「冬晴れ」 ⚠️馬鹿みたいに長いです(3700文字くらい)あとほぼ地雷系女子の学校行く日のVlogみたいになってます。お題は最後の方にちらっと出てきます。

 寒い。そう思い眠気で朦朧とする中布団の中でもぞもぞと身を捩る。鳴り響くアラームを布団から手だけを出して雑に止め、また布団に潜る。
 今日は学校行かなきゃ、今日こそ行かなきゃ。意を決して布団から出る。
 やっぱり寒い。乾燥が怖くて暖房はタイマーかけていたけれど、こんなに寒いならつけっぱにしておくんだった。一気に冷えた体を少しでも温まるため、一応暖房をつけた。
 私の通う学校は制服がない。だから好きな格好で行けるのはいいのだけど、その分コーデを考えるのが面倒だ。
 面倒だけれど、外に出るなら見た目に妥協はしたくない。だからわざわざ朝の五時に起きたんだ。
 ベッドを整えて、クローゼットを開く。今日はどんな服で行こう。寒いから、最近買った可愛いコートを着たい。それを元にコーデを考えていく。この時間が一番楽しい。
 ピンクを基調とした配色に裾のところにモコモコのついたコートは、大きなリボンと取り外しができるケープがセットになっている。
 取り敢えず寒いのでヒートテックを着て、ブラウスを選ぶ。暖かい部屋に入ったらコートは脱ぐから、ブラウスもしっかり選ぼう。
 コートがピンクだから、中もピンクだけのブラウスにしたら変かな? そう思い白が基調のブラウスを選んだ。アクセントカラーとしてピンクのフリルが襟と袖に使われている。リボンは黒とピンクの物にして、次は肝心のスカート選び。
 全体の印象をまとめる為に黒のスカートにしよう。長さはコートから少し見えるくらいだから、膝上くらいかな。
 いくつか候補を出して、選んだのは二段組の裾がフリル状に縫い付けられているシンプルなスカート。
 留め具は幅が何段階にも分かれているホック式なので、ウエストが変動してもきっちり締めることができる。最近また痩せたけれど、緩くなることはない。しっかりとウエストを強調してくれる。これで胸があればもっと強調されたのに。
 このスカートはパニエとの相性がいい。コートを着ている時はふんわりとした大きめのシルエット、脱いだ時はウエストが締まっていてスカートは軽く広がっているメリハリのあるシルエットにしたいので、不自然すぎない用に、持ってる中でいちばん控えめで短めのパニエを下に履いた。これなら、自然に広がっているように見える。
 生足は寒いので、白いニット生地のサイハイソックスを履く。三つ編み状の模様が可愛くてお気に入りだ。
 これである程度コーデは決まった。次はメイクだ。
 顔を洗って保湿をする。冬は感想崩れが怖いのでメイクに支障が出ない程度でしっかり目に。
 それが終わったらいつも通りの手順で進めていく。メイクが決まってない時は試行錯誤ばかりで一時間ほどかかっていたけれど、今では三十分位で終わる。
 カラコンは服に合わせて黒縁の薄めのピンクのものを選んだ。太陽の下や、明るいところでピンクがチラ見えするのがこのカラコンのいいところだ。着色直径も丁度良くて、宇宙人にならないしちゅるんとした抜け感がお気に入り。
 ベースは保湿系の下地を使って、少し時間を置いてからコンシーラーで隈を隠す。ファンデは乾燥崩れが怖いので冬は基本塗らずにコンシーラーで気になったところを隠す程度にしている。
 パウダーも保湿系のマットパウダー。なるべく二十四時間つけていられる肌に優しめのものを使うようにしている。薄く塗ってブラシで余分な粉を落とす。
 アイメイクは淡いピンクで涙袋を作る程度。そこまでアイシャドウを塗らなくても、涙袋にピンクを入れるだけでぷっくりとナチュラルに見えるし、メイクした感が出つつ、派手にならないので自然に盛れる。
 粘膜近くにはちょっと濃いめのピンクを入れる。これをすると中顔面が少し短くなる気がする。
 アイラインは目の形に沿って少し垂れさせる。逆三角形の用に書くと綺麗に見える。長さはそこまで出さない方がいい。地雷ラインを引いた時の違和感が減るのと、ケバくならない。
 地雷ラインは薄いアイライナーで引いて、アイシャドウでぼかす。そのアイライナーで切開ラインを軽く引く。
 下まつげを下げてマスカラを塗って束にする。上まつ毛も上げてマスカラを塗り束感を作る。
 ちょこっとだけ涙袋にラメを入れる。これでアイメイクはおしまい。
 チークは白みピンクを軽く。寒さで少し頬が染まっているように見えるくらいでいい。
 シェーディングは濃くならないように何度も重ねる。特にノーズシャドウは重要。鼻筋は自然に、顎の輪郭はしっかり強調する。
