Kanata

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5/26/2024, 11:49:50 AM

星に願ったって叶わないなら
精々最期の悪足掻き

許せない
私ばっかり苦しいなんて
許さない
1人で幸せになろうなんて


私のものにならないのなら
誰も愛せない様にしてあげる

星なんかと比にならない
強力で執拗な魔法をあげる


左様なら、愛に満ちた貴方


「 。」



本当は望まぬ不幸

幸せでいてほしかった
笑顔でいてほしかった
永遠に私の光でいてほしかった

でも
許せなかった

幸せになる貴方を

劣情を持ってしまった
怒りすら感じるほど好きになってしまった
貴方に釣り合わない私を


御免なさい
どうか
愚かな私を許さないで

愚かな私を
一生
一生、覚えていて


「愛しているわ」


愛憎渦巻く
慣れない魔法に全てを注いだ
無垢な少女は月の生贄

それでも、
ムーンストーンは光らない


月に願ったって叶わなかった



魔法はそう簡単に頼るものではない


2024/05/26【月に願いを】

5/25/2024, 11:27:50 AM

窓ガラス越し
降り止まない雨を横目に
慣れた手つきで珈琲を2杯注ぐ
前より味を感じなくなった

今日はなんだか
電気を付ける気にならない
月明かりを頼りに椅子に座る



君は雨が嫌いだった

雨の日はいつも
窓際のこの椅子に座って外を眺めていた
『降り止まなかったらどうしましょう』
なんて言っていたのを思い出す

その言葉を聞く度に
「止まない雨なんてないよ」
と慰めながら珈琲を入れてあげていた


幸せだった 人生で一番
救いだった あの時間が

なのに

なのに


もし、
あの日雨が降っていたら
君は外出なんてしなかったのだろうか
ずっと
ずっとここにいてくれただろうか


『やっぱり晴れの日が一番ね!』



今更降ったって何も変わらないんだよ
僕が虚しくなるだけだ

だから
だからせめて

「今日ぐらい晴れてくれよ」


一輪の白百合が揺れる
雨はまだ降り止まない


2024/05/25【降り止まない雨】

5/23/2024, 11:57:31 AM

シルクの様な白色の髪
手入れを怠るは厳禁
レースに包まれた華奢な手
穢すことのないように
ライトピンクのクラシックロリータ
何時だって貴方が一番

最後の仕上げに甘いメイクを、


『可愛くない』


向き合った鏡に映るは現実
逃れられない
紛れもない真実


低さの増す声色
可憐さを失う身体
見下ろすことが多くなった

その全てが失望を意味する
何もかもが心と相反する

失われていく
培ってきた努力が音を立てて崩れていく

成長
現実
制限時間
逃れられない


今日も1枚鏡を割った


逃れられないのなら
眼を逸らす他ない

仕様がないことだ

"僕が僕でいるために"

「理想に犠牲は付き物だから」


チョーカーのリボンを短く切った


2024/05/23【逃れられない】

5/22/2024, 11:12:25 AM

いつもの夜更け
今日の君は一層美しい
空が綺麗で良かった
「沢山聞いて欲しいことがあるんだ」

毎日君を待つ
いつ顔を出すか分からない
気まぐれな君を
ランプを消して、窓を開けて
頬杖をつきながら微風を浴びる


昨日の言葉、
覚えてくれているだろうか
今日も君に話がしたい
どうか約束を果たしに来て


何時まで待っても君は来ない
仕様がない
気分が乗らない日だってある
それに
今日は夜霧が多い
会いたくても会いにいけないなんて
まるで例の七夕の話の様な

そろそろ夜が明ける
君から目を離さなくちゃいけない
余りにも惜しい

大丈夫
明日は会えるさ
確か明日は快晴だ
なんなら
君から会いに来てくれたりして
そうだったらいいな

そろそろ時間がまずい
仕事に戻らないと
書斎の片付けもしないといけないんだ
お互い忙しいね
良いことだけれど

素敵な時間をありがとう
明日も楽しみにしているよ

それじゃあ
「また明日」


どうか君に
この言葉が届いていたらいい
届いていなくたって
毎日言い続けるけれど

だってそれは魔法の言葉
明日の君と僕を繋ぐおまじない

素敵な言葉
君に送るに相応しい

明日もまた言えたらいいな


2024/05/22【また明日】



5/21/2024, 10:53:38 AM

「天使は透明だ」

"天使に恋する天恵の使徒"
巷で噂の彼はよくそう言った

「白より穢れなく
どんな色より明瞭である

何にも染まることのないそれは
まさに彼女らそのものであろう」

「眼には見えずとも
そこに確かに幸せを運んでくれる

彼女らこそまさに"透明"の名に相応しい」

信者は皆
彼の言葉を信じ崇める
『彼こそ天使を愛し天使に愛された者だ』
誰もがそう口にした


だが、
彼は天使に
私に恋などしていない

彼が愛するは"透明"なのだ

「"透明"な天使から得た、"透明"な幸せ」

どれだけこちらが
幸せを振りまこうとも彼は
何時までも
何処までも
それにしか興味を示さなかった

『馬鹿馬鹿しい
色に恋焦がれるなど』


分かっている
分かっているのだ
そんな愚か者に恋をしている、
自分が1番馬鹿なことくらい


でも
貴方は救い
貴方は光

『天使は純白でなくてはいけない』

色のなき失敗作
出来損ないの私

彼は肯定してくれた
世界で一番最初に


ねぇ
愛おしい貴方
どうか其の儘優しい貴方でいて
何時までも
穢れを知らない貴方でいて

何時までも
その"透明"さを失わずにいて



天使は今日も健気に幸せを運ぶ
姿は表さないまま

2024/05/21【透明】

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