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5/8/2025, 11:47:13 PM

1番傷つくのは、助けてとのばした手を、
振り払われたとき


この思いは、この痛みは、誰に届くのだろう

誰の心にも、届かない
私の苦しみも、痛みも、理解しては貰えないまま
わかってほしいという思いは、より増していく

いっそ死んでみせたら、こんなにも私が苦しんだということを、わかってもらえるだろうか?
ようやく、後悔してくれるだろうか?

見せしめのように自分の命を扱おうとした、その瞬間

待てと声をかけたのは、まさかの私の病気だった

うつ病は、本当は、死ぬためじゃなく、
生きるためになるんだよ

だってほら、死ねないでしょ?

死ぬ意欲さえも奪われて、その代わり苦しみは続いていく

心は壊れたかのようなのに
苦しくてたまらない瞬間は訪れる


いつか、心が治るまで
その時間は、続くの


それでも、いつかは治るから
それまでとも違う、新しい自分に、なれるから


心の動かない私は、まるで欠陥品
それでもその機能は、私が自身に施した、最後の自衛本能



痛みや思いは、結局誰にも届かない
届かなくていい


苦しくなくなれば、苦しみをわかってほしいという思いも消えていく


苦しいときは、
自分で自分をわかってあげればいい


自分の気持ちを理解してあげられるのは、
やっぱり自分だけなのだ

5/3/2025, 4:38:48 AM

カップル:蒼(あお)と沙良(さら)



ーー温泉旅館にてーー


これ以上なく、愛でたいという欲求ごと、抑える。

腕のなかの、柔らかな肢体。
全身優しくあたたかな、繊細なそれを。
全身で触れ、全身で感じ取りながら。
壊さぬように、抱きしめて。
抱きしめ続ける。
一瞬、目を閉じて、念じる。

純粋な気持ちだけで。
抱きしめられたなら。

「蒼…」
声とともに、そっと。
頬に触れる小さななにか。
はっとして瞳を開けると。
沙良が、細い指でそっと。
頬に触れていた。

「どうしたの…苦しい、の?」
自身が苦しそうな顔をしながら。
蒼の頬にそっと。手のひらを添え包み込む。
優しく、繊細に。
まるで繊細なものを包み込むかのように。
繊細なもので繊細に包まれ。
頬が、自分自身が、とても大切にされるべき宝物に、なったかのような気分。
瞳を閉じた。
心が、しずまっていく。落ち着いていく。あれほど、波打ち、自分では抑え込めなかったのに。

「大丈夫」
瞳を開けて、微笑みかける。
心配ないと。安心させたい。
沙良のおかげで、もう。
大丈夫だ。
いつも。
こんなに苦しいのも、苦しめるのも、
沙良のおかげで。
それを救ってくれるのも、
沙良のおかげ。
本当に自分は、沙良にくっついているかのように、沙良のものだ。
くっついていられるなら、せめて。ただくっつくのでなく。重みになるのでもなく。
優しく包み込めるように。
ふわりと、軽く。
あるかないかわからないくらいでいいのだ。
ただ、その一枚の、真綿で編んだ薄地で。
優しく包み込むように、その心を守れるように、くっついていたい。
心から、そう思う。

そっと。瞳を閉じて。 
「ただ、沙良を好きで。それで、苦しくなった、だけ」

「そう、なんだ」
嬉しげに変化した沙良の声に、瞳を開ける。
私と同じだね、と。
嬉しそうに笑う、笑顔。
瞠目する蒼に。
「いつもの私も、そうだよ。
だから…」

今度は、安心させるように。
大人びた表情で、微笑む。
慈愛の、笑み。
蒼の全部を、慈しむような。
表情に。何より、その瞳。
全てを受け入れ、包み込む。
安心して、委ねていいよと。
安心して、愛されていいよと。

「だから、
苦しくなくなる方法も、知ってるよ」
蒼の胸に顔を埋め。
どこか。恥ずかしい秘密を話すように。

沙良の顔、表情、瞳、笑みが
視界から消えて。
ようやく、声を絞り出す。

「ほう、ほう?」
どんな…、ある、のだろうか。
沙良を想う限り。消えない。
消そうとも思わない。
これは、沙良を愛する気持ちの一部。沙良のくれた宝物で、自分自身。蒼を大きく形づくるもの。
それに。
この苦しみこそが、至高の幸福をも与えてくれる。
だから、いい、のだ。
ただ。
沙良は、自分の知らないことを知っている。それを知りたかった。
沙良の、一瞬の沈黙。
そして。
「いっぱい、いっぱい、好きって。思うの。
それでね。溢れ出して苦しくて耐えられなくなったら。
好きって、言うの。
口に出すか、
1番いいのは、相手に直接、伝えるの。
私は、それで楽になったよ。
何より、蒼が。
受け止めて、笑ってくれるから。
蒼が、楽にしてくれるの」