 ハイライトは鼻筋、唇の上に入れて、薄めに目頭にも塗る。ギラギラしたものじゃなくて、自然にツヤを出してくれるものなので、ハイライトを入れた部分が悪目立ちすることなく自然に馴染みつつ立体感を出してくれる。
 リップはティントタイプのものを使う。薄いのを塗って少し待ってからティッシュオフ、その後内側に少し濃い色を入れてぼかして、軽くティッシュで抑えたら口角を軽く描いて完成。マスクをつけるのでグロスは塗らない。セミマットくらいがちょうど良い。
 これでメイクはおしまい。次はヘアセット。寝癖直しのスプレーをかけて、ドライヤーで乾かす。少しはマシになったところで、まずストレートにする為に全体にアイロンを通す。温度は百四十度位がちょうどいいと思ってる。
 ストレートになったら髪の毛を結ぶ。この工程を飛ばすと結んだ後のセットが大変だから、面倒でもしっかりストレートにしている。前髪と顔周りも、この時にしっかり形を決める。
 耳の少し上で結ぶと、少し幼い印象になる。左右差がないことを確認して、髪飾りをつける。今回は白のフワフワしたファーで覆われているヘアゴムを着けた。
 次は毛先を巻いていく。緩くカールをつけれたらおしまい。香水はコームに吹きかける。なるべく離して、付けすぎないようにする。それで軽く髪を梳く。するとほのかに髪から香りが広がる。
 今日選んだのはローズとベリーの香り。冬なので少し重厚感のある匂いのものを選んだ。ちなみに、シャンプーは香りが控えめのものを使っているので香りが混ざって喧嘩することはない。
 前髪をスプレーで軽く固めて、髪の毛はおしまい。時間はまだまだ六時半。家を出るのは七時四十五分だから、余裕がある。
 お気に入りのピンクのハンドバッグに教科書とルーズリーフ、バインダーとクリップボード、ファイルとタブレットを入れる。
 まだ時間があるので、筆箱を変えることにした。ピンクの革製の筆箱から、新調した白いコーデュロイ生地の筆箱に変える。中に入っていた文房具をしまって、最近お気に入りの文房具に変える。中身の色は白とピンクで統一することにした。
 シャーペンは二本。細めの白い軸で芯径が0.5のものと、太めのピンクの軸で芯径が0.5のもの。ボールペンは赤、青、黒の三色のもの(軸の色はピンク)と、黒、ピンク単体のもの。全て太さは0.5だ。黒のボールペンだけは中身を互換性のある白い本体に移し替えている。
 定規はそのまま透明のものを使う。消しゴムと修正テープ、のりは少し淡いピンク。シャーペンの芯ケースはビビットなピンクのものと、淡いピンクのものがある。違いは芯径だ。
 マーカーはそのまま、お気に入りの柔らかい色合いのピンクと濃い色のピンク、あとグレーの三色を入れた。
 最後に自作のストラップをつけて新しいペンケースが完成した。白いふわふわのポンポンとピンクとシルバーのストラップがチャラチャラと揺れる。それをバッグに入れて、勉強道具はこれでおしまい。
 あとはポーチにモバ充、イヤホン、リップ、鏡、コーム、持ち歩き用のヘアスプレーを入れて、それをバッグの中に入れる。
 外側のポケットには予備マスクと鏡、ICカードと頓服を入れる。
 最後に自作のぬいぐるみを付けたら準備完了。カーテンを開けるともう外は明るくなっていた。さっきまで薄暗かったのに、時計を見ると七時近くになっていた。冬の日の出はやっぱり遅いなぁ。
 暖房を消して荷物を持って下に降りる。いつの間にかお母さんは仕事に行っていたみたいだ。まぁ六時四十五分にはいつも出てるし当たり前か。
 用意されている朝ごはんを食べて、ボーッとニュースを見る。気が付けば時間になっていて、玄関に行って靴を履く。厚底でチェーンの着いたローファーは足が長く見えるからもうこれ以外履けない。愛してる。
「……寒っ」
 扉を開くと冷たい風が入ってくる。寒いけれどケープコートのおかげで凍えるほどでは無い。せっかく可愛くなったんだから行こう。鍵を閉めた事を確認してから、駅に向かう。
 空は澄み切っていて、風は冷たいが日差しが暖かい。天気予報でも言っていたけれど、これならお昼は少し暖かいだろうな。
 綺麗な空を見て、少し頑張れそうな気がした。散歩したいくらいの気持ちのいい晴れだけど、学校に行かなくては。
 スマホを取りだして空の写真を撮る。そこには雲ひとつないただの水色が広がっていた。それをいつもは愚痴や悩みを書いているアカウントに投稿した。
 思っていたよりも寒くなくて、こんな日が毎日続けばいいのにと思う。いつもより少し軽い足取りで学校へと向かうのだった。

