細言

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1/12/2026, 2:10:41 PM

『ずっとこのまま』
呆気なかった。人生の終わり。僕という人間の崩れる瞬間というのは、なんとも無様でまぁなんとも、格好悪く幕を閉じた。それは恋の終わりだった。
全てが順調だと思っていたことが、全て夢で、自分の欺瞞で。そんなものは存在しない。世界から突き放された様な感覚がした。調子に乗ってキラキラしたデートに誘ってみたのだ。帰ってきた返信は「今度みんなで行こうね」。どれだけ恋愛が下手なやつでもわかる。拒絶されたことくらい。僕の存在は彼女の世界には不必要、どころではなく邪魔だったのだと。障害でしかないのだと。僕は不意に自分自身の醜さを直視してしまい悶えた。布団に顔を埋めてえずいた。死にたいとも思った。それから数日後は僕の誕生日だったが彼女からはなんの連絡もなかった。それは恋愛以前に友人としても拒まれたことを示していた。体から泥がとめどなく溢れていく。彼女を神聖化し、自分を罰することでしか自分を保てなかった。最早、綺麗な自分なんていらなかった。
転機はそれから二週間ほど経ったある日。僕を振った彼女から連絡が来た。「今暇?」と。未練を捨てきれない無様な僕はすぐに返した。その誘いは共通の友人と遊んでいるから来ないか。というもので、まるでこの前のやりとりはなんだったのかと思うほどだった。でも、僕からすれば好都合ではあった。このまま、過去の“友人”という関係のまま隣を歩けるのなら僕はもう間違えない。君という支柱を失いたくないから、どんなことでも受け入れる。
ずっと、ずっとこのまま、ずっとこのままの関係でいたいから僕は彼女に会いに行った。
1人の友人として。

1/12/2026, 6:03:42 AM

『寒さが身に染みて』
この街にも冬が来た。冷たくて、寂しくて、居心地の良い冬が。
そうだ、思い出した。冬の時期の、朝の布団は心地がいい。起きたくても体が動かない。と、君もよく言っていた。冬になると着る服が多くて準備が大変だとか、脱ぎっぱなしの服が散らかるだとか、色んな冬を君から聞いた。君の知っている冬を、いや、君の知る全てを知りたい。君から教わったものをなぞるように、君の歩いた道を歩きたい。
まずは冬を知りたいと思った。
君がいなくなった季節。そういえば、あれからもう1年経ったのかと思うと、なんだか懐かしい気分になる。昨日のように思い出す。君の声、君の体温、君の身体。布団にくるまっていると君に包まれているようで安心する。大好きだ。
でも僕は、君を知るために布団から出ないといけない。骨に染みるような鋭い寒さ。君がいなくなった僕が帰ってきたみたいだ。この世界を知って、君を知って、最終的に君になりたい。そう思える。

1/5/2026, 11:44:46 AM

『冬晴れ』
僕は目を覚ました。変な夢を見て変な汗をかいている。まだ眠い、起き上がりたくない。時間は…もう昼に近い。三時近くまで起きていたからだろうか。このままいつものように昼ごろまで寝るのも悪くはない。しかしそうはならなかった。
窓から差し込む光が綺麗だった。透明で、刃物のように鋭くて、触れてしまえば消えそうなくらいに綺麗なのだ。心にこびりつく惰性とは裏腹に、まるで硝子のように窓からこの部屋に侵入していた。
僕はその光を触りたくなった。魅力的、といえばそうなのかもしれないが怖いもの見たさ、という感情もあった。
僕は布団から起き上がり、その光にそっと触れた。
何もなかった。
そこには何もなかった。当然指は切れないし、刺されるような痛みもない。そこにあるのは光にあたって白くなった僕の指。何も変わらない僕だった。
僕は軽く絶望した。落胆した。世界はこんなものなんだと、カッコ悪い主人公みたいに嗤った。
せっかく起きてしまったのだから散歩をしよう。昼頃には戻れるくらいの短時間。この光を全身で受けてみよう。何一つ心配は要らない。そんなことで僕は変わらないからだ。

1/4/2026, 2:39:53 PM

人肌に触れたい。
僕の心の空洞はいつまで経っても埋まらない。ただ人と触れ合うことだけを求めてる。人に見られたい。好かれたい。話したい。触りたい。笑い合いたい。愛されたい。愛されたい。愛されたい。
深く息を吸って、肺を潰すように吐き出して、そして、あの人を、僕だけのあの人を、食らい尽くすように吸い込んで。あったかくして眠りたい。
幸せになりたい。

12/30/2025, 4:53:39 PM

『星に包まれて』
冷たい空気が喉を通り過ぎていく。寒い。息が白くなって夜空を曇らせる。寒い。こんな薄着で外に出るべきではなかった。衝動的とはいえ、僕はもっと頭を使うべきだ。なんなんだ、みんな、予定があって、楽しそうで、人生を謳歌している。ずるいじゃないか。僕を置いて、僕を差し置いて、羨ましくて。羨望が、僕の思考にまとわりついている。でも怠惰な僕は、動かず、ただ羨望して、孤独に篭っている。惨めで死にたくなる。家族もデリカシーがないってもんだ。「友達と会わないの?」なんて、僕が一番願ってる!うるさい!、そうやって感情的になって、結局今、冬の夜空の下で一人。このまま凍えて死んでやろうか。僕との予定を捨てたあいつらが悪いんだ。僕は、いや、僕が悪いか。
 なんとなく公園の滑り台に登った。冷たい。握る鉄は溶けることのない氷のようだ。この体躯にはもう到底似合わない滑り台。僕はもう子供ではないのだと実感する。冷たい。少し狭いと感じながらも体を滑らせる。服が捲れて素肌が鉄に触れた。冷たい!でも起き上がらずそのまま熱を奪っていく鉄に身を委ねた。星が見えたから。
 星は良い。孤独だからだ。惑星とか、衛星とか。どんなに近くても数万キロとかで、ほぼ無関係みたいな距離を保っていて、互いに認識はしていても触れ合うことはない。まるで今の僕だね。そうだな、今日だけは、僕は星になろう。星になれば画面を隔てた関係なんて気にならない。みんな惑星とか衛星とか、認識さえしていれば良い。触れ合えることなんてないんだから。触れ合う事はしなくて良いんだから、いくらか楽に生きられそうだから。

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