感じる。
伝えるのが恥ずかしくて。でも、勇気を出して話してくれている。

「私も」
顔を上げて、笑った。
「ちゃんと、受け止めて。笑うから。
蒼が、教えてくれたんだよ。
苦しいの、なおしかた。
…でもね、好きはいつも、ずっと。
続くから。なおせるのは、ちょっとの間だけ。
また、溢れて、すぐに苦しくなるけれど」
恥ずかしそうに、笑う。
しかたないよね、と。
完治の方法なんて、ないよと。


「だから。
蒼も。その、」
かぁと赤くなり…珍しく、視線を外し彷徨わせながら。
「好きって、言って、いいからね。わたし、に」

黙り込んだあと。
反応のない蒼に。
動揺していく。
何か、ちがうことを口にしてしまったかと。

「え、その…、私じゃ、なかった…?」
ううん、だって
そう言ったはず、と。うろたえて蒼の言葉を思い返す沙良。

抱きしめる。
強く。
息を呑む、音。
わずかに力を緩め。
それでも。先の柔らかな抱擁よりは、強い。
「沙良」
「、は、い」
ぎこちなく、それでも律儀に返事をしてくれる彼女。
自分の言葉を待ってくれる彼女に。

ー好き。

再度口にすると。
沙良の身体が、小さく震える。

溢れる想いを、何度も何度も。

…以前は、言えなかった。
はじめは、言う意志はなく。
次は、言うと困らせるため、自分で制し。
奇跡のように沙良が想いを受け入れてくれて、沙良の想いを返してくれて。
それでも伝えたら困らせて悩ませてしまう言葉だろうと、言えず。
今。
沙良から、言っていいよと、言ってもらえて。
幾度となく奇跡が重なり合って、
今がある。

溢れる想いを、唇にのせる。

4/26/2025, 10:41:02 PM

ずっと、ずっと。
逢いたかった。
待っていた。焦がれながら。
距離を取って恥ずかしさに悶えるよりも。
大切な、1秒でも惜しいこの時間。
したいことがある。
…多忙でも、よかったのかもしれない。なかなか会えない時間は、私を、素直にしてくれて。欲張りにしてくれて。この時間を、一層大切に思わせてくれて。かけがえのない時間を、大切にできる。
それでも、より一層募る焦がれと欲を、持て余す。

今度は、あふれる気持ちをぶつけるのでなく。
あふれる気持ちで、包み込む。
欲でなく、
愛を。
労りを。
感謝を。
優しさを。

求めるのでなく。
その逆を。

求めるだけでなく、蒼にも、与えたかった。求める気持ちがあふれ波打つ狭間でも、消されない、たしかにそこに、その気持ちはあった。
3週間、激務に追われ、疲れている蒼に。
3週間、どんなことがあったのだろう。悩みや、トラブルや、苦しさ、あっただろうか。
どれくらい、疲れている。
そばにいてあげられなくて、ごめんね。労ってあげられなくて、ごめんね。
でも、蒼がこの3週間抱えていた想いは。蒼のなかを占めていた想いは、それだけじゃ、ない。

蒼だって、寂しかったはず。
ううん。
寂しかったと、思う。
蒼をちゃんとみると、決めて。
自分を過小評価をしないように、心がけて。
蒼からたくさん想いを受け取り、わかるのだ。言われなくても、わかるのだ。
蒼にとっても、私は。
愛する、ひと。
一度も言われたことのない言葉。
一度も言われたことのないのに、
疑わずにすむ言葉。
知っている。聞いたこともなく。
聞く必要もなく。
あえて尋ねる必要が、ないのだ。
だって、自分は、知っている。
確信とも違う、信頼とも期待とも違う、蒼だから、も、関係ない。
ただ、知っている。
事実として。
蒼が、そう、伝えてくれたのだ。
言葉でなく。全身で。
たとえ何があっても。自分は、知っている。
この先もずっと。蒼のことを信じさせてくれるのは、蒼だ。
不安にゆらぎ愛を信じようとするのでなく、
ただ、知っているから。伝えてくれたから。蒼のことを信じさせてくれる。
蒼は、私を、不安からも、守ってくれる。