1/4/2026, 11:06:08 AM

「幸せとは」
 
 幸せって、なんだろうか。僕の周りはみんな僕のことを不幸な少年だと言い、哀れみの目を向けてくる。
 でも僕は、そんなこと思ったことはない。確かに父が交通事故で亡くなり、母は強いショックを受けて家事もままならなくなり、仕事もドクターストップがかかり、現在無職。そして少し前にうつが悪化し、入院している。
 うちは大家族とまでは行かないけれど、兄弟が多い。大学を中退して就職した兄と、高校二年の兄、高校一年の僕と、中学に上がったばかりの弟。
 家系は三人で支え合っている。就職している兄と、高校生の兄と僕はバイトを入れて、その合わさった給料で暮らしている。
 兄の扶養内で生活費を稼ぐのはかなり難しくて、去年は十二月にシフトを一気に減らして調整したけれど、十二月の生活費がキツかったので一年を通して調整しなければと反省した。
 家のローンはもう無いが、母の入院費も支払わなければいけないので、その分貯めていると、どうしても生活がきつい。父の残した遺産は、一番下の弟を大学に行かせるためにと、兄達と相談して手をつけていない。
 それでも、誰も文句を言わないし、弱い所を見せない。いつも笑顔が絶えなくて、僕は幸せだった。
 周りから見たら息子達が仕事やバイトをひたすらして生活している哀れな子供達に見えるんだろうけれど、僕らは幸せだった。幸せの基準は人それぞれなのだ。
 確かに、父を失い母は病み、子供だけで生活しているのは世間一般的には不幸の分類に入るのだろう。
 でも、不幸せだと、勝手に決めつけるのは違う。僕らは幸せだ。いつか、周りにも理解してもらえたら、そう願って今日も笑顔で一日を過ごす。
 いつも笑顔だった父のように笑っていれば、母もきっと良くなる。そう信じて僕は今日も近所の人に挨拶しながら登校する。
 
「ほら、あの子よ。家に強盗が入ってあの子以外亡くなったって言う」
「そうなの? そうは見えないけどねぇ……」
「あの子、お兄さんや弟と暮らしているって思い込んでるみたい。すごく楽しそうに話すから、どうも言いづらくて……ねぇ……?」
「バイトをして稼いだお金で暮らしているようだけど、あんなに幸せそうだし、現実を知ってしまうと壊れてしまいそうだわ」
 
