『静かな終わり』
「またみんなで遊ぼうね」君はそう言って、僕を切り離した。いや、僕が自ら腕を切ったんだ。君を傷つけてしまうのは、嫌だから。これ以上、君を傷つけてしまったら僕は、僕はどうやって死ねば良いか悩んでしまう。
僕をバラバラにしてくれ。意識が分散して、個として成り立てないほどに。少し、痛いかもしれないけど、それくらいしないと僕は、君を傷つけた奴を許せない。
もし、君が傷ついてないとしたらって?そんなの実際どうでもよくて、ただ単に僕が、僕のことを気持ち悪いと思うから、勝手に処理をしたいだけなんだ。この気持ち悪い自分自身を埋める言い訳が欲しかった、それだけなんだ。
あぁ、もちろん君のことはちゃんと好きだよ。君に嫌われてから人生が楽しくない。色彩を失ったみたいに。秋の紅葉も、色鮮やかな聖夜も、きっと僕はもう楽しめないと思う。それくらい君が、僕の世界だった。
そんな君に嫌われたんだ。僕はもう時期死ぬだろう。
『心の旅路』
遠く
空気が澄んでいる
果てしない道
ひとりぼっちで
空はずっと淡い藍色で
僕は歩いていた。
少し向こうの地面で
何かが光を反射して
僕はそれを手に取って
それは
小さな小さな硝子だった
半透明で、光に透かしても
向こうは見えない
はぁとため息を吐いて
また目的もなく歩き出す
昨日は路肩で座り込んだから
今日は歩こう
疲れたら休んで
なんとなく前を目指して
それで、
それで、どうしようかね
『祈りを捧げて』
僕は毎朝、手を合わせてあなたを想う
あなたは僕の神様だから。
あなたを見ている僕は
きっと綺麗で入れるから
あなたを感じれる僕は
きっと正しくあれるから
あなたという存在が
僕を世界に馴染ませてくれるから
だからあなたに祈る
“今日も、明日も、明後日も
来週も、来月も、来年も
僕が人間であれますように”と
人間でなくなってしまうと
あなたに会えなくなってしまうから。
『遠い日の温もり』
愛されたかったよ
僕だって、人並みの幸せを願っていた
君に愛されたくて、はや6年
君との、初めてのデートで
僕は浮かれちゃって
君も楽しかったのかななんて、勝手に思ってた
でも、違ったんだね
二人のカラオケも、傘に入れてくれた時も、チュロスを一口くれた瞬間だって、
君は、心底僕のことを気持ち悪いって思ってたんだろ?
思わせぶりだとか、そういうことは思わないよ
だって実際僕は気持ち悪い
泥のようだと自覚していて、それを隠せた気になっていただけだったんだ
漏れてたんだよね、醜い僕が
それなら君は悪くないよ
君を好きになった、僕が罪人だ
君は、優しすぎただけなんだ
ごめんなさい
僕はもう、人を愛さないようにいきていきますから
人間じゃない僕は
愛されませんから。
『時を結ぶリボン』
散歩をしていた。坂道の下にカメラ屋さんが見えてきた。なんだか惹かれて、カメラが好きなわけでもないけど入ってみる。案の定、何もわからない。聞いたことのないメーカーやら、どこの部品かの検討もつかない小さなレンズ。ぐるぐると見て回っていると、映画のフィムルが目に留まった。フィムルの端に黒い線が通っていて、何かに巻くタイプのフィルムだ。恐らく。店頭に並ぶそれは、巻いてある状態で置いてあって、素人の僕からすると乾電池のように見えなくもない代物だった。なんとなく気に入って、二個手にとってレジへ向かった。千円札を三枚出して、気怠げな店員へと渡す。小銭が五、六枚帰ってきて、僕はビニール袋を手に店を出た。
家に帰りビニール袋からフィルムを取り出す。決して安くはない出費だから満足させてくれよ。そう念じながらコトリとフィルムを机の上に置く。勢いで買ったものの、使い方を知らない。スマホで使い方を調べようと思ったがそれはなんだか癪に触る。自己流で行こう。フィルムを引っ張って見るとよく見る、俗に言うフィルムというものが現れて、僕の心を軽くくすぐった。調子に乗った僕はある程度の長さに伸ばしたフィルムをハサミで切り取り、蝶々結びにした。どうしても硬かったため、強引で不恰好な仕上がりになってしまった。流石に悔しいと思いもう一度挑戦する。今度は最初に折れ目をつけて、折れ目を上手く馴染ませながら曲げていく。
「うん、なかなか悪くないな。」
出来上がったリボンはどこか昔を思わせる風貌で、する筈のない黴の匂いが鼻の奥を通り過ぎる。縁の黒と、何かを映すであろう白い部分があり、シックな質感を醸し出していた。僕はそのリボンを窓際に置き、少し離れた机に伏しながら横目で眺める。夕陽の光がフィルムを通り抜けて、少し濁った白色になっている。床や壁に浮かび上がる光は、温かみのある橙、光のない黒、そして濁った白。シルエットは可愛らしいリボン。その全てを目にして、やっと、良い買い物をしたと心から思った。明日は違う結び方も試してみよう。