細言

Open App

『星に包まれて』
冷たい空気が喉を通り過ぎていく。寒い。息が白くなって夜空を曇らせる。寒い。こんな薄着で外に出るべきではなかった。衝動的とはいえ、僕はもっと頭を使うべきだ。なんなんだ、みんな、予定があって、楽しそうで、人生を謳歌している。ずるいじゃないか。僕を置いて、僕を差し置いて、羨ましくて。羨望が、僕の思考にまとわりついている。でも怠惰な僕は、動かず、ただ羨望して、孤独に篭っている。惨めで死にたくなる。家族もデリカシーがないってもんだ。「友達と会わないの?」なんて、僕が一番願ってる!うるさい!、そうやって感情的になって、結局今、冬の夜空の下で一人。このまま凍えて死んでやろうか。僕との予定を捨てたあいつらが悪いんだ。僕は、いや、僕が悪いか。
 なんとなく公園の滑り台に登った。冷たい。握る鉄は溶けることのない氷のようだ。この体躯にはもう到底似合わない滑り台。僕はもう子供ではないのだと実感する。冷たい。少し狭いと感じながらも体を滑らせる。服が捲れて素肌が鉄に触れた。冷たい!でも起き上がらずそのまま熱を奪っていく鉄に身を委ねた。星が見えたから。
 星は良い。孤独だからだ。惑星とか、衛星とか。どんなに近くても数万キロとかで、ほぼ無関係みたいな距離を保っていて、互いに認識はしていても触れ合うことはない。まるで今の僕だね。そうだな、今日だけは、僕は星になろう。星になれば画面を隔てた関係なんて気にならない。みんな惑星とか衛星とか、認識さえしていれば良い。触れ合えることなんてないんだから。触れ合う事はしなくて良いんだから、いくらか楽に生きられそうだから。

12/30/2025, 4:53:39 PM