この朱、紅生姜天みたいやない?
真っ赤な鳥居の下、舞い散る紅葉に君がわらう。
けらけらと、からからと。
どこか遠いところをすでに見つめる君はきっと。
自分の先を、知るのだろう。
明日からの未来を知るのだろう。
ああ、どうか愛しいきみと。
ふたたび、ここに来る未来を。
哀愁をそそる
よく泣いて、よく笑って。
晴れの日も、雨の日も、いつも。気付けばそばにきみがいた。
そして気付けば彼もまた。
今日のきみは、人生でいちばん美しいよ。
せかいでいちばんの、せかいでゆいいつの。
ぼくの愛おしいひと。
この笑顔がいつまでも、そこにありますように。
「過ぎた日を想う」
幼き日の思ひ出、畳の匂い、揺れる稲穂。
つないで、つないで、つむいで、つむいで。
遺伝子とかDNAとか、そんなもの理解していないような時代から。続いてきたんだろう。
でも式に表せないんだよ、記号にならないんだよ。
長い休みに訪れる非日常。
きれいな、見慣れない景色。
親と重ねる、愛おしいものを見つめる瞳と頭を撫でる手の重み。
愛されて、いたんだね。愛されて、いるんだね。
だからお願い。今度は昔話じゃなくて、ぼくが話すよ。
手を繋いで、散歩にいこう。
ぼくの大切な人をそだてた、かけがえのない人よ。
その瞼をあげて、もういちど光を。
「奇跡をもう一度」
夕焼け小焼けで日が暮れて。
田舎町は定刻になるとサイレンが響いた。
昼は昼の、夕暮時には夕暮の。
ブランコに座って、伸びた自分の影を見つめた。
帰っていく子供達の声。家路を急ぐ足音。自転車の車輪。
どんどん遠くなって、太陽は空へ溶けて星を迎えに行く。
何となく漕いだ勢いでふわりと着地した僕は、ぼんやりゆっくり帰路に着いた。
昔迎えに来てくれた手のぬくもりを思い出しながら。
「たそがれ」
2人きりの帰り道。
もう夕暮れが綺麗に全てを紅く染めて。
何となく話しながら、ゆっくり歩いて、とりとめなく話した。
まだもう少し。
そう思っても足と共に道も進む。
あ、ちょっと。
そう言って足を止めたきみは、ぼくの耳元に。
寄せたくちびるを頬に軽く当てた。
またあした
逆行に隠したきみの顔と、陽に照らされた僕の頬は。
あつく、あかく。
柔らかなしあわせを映していた。
「別れ際に」