「天使は透明だ」
"天使に恋する天恵の使徒"
巷で噂の彼はよくそう言った
「白より穢れなく
どんな色より明瞭である
何にも染まることのないそれは
まさに彼女らそのものであろう」
「眼には見えずとも
そこに確かに幸せを運んでくれる
彼女らこそまさに"透明"の名に相応しい」
信者は皆
彼の言葉を信じ崇める
『彼こそ天使を愛し天使に愛された者だ』
誰もがそう口にした
だが、
彼は天使に
私に恋などしていない
彼が愛するは"透明"なのだ
「"透明"な天使から得た、"透明"な幸せ」
どれだけこちらが
幸せを振りまこうとも彼は
何時までも
何処までも
それにしか興味を示さなかった
『馬鹿馬鹿しい
色に恋焦がれるなど』
分かっている
分かっているのだ
そんな愚か者に恋をしている、
自分が1番馬鹿なことくらい
でも
貴方は救い
貴方は光
『天使は純白でなくてはいけない』
色のなき失敗作
出来損ないの私
彼は肯定してくれた
世界で一番最初に
ねぇ
愛おしい貴方
どうか其の儘優しい貴方でいて
何時までも
穢れを知らない貴方でいて
何時までも
その"透明"さを失わずにいて
天使は今日も健気に幸せを運ぶ
姿は表さないまま
2024/05/21【透明】
5/21/2024, 10:53:38 AM