あの人は空に似ている。
満点の笑みはさながら太陽そのものであったし、
蓄積した想いに耐え兼ねて涙を流す
ところもまるで予測のつかない通り雨のようだった。
美術館で惹かれる絵画に出会った日には、
目に星が宿ったりもしていた。
パンケーキやガトーショコラやらの甘味にかける
粉砂糖の量がやたら多かったという点を含めたら、
雪を纏っていたとも言えるかもしれない。
流石にこじつけに思えるけれど。
「生地が見えないくらいがちょうどいいんですよ」
と微笑む瞳は優しい三日月だったような気がしている。
気まぐれで、強情で、
こちらの意見などものともしない。
手を伸ばしたとて掴めやしないし、
こちらが引いたとて何も変わらない。
征服なんて夢のまた夢。
それでも、たしかに目が離せない。
あの人の光を身一つで受けるあの時間が好きだった。
何時だって写真に収めたくなるほど美しく
時に神様も吃驚するほど残酷で
そして、
二度と手に入ることのないあの人は
たしかに空に似ていた。
2025/07/07[空恋]
7/7/2025, 9:54:40 AM