遠くの空へ
もしも僕が空を飛べたならあなたのもとへ飛んでいくのに。
あなたの悲しみを共に背負うことができるのに。
涙に暮れる夜も隣で夜明けを迎えることができる。
でも、僕の背中には翼が無いかった。
ただの小さな背中だった。
明日に怯え、傷つくことを恐れた丸まった背中。
見上げるとそこにある青空は僕には遠すぎた。
あの蒼へ飛び込む覚悟があればあなたを失わずにすんだのに
と願ってもね。
あなたは今何をしているのだろう。
翼のある他の人といるのかな。
空の蒼さを知らずに生きる僕とあなたは結ばれることはなかった。
あなたの人生を抱えるには僕の背中ではちょっと頼りなかったかな。
ごめんなさい。
好きになってごめんなさい。
やっぱり僕らはまだ、青かったんだね。
遠くの空へ、届くことのない祈りを捧げる。
春爛漫
ひらりはらりと桜が舞い散る。
華々しく咲き誇り、地上へと降り立つ。
まるで天女のように。
なんて、考えながら歩くような私ではなかった。
ただ、桜が咲いてると思ったらそのままでしかない。
あなたと私は何が違っていたのだろう。
あなたは私に何を思っていたのだろう。
桜が舞い散る様子をどのような言葉で表したのだろう。
私の放った好きは伝わっていたのかな。
散る花弁のようにつかみどころのなかったあなた。
あれから三年も経ったよ。
また、今年も桜が咲く季節になった。
でも私に訪れる春はまだ先のようだね。
誰よりも、ずっと
突如吹いた風に乗って桜の花弁が空へ舞った。
いつの間にか私の目の前に君がいた。
左頬にえくぼを作りながら私を見つめている。
どうしようもない私をその眼差しで灼くようだった。
あなたが明日もいるという確証は何処にもないのにあなたがいる今に安心している自分が嫌だった。
あなたの美貌なら私以外の人と幸せになれるはずなのに私と共に生きていることが不思議で不安だった。
それでも、虚勢を張り私を偽ってきた。
恥に塗れカッコをつけひきつった笑いをした仮面を着けてその場しのぎを繰り返した。
自分を隠したら何処へ隠したか忘れ自分らしさを見失った。
でも、あなたが笑う姿に私を見つけられるような気がした。
私は誰よりも孤独だと思う。ずっと一人で生きるしかない。
でも、あなたを同じような道へ誘うのは気が引けるのです。
だから、あなたはあなたの道を歩んでほしい。
私の恋を無かったことにしても良いから生きてほしい。
私はあなたへの愛を切り崩しながら息を繋ぐから。
今まであなたと過ごした時間は果てしなく永く、瞬きをする間くらい短かった。
あなたの好きなところを挙げていけば桜の木を作れそうです。
毎年桜の咲く頃にはあなたを思い出して涙を流すでしょう。
いや、毎夜あなたのいないベッドであなたの温もりを探します。
だって、誰よりもずっとあなたを好いていたのですから。
これからも、ずっと
今までずっと貴女を愛していた。
それは、きっとこれからも忘れることなく続くのだろう。
太陽が出て、月が沈むように当たり前に。
昔の人は諸行無常と言ったけど、私の愛だけは違う。
季節が流れても、時が経っても変わらないもの。
でも、願っても貴女へは届かない。
貴女への愛を呟いても空へと消え失せる。
貴女の名前のついた果実を見るたび、過去の思い出が私を底のない虚無へ引きずりこむ。
どうすればいいのか未だに分からない。
それでも永久に消えない幻を抱きながら明日も生きていく。
だって貴女と出会えたことは現実だと信じているから。
日に焼かれても、孤独に凍えても愛してやまない貴女を私はずっと忘れない。
忘れられない。
その姿も声も目も手も体温も全て揃えて覚えている。
これからもずっと貴女を愛している。
そしてこれからも、ずっと貴女を憎む。
沈む夕日
今日もまた夕日が沈んでいった。
震える背中を見送る気持ちがあなたには分かるのでしょうか。
あなたへの愛はふとしたことで冷えていったの。
夕日と水平線のように近づいては離れていくことを繰り返して今日までだらだらと付き合ってきた。
それも今日でやめましょうか。
このまま冷たく愛し合っていても私の体温を奪ってしまうだけなの。
あなたは恋にも二人の愛にも火をつけなかった。
夜が私を迎えに来た。
遠くなったあなたへ手を振った。
カイロのように振ったらまた温かくなればいいのに、と沈む夕日へ嘆いた。