信じたいのでなく、信じているのでなく、思うのでもなく。
感じるのだ。
感じて、認識する、が、正しいのかもしれない。
蒼から、伝わってくる想いを感じて。自分の脳が、知る。
愛。
愛だと。
そして、認識し、思う。
愛されていると。
蒼にとって、私は、愛する人。
どんなに、幸せだろうか。
言葉で言われるよりもきっと、もっと。
私は、言葉もなく、知ることができた。手段なく、蒼の身体からそのまま、受け取った。
積み重ねてきた想い出も、蒼からの言葉もあるけれど。それじゃなく。
ただ、私をみつめる蒼の全身から。
愛していると。絶え間なく、伝えてくれる。

だから、私は思う。
蒼も、きっと、愛する私に会えなくて、寂しい想いをしたでしょうと。
それは、以前の私だったら、思い上がりだと恥ずかしがっただろう。
今は、違う。
今の私にとって、それは。
蒼への、思いやりだ。
蒼のおかげで。蒼のことを知れた私は、もっと、蒼の心を、思いやり、配慮し、以前よりももっと、理解してあげられるようになったのかもしれない。
以前の私は、蒼の寂しさに気づかなかった。私だけだと自分にばかり目を向け、蒼はそんなはずがないと決めつけ。私はなんと、傲慢で。蒼に対し、冷たく振る舞っていたのだろう。
蒼が私の心を、理解でき、真っ直ぐに心を向けてくれるように。
私も、蒼のそのままの心を、みつめられ、思いやれるようになったかな。
世間では、愛が深まった、仲が深まったとひとことで表現できるかもしれない、私の変化。
やっぱり、ひとことではおさまりきれないと、自分の心を見てそう思うのだ。


蒼と出逢えて、接して。私は、きっと、本来の私より、優しくなった。蒼から貰う優しさに。愛情に。心が満たされ、あふれ。
蒼が、私を、変えてくれたのだろう。蒼に貰った優しさを、愛情を。私も少しでも、大切なひとに、向けられる自分に、なっただろうか。
蒼が、私を変えた。
蒼をみて。蒼に憧れ、影響されて。
蒼が私に優しくし、蒼が私を優しくさせている。


優しさと、愛情と、労りを。
睡眠が1番かもしれない。でも。
ワガママに、私の手で。
何か、与えたかった。
与えられるものがあったなら。


たったひとこと。
いっぱい、自分のなかを探して。
自分の気持ちを表現できるひとことが、また、みつからない。

ぜんぶあてはまり、ぜんぶ遠いなか、そのなかで。ちょっとだけ。ぜんぶを包み込めるのに、近い、言葉。

「よく、がんばったね」

たったひとこと。
精一杯に、懸命に。
言葉だけでは伝えきれないなにかを伝えようと。心ぜんぶを、そのひとことに、のせられるように。
あふれる想いを、1語1語にこめて。想いの重さに、震える声で。
きっと、声が震えるのは。のせた想いを支えきれないから。重さに耐えきれず、想いに身が染みて耐えきれず、震えて。震える言葉から、重量オーバーで積み重なった想いの、ひとかけらひとかけらが、振動に振り落とされ落ちていく。あれだけ言葉が震えたら、絶対に想いもこらえきれずいくつかは落ちただろう。

それでも。伝えきれないと、
言い終えた瞬間に、わかる。
もどかしい、な。
上手く伝えられない自分でも。
汲み取ってくれたのか。


ふはと、笑う声。
「ー…ありがとう」
照れる。と。

1/24/2025, 10:38:11 AM

登場人物: 琅(ろう)と翡翠(ひすい)
      2人は幼なじみです。



「‥‥なぁ。なんで俺には、疑わない?」


琅の投げかけた疑問。
ずっと疑問だったそれ。

琅へは‥疑うことなく、やけにアッサリと騙される翡翠。嘘つきと知っていて尚、やけにアッサリと。

それが‥ずっとずっと、不思議だった。

何故、と。

勿論疑う時はあるにはある。
だがその時も、琅に尋ねて‥その琅の答えを信じる。
琅がたとえ黒を白と言い張っても。その答えを疑うことなくアッサリと信じる。‥それこそが嘘では、と思わずに。

