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ずっと、ずっと。
逢いたかった。
待っていた。焦がれながら。
距離を取って恥ずかしさに悶えるよりも。
大切な、1秒でも惜しいこの時間。
したいことがある。
…多忙でも、よかったのかもしれない。なかなか会えない時間は、私を、素直にしてくれて。欲張りにしてくれて。この時間を、一層大切に思わせてくれて。かけがえのない時間を、大切にできる。
それでも、より一層募る焦がれと欲を、持て余す。

今度は、あふれる気持ちをぶつけるのでなく。
あふれる気持ちで、包み込む。
欲でなく、
愛を。
労りを。
感謝を。
優しさを。

求めるのでなく。
その逆を。

求めるだけでなく、蒼にも、与えたかった。求める気持ちがあふれ波打つ狭間でも、消されない、たしかにそこに、その気持ちはあった。
3週間、激務に追われ、疲れている蒼に。
3週間、どんなことがあったのだろう。悩みや、トラブルや、苦しさ、あっただろうか。
どれくらい、疲れている。
そばにいてあげられなくて、ごめんね。労ってあげられなくて、ごめんね。
でも、蒼がこの3週間抱えていた想いは。蒼のなかを占めていた想いは、それだけじゃ、ない。

蒼だって、寂しかったはず。
ううん。
寂しかったと、思う。
蒼をちゃんとみると、決めて。
自分を過小評価をしないように、心がけて。
蒼からたくさん想いを受け取り、わかるのだ。言われなくても、わかるのだ。
蒼にとっても、私は。
愛する、ひと。
一度も言われたことのない言葉。
一度も言われたことのないのに、
疑わずにすむ言葉。
知っている。聞いたこともなく。
聞く必要もなく。
あえて尋ねる必要が、ないのだ。
だって、自分は、知っている。
確信とも違う、信頼とも期待とも違う、蒼だから、も、関係ない。
ただ、知っている。
事実として。
蒼が、そう、伝えてくれたのだ。
言葉でなく。全身で。
たとえ何があっても。自分は、知っている。
この先もずっと。蒼のことを信じさせてくれるのは、蒼だ。
不安にゆらぎ愛を信じようとするのでなく、
ただ、知っているから。伝えてくれたから。蒼のことを信じさせてくれる。
蒼は、私を、不安からも、守ってくれる。

信じたいのでなく、信じているのでなく、思うのでもなく。
感じるのだ。
感じて、認識する、が、正しいのかもしれない。
蒼から、伝わってくる想いを感じて。自分の脳が、知る。
愛。
愛だと。
そして、認識し、思う。
愛されていると。
蒼にとって、私は、愛する人。
どんなに、幸せだろうか。
言葉で言われるよりもきっと、もっと。
私は、言葉もなく、知ることができた。手段なく、蒼の身体からそのまま、受け取った。
積み重ねてきた想い出も、蒼からの言葉もあるけれど。それじゃなく。
ただ、私をみつめる蒼の全身から。
愛していると。絶え間なく、伝えてくれる。

だから、私は思う。
蒼も、きっと、愛する私に会えなくて、寂しい想いをしたでしょうと。
それは、以前の私だったら、思い上がりだと恥ずかしがっただろう。
今は、違う。
今の私にとって、それは。
蒼への、思いやりだ。
蒼のおかげで。蒼のことを知れた私は、もっと、蒼の心を、思いやり、配慮し、以前よりももっと、理解してあげられるようになったのかもしれない。
以前の私は、蒼の寂しさに気づかなかった。私だけだと自分にばかり目を向け、蒼はそんなはずがないと決めつけ。私はなんと、傲慢で。蒼に対し、冷たく振る舞っていたのだろう。
蒼が私の心を、理解でき、真っ直ぐに心を向けてくれるように。
私も、蒼のそのままの心を、みつめられ、思いやれるようになったかな。
世間では、愛が深まった、仲が深まったとひとことで表現できるかもしれない、私の変化。
やっぱり、ひとことではおさまりきれないと、自分の心を見てそう思うのだ。


蒼と出逢えて、接して。私は、きっと、本来の私より、優しくなった。蒼から貰う優しさに。愛情に。心が満たされ、あふれ。
蒼が、私を、変えてくれたのだろう。蒼に貰った優しさを、愛情を。私も少しでも、大切なひとに、向けられる自分に、なっただろうか。
蒼が、私を変えた。
蒼をみて。蒼に憧れ、影響されて。
蒼が私に優しくし、蒼が私を優しくさせている。


優しさと、愛情と、労りを。
睡眠が1番かもしれない。でも。
ワガママに、私の手で。
何か、与えたかった。
与えられるものがあったなら。


たったひとこと。
いっぱい、自分のなかを探して。
自分の気持ちを表現できるひとことが、また、みつからない。

ぜんぶあてはまり、ぜんぶ遠いなか、そのなかで。ちょっとだけ。ぜんぶを包み込めるのに、近い、言葉。

「よく、がんばったね」

たったひとこと。
精一杯に、懸命に。
言葉だけでは伝えきれないなにかを伝えようと。心ぜんぶを、そのひとことに、のせられるように。
あふれる想いを、1語1語にこめて。想いの重さに、震える声で。
きっと、声が震えるのは。のせた想いを支えきれないから。重さに耐えきれず、想いに身が染みて耐えきれず、震えて。震える言葉から、重量オーバーで積み重なった想いの、ひとかけらひとかけらが、振動に振り落とされ落ちていく。あれだけ言葉が震えたら、絶対に想いもこらえきれずいくつかは落ちただろう。

それでも。伝えきれないと、
言い終えた瞬間に、わかる。
もどかしい、な。
上手く伝えられない自分でも。
汲み取ってくれたのか。


ふはと、笑う声。
「ー…ありがとう」
照れる。と。

4/26/2025, 10:41:02 PM