Kanata

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5/22/2024, 11:12:25 AM

いつもの夜更け
今日の君は一層美しい
空が綺麗で良かった
「沢山聞いて欲しいことがあるんだ」

毎日君を待つ
いつ顔を出すか分からない
気まぐれな君を
ランプを消して、窓を開けて
頬杖をつきながら微風を浴びる


昨日の言葉、
覚えてくれているだろうか
今日も君に話がしたい
どうか約束を果たしに来て


何時まで待っても君は来ない
仕様がない
気分が乗らない日だってある
それに
今日は夜霧が多い
会いたくても会いにいけないなんて
まるで例の七夕の話の様な

そろそろ夜が明ける
君から目を離さなくちゃいけない
余りにも惜しい

大丈夫
明日は会えるさ
確か明日は快晴だ
なんなら
君から会いに来てくれたりして
そうだったらいいな

そろそろ時間がまずい
仕事に戻らないと
書斎の片付けもしないといけないんだ
お互い忙しいね
良いことだけれど

素敵な時間をありがとう
明日も楽しみにしているよ

それじゃあ
「また明日」


どうか君に
この言葉が届いていたらいい
届いていなくたって
毎日言い続けるけれど

だってそれは魔法の言葉
明日の君と僕を繋ぐおまじない

素敵な言葉
君に送るに相応しい

明日もまた言えたらいいな


2024/05/22【また明日】



5/21/2024, 10:53:38 AM

「天使は透明だ」

"天使に恋する天恵の使徒"
巷で噂の彼はよくそう言った

「白より穢れなく
どんな色より明瞭である

何にも染まることのないそれは
まさに彼女らそのものであろう」

「眼には見えずとも
そこに確かに幸せを運んでくれる

彼女らこそまさに"透明"の名に相応しい」

信者は皆
彼の言葉を信じ崇める
『彼こそ天使を愛し天使に愛された者だ』
誰もがそう口にした


だが、
彼は天使に
私に恋などしていない

彼が愛するは"透明"なのだ

「"透明"な天使から得た、"透明"な幸せ」

どれだけこちらが
幸せを振りまこうとも彼は
何時までも
何処までも
それにしか興味を示さなかった

『馬鹿馬鹿しい
色に恋焦がれるなど』


分かっている
分かっているのだ
そんな愚か者に恋をしている、
自分が1番馬鹿なことくらい


でも
貴方は救い
貴方は光

『天使は純白でなくてはいけない』

色のなき失敗作
出来損ないの私

彼は肯定してくれた
世界で一番最初に


ねぇ
愛おしい貴方
どうか其の儘優しい貴方でいて
何時までも
穢れを知らない貴方でいて

何時までも
その"透明"さを失わずにいて



天使は今日も健気に幸せを運ぶ
姿は表さないまま

2024/05/21【透明】

5/20/2024, 10:48:59 AM

天使の輪を宿す白い髪
穢れを知らない青き瞳
純白のドレスに身を包む
字をなぞるその視線すら愛らしい

愛しい我が君
どうか
どうかそのままでいて
いつまでも
何も知らないままでいて


頑丈に閉められた窓
開くことのないレースのカーテン
日が差すことはない
まるで鳥籠

でもそれでいい
君の純白を守るため


外の奴らと君は違う
分かってる
分かっている筈なのに
時々、君が酷く穢れる夢を見る


『大丈夫だよ』

いつ何時も
君の声は美しい
悪夢なんて忘れてしまう程

僕の幸せは
今の君が成す全て

嗚呼

どうか
どうか
僕の理想の貴方でいて


どうかこの儘

「僕を幸せ者でいさせて」



鳥の想いも露知らず

何も知らないなんてどの口が

夢見る者に現実の声など届かない

どうか
どうかそのままでいて
いつまでも
其の儘夢に溺れていて


『一生、私を飼い慣らしていて』


今日も2人は
互いに理想を象り合う


2024/05/20【理想の貴方】

5/19/2024, 10:59:17 AM

満点の青空
早咲きの桜
写真を撮る 春色の君と
青い春が似合う君と

肩を並べて笑う僕ら
今年もこの言葉を口にする季節が来た

「来年も一緒に撮ろう」

毎年満開の桜と写真を撮る
それが僕らの約束であり、
日常であった

今日この時迄は


突然の春嵐
桜を散らしていく
手から零れ落ちる淡い青春の1枚

気付けば写真は君の手の中

吸い込まれていく
同化していく
桜が、君を攫っていく


『ごめんね、左様なら』


残ったのはその言葉一つだけ
写真も記憶も何もかも
お気に入りのカメラを手に持つ理由すら

訳も分からず
1枚、今年の写真を撮った

「どうして、」


揶揄う様に桜が揺れた
今年の春は青くない


2024/05/19【突然の別れ】

5/18/2024, 10:43:28 AM

金曜日の夜、
決まって恋物語を借りに来る彼女

艶やかな黒髪
星を閉じ込めた様な綺麗な瞳
誰もが欲しがる甘い声
万人をも惑わす可憐な笑顔

町外れの古びた図書館には似合わない、
まるで御伽噺に出てくるお姫様の様な人



「町にも図書館はあるでしょう」
「わざわざどうしてこんな所まで」
ふと問いかけた
彼女が本を借りに来てから2年の夜

思わぬ返答だった


『"貴方に会いたいから"』
『ただ、それだけよ』


たった二言
僕は魔法にかけられた

瞬きする度、一層輝いて見える
悪戯に笑う君は
どんなものより美しい


「ずるいな君は」

「そんな魔法の言葉、
君しか見えなくなってしまうじゃないか!」


お姫様だと思っていた君が
実は魔法使いだったなんて

何者でもない筈の僕が
実は魔法をかけられるお姫様なんて

どんな恋物語より素敵な_


2024/05/18【恋物語】

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