神様へ
香苗は祈った。いつか此処を抜け出せる日を夢見て。
――神様、おねがいします。
香苗は季節が変わろうが、天気が変わろうが祈り続けていた。
だが、周りは不思議がった。何故祈るのかと。そこに神様がいるのかと疑問に思った。一人が訊ねると香苗はこう答えた。
「わたしの神様は、いつもわたしをみちびいてくれるの。」
香苗は笑った。
看守のハルは、香苗を見て内心せせら笑った。
――馬鹿な女。
ハルは香苗の罪状を知っている。何人もの老若男女を堕とした女。女の信者となった者を互いにまぐわせたり、殺し合いをさせたり、堕胎を強要させたりした。
ハルはこの女の供述を聞き、頭がおかしくなりそうになった。
――何が、神だ。お前のキチガイによって、お前自身の手を汚しているだけじゃないか。
香苗の輝くような瞳に、ハルは反吐が出るほど侮蔑の表情を浮かべた。
「嗚呼、そうなんだな。なら、早く神様にお迎えに来てもらわなきゃな」
香苗はハルの表情に気づくことなく、嬉しそうに首をコクコク振り、ハルを見る。
ハルは近くにいた別の看守に香苗を連れていかせた。彼女の笑顔になんて価値なぞないのだから。
ハルは煙草を吸うために、喫煙室へと歩きだす。
「神様へ」
「あのアマが、苦しみながら生き永らえるようにしてください」
4/14/2026, 12:37:09 PM