喜楽ここあ

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3/18/2025, 7:17:04 AM

叶わぬ夢(創作)

弁護士になった友人。
医者になった友人。
イラストレーターになった友人。
絵本作家になった友人。


私の周りにはどうしてこうも、才がある人ばかりなのか。そしてそういう道に行ける環境が整っている人も多かった。

私と言ったらどうだろう。
両親は早くに病気で亡くなり、長女と言うだけで、弟のために必死になって生きてきた。やっと落ち着いたと思ったら、もう40才近い年齢になっていた。

ずっと、モヤモヤとしたものが胸の真ん中にあったけれど、環境のせいではないのは分かっている。

ふぅとため息を吐きながら、リビングに腰を下ろしてテレビをつけた。内容をしっかり見てる訳では無いが、テレビをつけてるだけで少し安心感がある。

テレビに出ている人達にしても、医者や弁護士だって、そこにたどり着くまでに、相当勉強しただろうし、いろんな人から酷評を受けてもめげずに、絵を描き続けて頑張ってきたに違いない。

~なりたい自分になろうよ~

こんなフレーズのCMが流れ、10代くらいの女の子がジャンプをして、キラキラな笑顔を振りまいていた。まるで私に問いかけているように…。


「ん?…でも私って何になりたいんだっけ?」

目標もなかった。これがやりたいと言うことも無かった。ただ、生きるために仕事をして来ただけだった。

今からでも
夢は追いかけられるものだろうか?

やりたいことが見つかるのだろうか?

考えても浮かばない…。
思わず、笑みがこぼれる。
まずは、何かやりたいことが見つかるように、やっぱり明日も生きるために仕事をしよう。

3/14/2025, 11:12:23 PM

君を探して(創作)

「僕に前世の記憶があると言ったら信じてくれる?」


身分の高い姫。その前が武士だったから、まあ、勇ましい姫だと言われ王様も頭を抱えていたくらいだ。金には困らない姫の人生は幸せではあったが、なにか満たされない…そんな気持ちが残った。次は農民…本当に大変だったがやりがいはあった。

そんな時に出会ったのが、幸子だ。色白で艶やかな黒髪がとても美しい人だった。

今思い返すとあの時の僕は、どうしても仕事のことが頭から離れず、デートをしてても天気のことは毎回話題にしていた。

台風が近づく日には不安で仕方なかったが、それを大きく包み込んでくれて大丈夫、大丈夫って手を握ってくれた優しい幸子。それなのに君の変化に、小指の先程も感じずに、僕は愛されていると思って笑ってたんだ。

それからしばらく会えなくなって理由がわからず、幸子に会いに行った。喪服の人達と何人かすれ違う…嫌な予感しかしなかった僕は、走り出した。

違っててくれ。僕の勘が外れていてくれ!その願いも虚しく、幸子の葬儀が始まっていた…。

今度生まれ変わったら、幸子を絶対見つけて幸せにするから…。


「そして今の僕。サラリーマンの僕」

「えっ、そんな事あるのね…ドラマでは見た事あるけど…びっくり」

「ね、僕もびっくり。ちゃんと前世の記憶もある」

「ん?ちょっと待って…」

彼女は、大きな目をさらに大きく見開いて僕を見つめてきた。

「私が幸…子さん?」

「君を探して見つけたんだ…って言ったらかっこいいかな」

「ちょっとぉ、どこまでが本気なの?」

彼女が僕の背中を優しく、押した。


今は口に出して言わないけど、本当に、君を探す為に、僕は生まれてきたんだ。

3/11/2025, 7:20:27 AM

願いが1つ叶うならば(創作)


何気に机の引き出しを開けると奥の方に少し色が変色した消しゴムが、私を待っているかのように転がっていた。

「…さはら…?」

あー…この時は、笹原君が好きだったんだ。6年生の時に転校してきて、足も早くて、典型的モテる男の子だったっけ。懐かしいなぁ。


好きな人の名前を消しゴムに書いて、誰にも知られずに全部使い切ると恋が叶うということでひたすら消していた。

そんな夢みたいな事が起きるわけが無いと思いながら、全力で消してたけど使いきれなくて途中でどうにかなっちゃってたのね。


あれから11年経ったけど、彼はどうしているのかしら。みんな、元気かな。

もう一度ひたむきに誰かのことを好きになって、ひたむきにバカバカしい占いを信じていたあの頃に戻ってみたい。

1/31/2025, 2:36:36 AM

「まだ知らない君(創作)」

優子は、誰にでも笑顔で、誰かのためになるならと一生懸命自分の時間を割いてでも動き回る本当に、誰もが素晴らしいねって言える性格の持ち主だ。

私から見ても、本当にいつも人ファーストで、時々心配になるくらい。愚痴も聞いたことがない。すごい仲がいいかと言えばそうでも無く、会えば話をする程度の友達だった。

知り合って3年になる頃、その笑顔に陰りが見えてきた。笑っているのに、目が笑っていないというか、無理しているというか…。


「なにか、あった?」

「やっば。顔に出てる? 上司Aがなんでもかんでも私にふってきて、ろくに説明もしないでさ、そのやり方どう思う? そんなんだから若い子が育たないんだって…ったく…」


あ、なんだろ…優子の本当の姿を見たような…人ファーストなところも彼女の姿だけど、これはこれで…

「いま、笑った?」

「笑ってないよぉ」

「いやいや、笑ったよね?」

「ごめん、少し。なんか、人間ぽくて」

「私も怒るし、不満に思うこともあるよ。言わないとやっていられない」


誰も何かあった?って聞いてくれなかったから、本当の自分をさらけ出すタイミングとか、イメージが出来上がっているっぽいから、崩すのも怖かったそうだ。

今よりももっと仲良くなれる気がしたし、
まだ私の知らない優子が現れてくるかもしれないと思うと楽しみでもあった。

1/1/2025, 11:57:36 AM

「新年(創作)」

来年こそは、今年できなかった事をする!心の大きな人になるんだと意気込んでいたのもつかの間、仕事始めに失敗をしてしまった。

目の前に、5人くらいの男性が立っていたので、ぺこりと頭を下げて横を通った。

その瞬間、直属の上司が眉毛を吊り上げながら私の腕を掴んで数歩後ろに引っ張った。


「あなた今、素通りしたよね? 取引先の方なの!あなたの前を歩いてる人挨拶してたけど、あなたはしてなかった。私は見てたわ。挨拶してきなさい。早く!」

みんなのいる前で大きな声で、言われてしまった。言われるまま、先程通ってきた道をもどり挨拶をした。

戻ってきた時は、上司の顔が見れる、だんだんと腹が立ってきた。これは、パワハラでは無いのだろうか…。

もちろん私への教育というのは分かっているけど、私ならあんな言い方は絶対にしない。相手の自尊心が崩れてしまうような、あんな言い方は絶対にしたくない。

それでいてその後、普通に笑って話しかけてくる神経も良くんからない。どうしても腹の虫が治まらなかった。何やってても、そう言われた時の上司の、目つき、言い方が脳裏に浮かんでしまう。

「はぁ…だめだ」


自分の小ささにガッカリした。そんなことでイライラする自分が情けないとさえ思う。

こうなると負のスパイラルに陥ってしまうのが怖かったから、今年の1年の悪いものを落としてもらったと思おう…思おう…思えるか?

「はぁ…ダメだ」


そんな日は、早く寝てしまおう。
明日は、いい日になぁれ。

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