警戒心の欠片も持たぬこいつ。
一度も不信を抱かなかった相手として‥琅は挙げられる。




「うぅん‥わかんないけど、もしかしたら」

翡翠は笑う。

「琅の嘘になら、騙されてもいいって思ってるのかもしれないね」

琅は瞠目し‥‥呻く。

「ずるいだろ、‥‥おまえ‥‥」

「え‥?」

そりゃずるいだろ、と思う。

「いや‥‥勘だよ?何となくの。
琅の嘘になら‥‥琅が選んだ嘘なら、おれにとっ       て正しいって思っちゃうのかな?わかんないや」

笑う翡翠。

「‥‥‥ったく」


「‥‥ふふ。わかった?おれは‥どこまでもきみを、信じてる」

「‥‥‥」

「きみの嘘に騙されていながら‥きみをどこまでも信じていることに、変わりないよ。琅‥」

「‥‥‥‥もう、いい。喋るな」

ふふ、と笑う翡翠。絶対に、わかってやってる。


「きみを信じて、騙される。
本当に騙されたと‥言えるのだろうか?」



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琅の嘘なら、いいよ。 

本当は嘘を好まぬきみだから。
『嘘つき』の姿に隠れた、本当のきみの姿。

本当はおれに忠実で、誠実で。

嘘なんか、好まない。

そんなきみのつく嘘は。

きっと何より、極上だろう。

ーおれへの愛が、詰まってる。


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コメント
ただの優しい嘘はきらい。何となく、軽い感じがするから。
でも、動機が、相手のことを想ってつく嘘なら、優しい嘘でも酷い嘘でもどちらでも、好きかも。

12/19/2024, 11:54:46 AM

寂しさ


最近は、以前に比べて、寂しさを感じることが減った

その理由は、人付き合いに、憧れや羨ましさが、なくなりつつあるから

感じるのは
「寂しさ」より、むしろ「うんざり」で


ここのところずっと、目にする人間関係は
他人を使って、自分の価値を証明し合う闘いだ


「他人に優しくされたら自分には価値がある」

その価値観が、性別年齢問わず、場のすみずみまで行き渡っているのを感じる


皆、他者の反応で、己の価値を決めるのだ

他者を使っての、マウントの取り合い

誰かに冷たくされる他者をみて、ばかにする空気は、心底嫌なもの


ほんともう、職場で何やってんの


お喋り大好きな女性たちが、男性陣と仲良くお喋りできて喜ぶのはわかる

でも
冷たくされたからって、落ち込む必要はないのにな


自分の価値は自分で決めること
冷たくされたら傷つくのは当たり前だけど
そこで追いすがることはせず、こちらから距離を置いたらいい


自分をぞんざいに扱う男性相手に
下手に出て、好かれようと振る舞う行為は
私からみて、女性そのものの価値を下げること


ねぇ
そんなことをしなくとも、あなたには価値がある

皆が皆、そう思えたらいい


女性の価値は、男性に好かれるかどうかではないし
そのように振る舞うことで、かえって女性たちは自信をなくしているようにみえる


他人を使っても、結局、自分の価値を証明することなんか、できないのだ


自分の価値を証明するのは、自分だけ
私にとっては、自分の正しいと思う行為を、堂々と行うことこそが、自分を証明することだ

他人に自分の価値の判断を任せると
他人に振り回されることになる


私はまだ、「唯一無二」の意味を実感したことはなく
己を唯一無二と感じられたことは、ないけれど


己が己に向ける想いなら、もしかしたら唯一無二かもしれない

他者には自分の行動の意味が伝わらず
誤解されることが多々ある日常で


自分の想いをわかっているのは自分だけ
そして、自分が自分だけに向ける想いは、自分だけがわかる唯一無二のものだろう


それを己の価値と定めるならば

まさしく己の価値こそは、唯一無二かもしれない


自分が自分だけに向ける、自分への想い
私が定めた、私の価値


「私はこうこうこうだけど、こんな風に思っていて、私はそんな私が好きだ」


私情が多分に含まれた、それこそは
私だけが知る、「唯一無二」の私だ



最近、むしろひとりでいいや、と感じる毎日で
他者とはむしろ距離をとりたい


そのせいか寂しさも感じない日々だけど

私にとっては、良いこともたくさんあった


他者に影響されやすい私は
他者と距離を置くことで、かえって自分がみえてくる


人との交流も、温かいものなら欲しいかもだけど

もう少しの間、寂しさを感じない私でも、いいかもな




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