君を探して(創作)
「僕に前世の記憶があると言ったら信じてくれる?」
身分の高い姫。その前が武士だったから、まあ、勇ましい姫だと言われ王様も頭を抱えていたくらいだ。金には困らない姫の人生は幸せではあったが、なにか満たされない…そんな気持ちが残った。次は農民…本当に大変だったがやりがいはあった。
そんな時に出会ったのが、幸子だ。色白で艶やかな黒髪がとても美しい人だった。
今思い返すとあの時の僕は、どうしても仕事のことが頭から離れず、デートをしてても天気のことは毎回話題にしていた。
台風が近づく日には不安で仕方なかったが、それを大きく包み込んでくれて大丈夫、大丈夫って手を握ってくれた優しい幸子。それなのに君の変化に、小指の先程も感じずに、僕は愛されていると思って笑ってたんだ。
それからしばらく会えなくなって理由がわからず、幸子に会いに行った。喪服の人達と何人かすれ違う…嫌な予感しかしなかった僕は、走り出した。
違っててくれ。僕の勘が外れていてくれ!その願いも虚しく、幸子の葬儀が始まっていた…。
今度生まれ変わったら、幸子を絶対見つけて幸せにするから…。
「そして今の僕。サラリーマンの僕」
「えっ、そんな事あるのね…ドラマでは見た事あるけど…びっくり」
「ね、僕もびっくり。ちゃんと前世の記憶もある」
「ん?ちょっと待って…」
彼女は、大きな目をさらに大きく見開いて僕を見つめてきた。
「私が幸…子さん?」
「君を探して見つけたんだ…って言ったらかっこいいかな」
「ちょっとぉ、どこまでが本気なの?」
彼女が僕の背中を優しく、押した。
今は口に出して言わないけど、本当に、君を探す為に、僕は生まれてきたんだ。
3/14/2025, 11:12:23 PM