「本当に、可哀想な子ね」

1/3/2026, 1:01:57 PM

「日の出」
 
 夜、眠れなくて勉強をしていた。下からは親が喧嘩している声が聞こえる。上の階まで響く声量、また近所の人に迷惑がかかっている。
 直接僕に声に対する文句は言われない。なんなら心配され、哀れまれる始末だ。
 何度も警察が来たことがある。母がヒステリックを起こして包丁を振り回したり物を投げて壊したりするからだ。
 それに対して父は暴力で反撃する。どちらも変に負けず嫌いで、生死なんてどうでもいいのだろう。どっちも深手を負って搬送された経験がある。それでも、家庭内のことだから、警察は何もしない。
 幸いなことに僕には声のせいで寝れないこと以外、被害はない。
 学校から帰ったら机にお金が置いてあるのでそれで適当にご飯を買う。余ったお金は貯めるか売店でパンを買うために使う。
 薬局で嗜好品を買うこともあるけど、それでも貯金に回せる額が残る。
 うちは貧乏ではない。共働きで、どちらかと言うとお金はあるほうだ。それでも両親の仲は冷めきっていて、なのに喧嘩には熱が入って、早く離婚すればいいのにと何度も思った。
 僕も、二人に必要とされていないことは知っている。それでも、高校と大学には行かせるつもりらしく、参考書など、勉強に必要なものが欲しいとメモを机に置いておけば、次の日には机にお金が置いてある。
 せめて行くなら偏差値が高いところに、それと、暇を潰すために僕は沢山勉強をしてきた。
 テストの点も悪くない。一応知らせておこうと成績表と点数表は机に置いておく。点数がいいと次の日お金が多く置かれていることから、多分育児放棄するほどでは無い。なんならマシな方だ。
 僕に手を上げたことは無いし、会話がないだけでなにか文句を言われたり怒鳴られたりすることもない。だからかなり自由にさせてもらっている。睡眠以外は。
 喧嘩がいつもより酷かった次の日には、父がたまにメモ付きでお金を置いていくことがある。そのメモには勉強の邪魔をしてすまなかった。とだけ書かれている。一応二人とも最低限のことはしてくれているし、僕ももう中三だ。ある程度のことは自分でできる。
 カーテンの隙間から見える空が、少し明るいことに気がついた。もうそんなに時間が経ったのか。
 気づけば喧嘩も終わっていたようで、家は静寂に包まれていた。集中していたのと、たまにチラつく考え事で時間の進みを見ていなかった。時計は六時半すぎを指している。寝る時間、ないな。
 何度も見た日の登る瞬間。これを見ると虚しくなる。キラキラと光る太陽は一日の始まりを表していて、また今日が来た、と自覚させられるからだ。
 荷物をまとめて身なりを整える。教材をまとめて机の上を片づける。時間は七時を過ぎていた。そろそろ向かわなければ。
 コートを着て、リュックを背負う。リビングに置いてあるお金を持って、靴を履く。
「……行ってきます」
 返事なんか帰ってくるわけない。それでも、一応口に出して、今日も行きたくない学校に行く。
 今日は夜、眠れるといいな。そう考えながら僕は通学路でご近所さんに挨拶しながら学校へと向っていくのだった。

1/2/2026, 6:50:20 PM

「今年の抱負」
 
 僕は今、頭を悩ませている。学校で出た習字の宿題で、今年の抱負を書かなければいけないからだ。
 今年の抱負なんて、今生きるのに必死なのに、今年一年のことなんて考えてられない。
 離婚寸前の両親による毎晩の喧嘩。学校では一人ぼっち。頼れる友達もいない。僕の居場所はネットだけだった。
 半紙を前に悶々と考える。早くしないと親が帰ってきてしまう。それらしい事を書かなければ。
 受験生になるから……必勝? 何に勝つんだよ。却下だ。前進とか? いや、こんな先の見えない状況の中、前進なんて書いても虚しくなるだけだ。
 変となところで嘘をつけないこの癖と、捻くれた性格を直したい。
 しばらく考えて、いい一言が思いついた。飛翔、大空へ羽ばたく的な意味だったはず。調べるのは面倒だから、もうこれでいいや。
 墨を筆に含ませて、半紙に書いていく。何枚書いても字なんて変わらないのだから、もうこれでいいや。
 道具を片付けて半紙の墨が乾いたことを確認して、丁寧にしまう。
 すると丁度母が帰ってきた音がした。もうすぐ父も帰ってくる。毎晩の喧嘩で寝不足だから、今少しでも寝ておこう。
 今年こそは飛べますように。そう願って眠りについた。

