12歳の叫び

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7/18/2024, 2:04:16 PM

私だけ、全部全部、ごめんなさい。

7/13/2024, 1:57:22 PM

フィクション【覆水盆に返らず】
蒸し蒸しと暑い夏――日本特有の嫌〜な夏。
親やクラスメイトに付けられた傷にジリジリと汗が染み込んで、身体中が痛い。
私、もう無理なのかもしれない。
ご飯が喉を通らない。上手く笑えない。手の震えが止まらない。楽しい記憶も今の辛さで黒く塗り潰されてないし、もう、死んでもいいんじゃない?
私の唯一大好きだった兄は、私が保育園生の頃、まだ小学四年生という若さで死んだ。それは私を保育園から引渡しに行く狭い通路を歩いている時、何者かに兄は刺されたからだ。
私が生まれた頃にはもう、最悪な家庭環境で、小さな頃から保育園に迎えに行ってくれるのは兄だった。
仲良く手を繋いで、笑顔で保育園の話をしていた所を刺された。
もし――もし私がどうでもいい話をしていなかったら?
もし私が手を繋いでいなかったら?
もし私が広い道から行きたいと言っていたら?
もし私が保育園に通っていなかったら?
もし私が妹じゃなかったら?
もし私が生まれてこなかったら――兄は死んでいなかった。

全部全部、私が悪くて、死ねば良くて、世界は悪くなかった。汚くなかった。私の心の方が汚かったんだよ。
グシャッ。

「……ここ、どこ?」
目が覚めると、青空の広がる空間にいた。なにもなくて、心だけがあるような。
まさか、天国? ふーん、なんだ。結構綺麗じゃないか。
「愛……?」
私の名前。
その名を呼んだのは――兄だった。
「お兄ちゃん……! お兄ちゃんなの?! 私……私! ごめんなさい! ごめんなさい! 私が悪いの! 私のせいだよ! 」
「愛! そんなこと言うな! 愛は悪くない。何も悪くないよ。俺は幸せだ、愛と会えてもっともっと幸せだよ」
「お兄ちゃん……。ねえ、ここは天国なの?」
私が兄に聞くと、兄は、質問には一切答えず、ポケットから小さな紙を取りだした。
「……っこれ。俺がサンタさんへ向けて書いた紙なんだ」

――さんたさんへ
さんたさん。おれに妹をください。たくさんあいをもらえる妹をください。たくさんかわいがるし、しあわせにします。きらいなままとぱぱよりも、ずっとずっとあいします。やくそくします。だいすきってたくさんつたえます!おれがままたちにしてもらえなかったことをたくさんしてあげます! てをつなぎます!やさしくします!おかしをわけてあげます!だっこしてあげます!ぎゅーってします!ちゅーします!ぜんぶします! ふゆより。

ポタッ。
私の涙が手紙に落ちた。
「お兄ちゃん……」
「全部俺のせいなんだよ。俺のせいで嫌な親の元で生まれて、愛して貰えない子に育って、幸せになれなくて、死んだ。全部全部おれのせいだ! ごめんね、ごめんね、俺のせいだよね。だから――」
兄は私のことを抱きしめた。温かいはずなのに、暖かくない。まるで、空気のように感じてしまう。
「こんな兄を許してください」
「……なんだ……。全部お兄ちゃんのせいだよ。お兄ちゃんがいなければ何が愛か知らないでいれた。お兄ちゃんがいなければ、これが普通なんだーって気持ちで生きれた。全部全部、お兄ちゃんのせいだよ……。お兄ちゃんのせいだ……。あぁっ! うわぁーん! お兄ちゃんのせいだ! やだよ! お兄ちゃん、一緒にいれるよね!離れないよね!愛してくれるのよね! 」
醜い。愛を貰える子供に劣等感を抱く。
「ここはね、天国さ。天の国。愛には愛の国で生きて欲しかったなあ……」
兄の姿が消えていく――溶けていく。
「なにそれ……。ふふ、お兄ちゃん……やっと幸せになれるのかな」
優越感に浸れる人間なんて、きっとここへ来たら泣いちゃうのかな。あははっ! そんなのどうでもいいか。
私も同時に溶けていった。
消えちゃうの?ここ、天国だよね。私、地獄……?

