細言

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『時を結ぶリボン』
散歩をしていた。坂道の下にカメラ屋さんが見えてきた。なんだか惹かれて、カメラが好きなわけでもないけど入ってみる。案の定、何もわからない。聞いたことのないメーカーやら、どこの部品かの検討もつかない小さなレンズ。ぐるぐると見て回っていると、映画のフィムルが目に留まった。フィムルの端に黒い線が通っていて、何かに巻くタイプのフィルムだ。恐らく。店頭に並ぶそれは、巻いてある状態で置いてあって、素人の僕からすると乾電池のように見えなくもない代物だった。なんとなく気に入って、二個手にとってレジへ向かった。千円札を三枚出して、気怠げな店員へと渡す。小銭が五、六枚帰ってきて、僕はビニール袋を手に店を出た。
家に帰りビニール袋からフィルムを取り出す。決して安くはない出費だから満足させてくれよ。そう念じながらコトリとフィルムを机の上に置く。勢いで買ったものの、使い方を知らない。スマホで使い方を調べようと思ったがそれはなんだか癪に触る。自己流で行こう。フィルムを引っ張って見るとよく見る、俗に言うフィルムというものが現れて、僕の心を軽くくすぐった。調子に乗った僕はある程度の長さに伸ばしたフィルムをハサミで切り取り、蝶々結びにした。どうしても硬かったため、強引で不恰好な仕上がりになってしまった。流石に悔しいと思いもう一度挑戦する。今度は最初に折れ目をつけて、折れ目を上手く馴染ませながら曲げていく。
「うん、なかなか悪くないな。」
出来上がったリボンはどこか昔を思わせる風貌で、する筈のない黴の匂いが鼻の奥を通り過ぎる。縁の黒と、何かを映すであろう白い部分があり、シックな質感を醸し出していた。僕はそのリボンを窓際に置き、少し離れた机に伏しながら横目で眺める。夕陽の光がフィルムを通り抜けて、少し濁った白色になっている。床や壁に浮かび上がる光は、温かみのある橙、光のない黒、そして濁った白。シルエットは可愛らしいリボン。その全てを目にして、やっと、良い買い物をしたと心から思った。明日は違う結び方も試してみよう。

12/20/2025, 3:56:54 PM