月見茶

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4/18/2026, 9:26:11 AM

桜散る

 早苗は愕然とする。
 メール、手紙、電話。
 すべての結末を見たり、聞いた。
 彼女の結末は、全部駄目だった。
 

4/16/2026, 2:10:22 PM

夢見る心
 
「アンドロイドは夢を見るのかしら」
 有栖はチャットの向こうにいる存在に声をかけた。
 その間も、キーボードを叩く手を止めない。
「急にどしたの?」
「アンドロイドは人間と作りが違うでしょう? 勿論脳もそれに含まれるわよね?」
「そーね」
「私たちは、まだ解明が進んでいない未知な脳みそがつまっている。でも、機械の脳みそは、人間によって作られた、その……」
「いいよ、はっきり言っちゃってー」
 画面から軽く気だるげな青年の声が聞こえる。
「『偽物の脳』っていう認識をしてるわ」
「あー、なるほどね~。確かにあいつらからは本物の脳みそは詰まってはないね」
「そうね、詰まっていたら事件性を疑うわね」
「で?」
「偽物の脳は、夢を見せるのかについて疑問に思ったの。アンドロイドは勝手に情報を処理するじゃない? 人間のように寝る必要がないもの」
「それって前に言ってたやつ? 人間が夢を見るのは、情報の処理をするためってやつ」
 『あ、はみ出しちゃった』と青年はこぼしながら、有栖に合の手を打つ。
「綿棒で拭きなさい……そう、前に話したことね。話している内に、一つ考えがよぎったの」
「え、そうだったの? あ、本当だ。すぐ綺麗になった」
 画面の向こうで慌ただしくしている青年に有栖は自身の仮説を口にした。

「アンドロイドは、根性で夢をみるんじゃないかって」
 途端、瓶が落ちるような音が有栖の耳に入る。
 悲鳴が上がっていたが、有栖は気にせず口を動かし続ける。
「彼らは人間の皮を被っている偽物。偽物は本物に近づきたいが為に、時に予測不可能な行動をするはず」
 向こうでは複数人の声があちらこちらから聞こえる。何かをふき取る音。バタバタとなる足音。怒声に似た声。有栖は惨事を想像しながらも、止まらない。
「彼らは学ぶことしか出来ない。する気がない。それも誰の為でもなく。己が為に」
 有栖がキーボードを叩く速度が段々と上がっていく。気持ちが昂りつつあった。
「絶対に獲得するでしょうね、夢を見る心を」
 瞬間有栖は、小気味の良い音を奏でた。

4/16/2026, 9:29:34 AM

届かぬ想い

 風が有栖の周りで舞った。
 さっきつけた線香の煙が、あたりに漂う。
 有栖は目を開け、合わせていた手を下ろす。その瞳には後悔と寂寥が混ざっていた。
「また、来ます」
 有栖は墓の主にそう告げると、立ち上がった。
「もう、貴方に届くことはないのは分かっていますが」
 伝えたかった。でも伝えることは出来なかった。
「貴方のこと」
 有栖は口には出したが、風がそれを消し去っていった。

4/14/2026, 12:37:09 PM

神様へ
 
 香苗は祈った。いつか此処を抜け出せる日を夢見て。
――神様、おねがいします。
 香苗は季節が変わろうが、天気が変わろうが祈り続けていた。
 だが、周りは不思議がった。何故祈るのかと。そこに神様がいるのかと疑問に思った。一人が訊ねると香苗はこう答えた。
「わたしの神様は、いつもわたしをみちびいてくれるの。」
 香苗は笑った。

 看守のハルは、香苗を見て内心せせら笑った。
――馬鹿な女。
 ハルは香苗の罪状を知っている。何人もの老若男女を堕とした女。女の信者となった者を互いにまぐわせたり、殺し合いをさせたり、堕胎を強要させたりした。
 ハルはこの女の供述を聞き、頭がおかしくなりそうになった。
――何が、神だ。お前のキチガイによって、お前自身の手を汚しているだけじゃないか。
 香苗の輝くような瞳に、ハルは反吐が出るほど侮蔑の表情を浮かべた。
「嗚呼、そうなんだな。なら、早く神様にお迎えに来てもらわなきゃな」
 香苗はハルの表情に気づくことなく、嬉しそうに首をコクコク振り、ハルを見る。
 ハルは近くにいた別の看守に香苗を連れていかせた。彼女の笑顔になんて価値なぞないのだから。
 ハルは煙草を吸うために、喫煙室へと歩きだす。

「神様へ」
 
「あのアマが、苦しみながら生き永らえるようにしてください」

4/13/2026, 10:44:29 AM

快晴
 
 学校から帰宅する途中、雨が降ってきた。
 有栖は、持っていた傘を差し、バス停へと向かう。彼の視界には藍色の生地と薄暗い空で満たされた。
 有栖は今日、花見に行くつもりだった。たが、無理だろう。
 暫く歩き、目的の場所へと辿り着く。有栖は、傘をたたみ、屋根の下へと避難する。瞬間、あまりの物音がする。
 有栖が驚いたように上を見上げると、桜の枝が屋根の上を叩いていた。
 
 バスが来るまで残り5分くらいになった時だった。
 有栖が読んでいた本に突然光が差した。彼が顔を上げると、青空が目に入った。
 雨が上がったのだ。綺麗な青が有栖の目に入る。
 有栖は、バス停から外へ出た途端、目を見張った。
 そこには快晴と雨に洗濯された桜があった。

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