「冬に生まれたから名前は冬の兄に、夏と名前をつけようとした親を必死に止めて、愛という名前を兄に付けられた妹ねえ……。まあどうでもいいけど」
「どうでもいいって……! この子達には二人専用のお国をご用意致しますよ? 神様」
「だって事実だもの……。ふふ、まあ。かわいい子供達を最後まで苦しめる訳にも行かないね。アイツらはしっぱ作だわ。人殺しにでもして死刑にして地獄行きにでもしとくわよ」
「はあ……。初めからそういうことを言ってくださいよ」

7/11/2024, 1:08:03 PM

明日が嫌だった。
嫌いな先生のいる学校。
嫌いなクラスメイトのいる学校。
嫌いな勉強のある学校。
どんなに嫌いな相手にでも、いつの間にか笑顔で話している自分のいる学校――これが全部嫌だった。
だから私は休みたくて仕方がなくて、ズル休みでもしてやろうかと思った。なのに、出来なくて。
お腹を何度も殴って、頭を何回も振って、自分は体調が悪いんだと言い聞かせた――すると本当に頭痛がして、全身が痺れて、吐き気がした。
“やった、嬉しい”
そう思ったんだ。気持ち悪いとか、そんなのどうでも良く感じられるほどの嬉しさを感じた。
私はリビングへ行って、小さな声で母親と会話を交わして、ソファに怠そうな雰囲気を出して座った。
すると、母親は「どうした? 体調悪いの?」と、優しく話しかけてくれた。
「なんか、頭痛い」
このひとつの言葉を出しただけで休む? そう聞いてくれた。なんで、頭が痛いだけなのに。
頭がぐるぐるした。今にでも吐きそうだった。だって、自分が情けないんだもん。
頭が痛いだけで休ませてくれる親に、「本当は自分で腹殴って体調悪くした」だなんて言ったらと思うともっともっと、情けなく感じる。
せっかく休めたのに、罪悪感で死んでしまいそうだった。何度も何度もごめんなさいと声に出して、何も出来なかった。
その上、今日は欲しいものを買ってもらっちゃったよ。ごめんなさい、ごめんなさい、私、辛わせだ。

まま、お仕事中なのに一件のLINEを何度も私に送ってくれた。
――お薬飲んだ?
とか。
――ご飯食べれそうだったら食べてね。
とか。
ごめんなさい、ごめんなさい。謝ることしか出来ない私が情けなくて、あー、ごめんなさい。
明日、学校行きたくないよ。
いっその事、腹を殴って死んでしまおうか。
でも、お金かけちゃうから死ねない。せめて何万か貯めて死ななくちゃいけない。
それに、ブスだし。
友達いないし。
まだ死ねない。
生きなくちゃ。
生きないといけない。

でも――。
よくよく考えればあの子が死ねばいい話だよ。

死ね

7/10/2024, 2:04:46 PM

目が覚めると――。
目が覚めると夢の中にいた。
それは、ふわふわとした真っ白な地面がずーっと続いている場所。何も無くて、ほんと、大きな豆腐みたい。
「ようこそ! 貴方はやっと一番の願いがかなったのですよ! 私は褒めます! 褒めて差し上げましょう! おめでとう! 貴方は幸せになれるのですね!」
言葉一つ一つに感嘆符の着くようなハキハキとした喋りをする、小さな――小さな女の子がいた。
真っ白なフリフリのドレスを着て、髪の毛は濡れ鳥のようだ。あぁ、私のなりたかった姿だ。
「……明晰夢?」
「あははっ! 何を馬鹿げたことを! 明晰夢なんてものじゃあないよ。ここは現実だ。そして――お前は死んだ」
死んだ。
死んだ?
私が? 私が死ねたの?
あぁ、確かに死にたいと思った。そして、願ったよ。
でも、そんな簡単に死ねるの? 死んだらこんな世界なの? あれ、なんだか思ってたのと違うよ。
私はただ、死んで皆が涙を流し、後悔をする姿を見たかっただけなんだよ。
「……なんで死んだの。そして、あなたは誰なの?」
「お前は死にたいと願っただろう? だからここへ連れてきてやったんだよ」
「……そう」
決して、自分のことには触れようとしない女の子の瞳には、どうしても人工物のようにしか見えなかった。
「お前は、なぜ死にたかった?」
「急な質問だね。私が死にたいこと、知ってるくせに理由は分からないんだ」
「お前の気持ちが丸まったゴミみたいに汚いから、私には読み取れなかっただけだ」
「なにそれ、いやぁな言い方!」
「いいから早く言え。私は暇じゃないんだよ」
腕を組み、私の瞳をキリッと睨みつける女の子は、腕を組んで手の動きが止まらなかった。
「――そうだなあ。あれはほんと、最近のことなんだよね」



