「私の当たり前」
今日も当たり前に太陽は沈み、夕焼け焼ける!
…でも、いつか太陽が無くなれば、夕暮れも無くなる。
ご飯はいつもおいしい!!とは限らない。
悲しいことがあれば、味なんてすぐわからなくなる。
いつも氣分良く絶好調、だったらいいな。
だけど、私けっこうそそっかしいから、
いつも絶好調だったら、いろいろ見落としちゃうかもしれない。
走ってる時と歩いてる時とじゃ、景色は違うから。
ご飯がおいしく感じられない日があってはじめて、
人が「食べても味がしない」って言ってたのが、こういうことかってわかった。
「目の前が暗くなる」ってほんとに薄暗くなって、照明暗いの?…って思うんだなって、わかった。
当たり前に思ってたいつもの感覚が、ちょっとのことで当たり前じゃなくなるんだなって思った。
冬に、階段踏み外してコケたとき、すごい厚着だったから怪我は無かったんだけど、もうちょっと違う場所を、もうちょっと強くぶつけてたら、
体の骨バラバラに外れてたかも…って、骨の軋みを感じた。ギシギシした。
当たり前って、絶妙なバランスの上に成り立ってるんだなと思う。
まさに、有り難し。有り難う…上手いこと言うな~日本語。(゜.゜)
地上に水があるバランス。
そもそも地球があるバランス。
なぜ星空を堪能出来るのか、のバランス。
私たちはけっこうすごい花形ピエロで、綱渡りのバランスを無意識に取りながら、
「当たり前よー🎉」って言ってて、
でもたまには謙虚に、「ありがたきしあわせー💖」
ってちょっと思うのも、いいかもしれないなー。
街の明かりが灯る頃、目を覚ますのは
風邪をひいて寝ていた子。
こんな時間までぐっすり寝ちゃったよ…
でも、いくらでも眠れて
眠って覚めたらちょっとずつ
頭が痛いのが治ってる。
お母さん、いないな。どこに行ったのかな?
シーン…としたなかで
コンコン! …咳をする
もうちょっと、休もうか…ふとんに潜って
ぎゅっと目をつむり
ふ~っと息をつく。
もう少ししたらきっと、ゼリーやくだものの缶詰買って、お母さんがかえって来る。
街の明かりが灯る頃、
夜がやって来るまえに
玄関開けるカギの音が、ガチャガチャって鳴るよ。
…もうすぐだよ。
「七夕」
昔、住んでいた家の近くに笹群があった。
夜にその辺りを歩くと、サラサラサラ…って
風が笹を揺らす音だけが聞こえてくるのが、
なんか怖くて嫌だって、母は言っていた。
私が眠る時もその音は鳴った。
サラサラサラサラ…って音を聞きながら、眠った。
ある日突然、その笹群は無くなった。
切られて地面はコンクリートで固められた。
母は良かったと笑った。
私は、何も思わなかった。
その夜、私は夢を見た。夜の笹群に、
サラサラサラ…と歌う笹に、赤や橙、青や翠、
いろんな色の丸い灯りがふわふわと灯って、
風が強く吹いて、サラサラサラ…
重なって涼やかな鈴の音までが聴こえてきて、シャラシャラシャラ……
「きれいだなぁ、七夕みたいだ」って私が呟いたら、
フッとぜんぶの灯りが夜空ヘ飛びたってゆき…
ふわふわと笹と私から、灯りは離れて、最後の灯りも何処かヘ消えて、真っ暗になって、
…目が覚めた。
「友だちの思い出」
「友だち」って決まってるわけじゃない、ただの知ってる人。
「友だち」って言葉に当てはめるのが、あまり好きじゃない。
「友だち」、なんて思う前に好きだなって思ってるのに、どうして二段階認証みたいに「友だち」って確認しなきゃいけないのかな?
そんな手続きが必要なら、友だちなんて面倒なだけ。
要は…気付いたらもう友だちだった、ってのがいいのかな…ってことだけど………
そんな、忍び入る忍者みたいなことばかり期待するのもね…?
夏の光の中で一緒に遊んで、楽しかったのを覚えている。
でも、あの子が友だちだったかなんて、考えるのは嫌だ。
本当に心が触れた友だちはもしかしたら、
あの子じゃなくて、たった1日だけ、
手を取り合った、あの子だけだったのかな。
とか考え出しもするし。…よけいなことだよね。
私はただ、
夏の光の中のあの子と、
たった1日だけのあの子のことを、
出来るだけダイレクトに感じたいだけ。
「友だち」という言葉は邪魔だ。
それが親愛ではなく、「領域」を現すものならば。
一瞬間目の前にいる人を、私の「領域」や「友だち」という認識以前に感じとりたい。
対したい。
星空を見上げて、遠い昨日を思えば、
銀河の渦巻きの中にぜんぶの時間が保管されてて、
何ひとつ失われてなんかいなかった、って氣付く。
時は一直線に流れず、螺旋状に満ち足りる。
私は、銀河の渦巻きを小さくして手のひらに包みこんで、
カバンに入れて持ち歩く。
何ひとつこぼさない油滴天目の器に、
私の時も思いも満たして、カバンに隠して、
旅を続ける。
………どこまでも。