金曜日の夜、
決まって恋物語を借りに来る彼女
艶やかな黒髪
星を閉じ込めた様な綺麗な瞳
誰もが欲しがる甘い声
万人をも惑わす可憐な笑顔
町外れの古びた図書館には似合わない、
まるで御伽噺に出てくるお姫様の様な人
「町にも図書館はあるでしょう」
「わざわざどうしてこんな所まで」
ふと問いかけた
彼女が本を借りに来てから2年の夜
思わぬ返答だった
『"貴方に会いたいから"』
『ただ、それだけよ』
たった二言
僕は魔法にかけられた
瞬きする度、一層輝いて見える
悪戯に笑う君は
どんなものより美しい
「ずるいな君は」
「そんな魔法の言葉、
君しか見えなくなってしまうじゃないか!」
お姫様だと思っていた君が
実は魔法使いだったなんて
何者でもない筈の僕が
実は魔法をかけられるお姫様なんて
どんな恋物語より素敵な_
2024/05/18【恋物語】
5/18/2024, 10:43:28 AM