四月

中学校に入学して、元々仲の良かった子と同じクラスだったことを理由に、中学校でもずっと一緒だった。
あの頃は、幸せでも、普通でも、最悪でもなかった。ただ、何も無い。それだけだったんだ。
勉強について行くために必死で友人関係なんてどうでもよかった。

五月
初めての学力テストに向けて、まだまだ勉強を頑張っていた。
この頃だってどうでもよかった。友達なんて、どうでもよかったんだ。

六月
この頃からだ。勉強が落ち着いて、なにかに没頭する時間が無くなって、少し友達との距離感を感じて、紙に自分の気持ちを書くようにもなった。

七月
これは最近だね。
三人で歩いていると、私以外の二人の出身小に居た先生が来た。まあ、その前から二人は仲良く手を繋いでいた。私とは繋がなかったのに。
そして、先生はこういうんだ。
「二人は小学校からずっと手繋いでるよね。この子は〇〇小じゃないから分からないけどがんばってね。仲良し3人組なの?」
気持ち悪かった。
てか、そもそも3人で歩いていた訳では無かった。
教室を出る時、たまたま一緒になっただけだし、仲良し3人組ってなんだよ。私は二人と仲良いつもりなんてない。前までは自分と友達の一人で、2人。仲良いよねって言われていた。
その時だってちゃんと首を傾げて「違いますよー」ときちんと言った。なのに勝手に言う大人が嫌いだった。

一人でいることが可哀想だという友達も、先生も、みんなみんな気持ち悪くて、吐き気がして、なのに学校にはきちんと行っていて、偉いよね。

でも、どうしても耐えられなくなっているこの頃だ。
明日が嫌で涙が出る。
呼吸が苦しくなる。
唇を噛みすぎて血が出てくることもしょっちゅう。
手の震えが止まらない。
上手く笑えない。
やらなくちゃいけないことが出来ない。
優しくなれない。
笑いを取れない。
ミスが増えた。
寝ることが怖い。
全部全部、おかしくて。どうしたらいいのか分からなくて――また同じことの繰り返し。

でも、虐待も虐めもされてなくて、毎日美味しいご飯が出てきて、幸せなんだよ。なのに、幸せだと感じられない。そんな自分が気持ち悪い。

だから、死にたいんだ。

「死んでも脳があるのね」
「まあな」
「なんだ。私の想像してたものじゃないんだね。辛い思い出、消えないじゃんか」
「……まだ死にたいか」
「は? いや、もう死んでるし」
「……まだ気づかないか? 死んでるというのは、肉体的にでは無い。心がだよ」
「心? 」
“心”と言いながら、女の子は自分の頭を人差し指でコツコツ叩いた。
「あぁ、心がだよ」
「じゃあ、ここはなんなの?」
「ここは――お前の心だ」
「……は?」
「安心しろ。お前はおかしくないんだよ。お前の心の土台が脆すぎただけだ。幸せはそれ程多くないし、重くもない。お前の土台が脆すぎただけなんだよ。私は神にお前を救えと言われただけだ」
「じゃあ……貴方は、神様に伝言。伝えられる?」
「……ああ、伝えられるよ」
神様は、私のことを、そっと抱きしめてた。強く、骨が砕けてしまうほどに強く抱き締めた。
その強さに私は耐えられず、足がすぐみしゃがみ込んだ。
「神様、どうか私に返してください。私に春を返してください。青い青い春を返してください。お願いします。周りの青い芝生なんていらないから。私に青い芝生に、青い桜をください。助けてください。私はこれからも生きていけますか? 幸せになれますか? 優しくなれますか? 人に好かれますか? 助けを求められる人間になれますか? こんな言葉を、言わなくて済む人生を送れますか……」

7/7/2024, 12:52:27 PM

七夕。
田舎の天の川を見るために夜中の外へ出た。
けれど見えなかった。それ程輝いていない天の川から織姫様と彦星様に私のことを見つけて欲しくって、街灯の少ない田んぼ道を駆け回った。
息が切れるほどに走った。跳躍した。
この時間が生きている中で何より楽しくて、自分が美しく感じた。
織姫様と彦星様は私に気づいてくれたのでしょうか。

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