1/1/2026, 6:31:58 PM

「新年」 注意⚠️:少し重めの内容となっております。
 
 新年。それは僕が一番嫌いなもの。また嫌な一年になるのでは無いか。そう言った不安に駆られるからだ。
 去年は一年生の学年末テストの時にインフル、二学期の期末で自転車にぶつかられ、利き手を骨折。そして年末、毎年恒例僕以外の家族は旅行に行っている。
 まぁ最後はいい。好きなことができるから。でも、1週間五千円はかなりキツイ。
 僕には弟と違ってお小遣いはないから、バイト代を使うしかない。使い道は……まぁ言わないでおこう。
 食べ物よりも通院でお金が飛ぶ。そしてほぼ習慣と化している趣味にもお金が飛ぶ。
 趣味は褒められたものじゃない。自慢できるものでも無い。ただの自己満足。それなのにどの趣味よりもお金が飛んでいく。
 中学三年生。受験の時期に精神を病んでから、僕は家族に見放された。母は以前より酷いヒステリーを僕に対して頻繁に起こすようになり、父は気の持ちようだと説教してくる。少しでも反抗的な態度をしたとみなされたら、折檻が始まる。弟は頭のおかしいキチガイだと、僕のことを毛嫌いしているようだ。
 母と父は弟を溺愛。唯一の救いだった兄は、僕が高校上がってすぐに交通事故で会えなくなってしまった。
 そして一人で迎えた年越し、ジャンプなんてする気力もなく、ボーッと天井を眺めていた。
 ぐるぐると回る視界の中、兄のことを思い出したら幼少期の楽しかった頃を思い出した。
 兄とは歳が離れていて、僕が小学校一年生の時、兄は小学五年生。弟は四歳だった頃、三人でよく遊んだ。兄は体の弱い僕を気遣ってくれて、僕も一緒にできる遊びを考えて遊んでくれた。弟にも、同じように接していて、本当にいい兄だった。
 そんな兄に親は期待していて、中学の頃難関校を受けさせたが失敗、兄は定時制に通うことになり親に見放された。
 昼は働き夜は学校。忙しい生活に加え両親からの圧にかなり疲弊していただろうに、僕たちには優しく接してくれた。バイト代でお小遣いをくれたりもした。僕はそれを大切に取っておいた。兄の誕生日が来た時にプレゼントを買おうと思っていたから。
 それ以外で兄がお金を使うところを見たことがない。親に大学の費用は出さないと言われていたが、自分の貯金で大学に行った。そんな兄を僕は信頼していたし尊敬していた。
 それに、僕が精神を病んでも、兄だけは味方でいてくれた。両親を説得して病院に連れて行ってくれたのも兄だ。費用も、まだバイトをすることの出来ない僕に変わって出してくれた。福祉のサービスなども調べて、積極的に使わせてくれた。
 その頃から弟は僕と兄を軽蔑するようになっていた。両親が僕と兄を見捨てたから、愛情は全て弟に注がれ、弟は見事にわがまま放題の暴君へと変貌した。
 そんな家にいて休まるはずもなく、僕の病状は悪化していった。そんな時、兄の誕生日が近いことを思い出し、最期に渡そうと、ずっと貯めていたお小遣いで腕時計を買った。
 渡すと、泣いて喜んでくれて、それから毎日腕に着けてくれていた。
 そしてある日、兄が子供を庇って撥ねられたと知らせが入り、僕は学校を飛び出して病院に向かった。兄は、病院に着いた時にはもう手遅れだったらしい。白い布がかけられた兄を見て僕は立ち尽くすことしか出来なかった。
 ふと、捲って顔を見てみるとまるで眠っているみたいで、交通事故にあったのが信じられなくて、布を剥ぎ取った。そこで交通事故がいかに凄惨なものだったかを知った。それでも、腕に着いていた時計は綺麗なままで、まだ時を刻んでいた。
 兄への誕生日プレゼントは、形見となった。
 後を追うことなんてできなかった。兄の顔がチラついて、直ぐに踏みとどまってしまう。プレゼントを渡した時に見せた困ったように照れながら笑う兄のあの顔が、忘れられなかった。
 モヤモヤぐちゃぐちゃぐるぐる。感情が渦巻いていく。兄に会いたい。逢いに逝きたい。それでも、兄が悲しむのが嫌で、行動に移せない。兄が撫でてくれた時の感触が蘇って、毎回辞めてしまう。
 ……新年早々こんなことを考えるなんて、本当に僕はダメ人間だ。
 いつの間にか日が登ろうとしている。体を起こして机に向かうように座れば、ゆっくりと日が出てくるのが見える。初日の出かぁ。綺麗だとは思う。でも、いつ見ても日の出は綺麗だ。正直、皆がこぞって初日の出にこだわる理由がよく分からない。
 新年特有のこの特別感。僕は嫌いだ。今年はいい一年になるように頑張らないと、と思うから。
 
 でも、今年は、今年こそは、いい一年になると、いいなって、ちょっとだけ、ほんの少しだけ祈った。神でもない、兄に。いつも支えてくれた兄にお願いをする。見守っていて、と。
 
「願うのは自由、だよね、兄さん」
 
 なんて、ね?

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